第150話:芦の三姉妹
この150話とエピソード楓には15禁的な表現が含まれていますので、苦手な方は話を飛ばして頂けると大変助かります。
尚、話をお読みにならなくても、恭介に従姉妹がいるんだな~って事だけ知って頂ければ、まったく問題ありません。
従姉妹は
芦屋 楓(高三)
芦屋 椿(高一)
芦屋 梢(中一)
の三人です。楓を除いた他の二人は恭介に異性として好意を持っています。
「…………ふぅ」
夏休み初日。朝から電車を乗り継いでこの町にやって来た俺は、とある二階建て一軒家の前で立ち止まり溜め息をつく
此処は母ちゃんの妹の麗華叔母さんが住む家。しかし叔母さんと母ちゃんは姉妹仲が宜しくなく、母ちゃんがこの家を訪れるのは極めて稀だ
だけど叔母さんは、俺達兄弟の事は大変気に入ってくれていて、可愛がってもくれている。なので年に数度、叔母さんと母ちゃんの橋渡しの為に俺達は夏休みを利用して個人個人で訪れているって訳なのだが……
しかしながら気が重い。はっきり言ってしまうと、俺はこの家が苦手なのだ。それは叔母さんがと言う事では無くて、その娘が苦手なのである
「……行くか」
ピンポーン
突っ立ってても仕方ないので、覚悟を決めてインターフォンを押す。すると、ドアの向こう側がドタバタ騒がしくなってきた。そして
「恭、久しぶり!」
てな感じでセミロングワンピースな女が両手を広げて玄関から飛び出してくる。いつものパターンなので焦らない
「ああ久しっ!? こ、こらこらこらこぐは!!」
女、椿は靴も履かずに俺にぶつかる様に抱き付く。全身に172のダメージ!
「恭、全然こっちに来てくれないんだもん。今日は離さないからね?」
「いや、離せ! 暑いから!!」
「やぁだ。明け方まで離さない」
「何んで明け方やねん! つか首が痛いから!!」
俺の首にしがみついてるこいつは、叔母さんの次女で芦屋 椿。歳は俺の一つ下で、先月16になったばかりの高校1年だ
「きょ〜お。えっへっへ〜」
「ええい、いい加減離れんかい!!」
「あん。も〜」
しがみつく椿を無理やり引き離し、距離を開ける。今から体力を使っては、明日まで持たない
「とにかく中に入れてくれ。喉が乾いてるんだ」
「はるばるご苦労様でした。どうぞ入って」
て感じで招き入れてもらい、家の中へ
俺んちより広い玄関には、靴が三足揃えて置いてあり、その横に俺は靴を脱ぐ
「お茶入れてあげるね。ママー、恭が来たよ〜♪」
椿は急ぎ足で廊下奥のリビングへ向かって行った。廊下に残された俺は、ショルダーバッグを肩から降ろし、辺りを見回す。靴棚の上に飾られた手のひらサイズの王将の駒が、何となく気になる
「……裏は無いのか」
駒を持ち上げ、様々な角度から眺めていると、カチャと軽い音が廊下の階段横にある部屋から聞こえ、続いてドアが少しだけ開かれた
「あ……」
そのドアの隙間から、こそっと顔だけが出て来る。その人物は俺と目が合い、
「……来たんだ」
と言って、トトトと俺に駆け寄った
「おかえり」
そして、俺の腰に抱き付いてくる
「ああ。ただいま、梢」
この子は芦屋 梢。今年中学生になったばかりの十三歳だ。昔は余り俺になついてくれなかった梢だが、今ではこうして――
「うひょひょひょひょ!」
俺の胸元に梢が顔をグリグリとさせた。くすぶったくて、変な声が出てしまう
「来るの遅い……。ずっと待ってた」
「悪かった、悪かった。あ、そうだ。お土産あるんだ。出すから離してくれないか?」
「…………」
梢は抱き付いたままじっと俺の目を見つめた後、仕方なさそうに離れた。さっきから鳩尾辺りに感じていた柔らかい感触が無くなり、ホッと一安心
「ちょっと待ってろよ。梢に良いもん買って来たから」
バッグを開けて、土産を探す
「えっと……あれ?」
着替えとかも入っているから、バッグは結構パンパンになっている。着替えや漫画を退けて、探してみるが見付からない
「おかしいな。もうちょっと、待っててな」
「……うん」
返事通り梢は手を前に組んで、大人しく待ってくれている。まさか忘れたかと不安になりながら探していると、バッグ奥でお目当ての袋を発見出来た
「あった! ほら、梢。スカイツリー・トーテムポール。開けてみ?」
スカイツリーと東京タワーと通天閣が重なったレア物トーテムポールだ
「これ……。ありがとう、恭介」
梢は戸惑いながら、受け取った袋を開ける。そして中身を確認し、ぎゅっとトーテムポールを抱きしめた。そう、梢はトーテムポール集めが趣味なのだ
「これで何本になった?」
「22本」
「思ったより増えてないな」
去年は19本だったか?
「量より質を大事にしてるの」
「なるほど」
中々渋い考えを持ってるな
「恭〜梢〜。お茶入れたよ〜」
「ああ! じゃ、いくべ」
「いくべ」
さて、毎年こんな感じで始まり、一泊だけしていくのだが、まぁこの二人だけなら苦労しない
そう、ヤバイのはこの家の長女。うちのあれもヤバイが、あの人は更にヤバイ。特に彼氏が居ない時は……
「……ところで梢、楓さんは?」
「学校。夕方には帰って来るよ」
「そ、そうか。あの人、今、彼氏とかって居る?」
「分からない。先月村田と別れたって言ってた」
「げ!」
ピンポイントでヤバイ!!
「参ったな……」
もし彼氏が居ないとしたら、今日は眠れないだろう。今のうちに栄養ドリンクでも買っておくか
「はぁ……ん?」
ため息を漏らす俺とは対象的に梢は口許を袖で隠し、くすくす笑っている
「どうした?」
「恭介の顔、面白い」
「失敬な」
梢の頭をポンっと軽く叩き、俺はリビングへ続くドアを開けた