表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
377/518

第145話:犬の追跡

「待たんか、貴様!」


「お、俺は悪い事、してませんよ!」


「なら何で逃げる!」


「あんたが追って来るからですよ!」


「貴様が逃げるから追うのだ!」


「なら追わないで下さい~」


不毛すぎる会話をしながらの逃走劇は、かれこれ30分以上続いていた。奴は全く諦める素振りを見せず、執拗に俺を追い立てる。一体、いつまで逃げれば良いのだろうか……


「あれ、あいつ佐藤じゃね?」


「警官に追われてるな。秋先輩にチカンでもしたのか?」


中学校近くの都営住宅を横切る時、見知った顔を発見。あれは同じクラスのTとSか!


「お、お前ら、助けてくれ!」


「なに! 佐藤が助けを求めている!?」


「行くぞ、S!」


「おう、T!」


藁をも掴む思いで助けを求めると、二人は小走りで追って来た。あいつら俺を助けてくれる気か? あ、ありがとう。やはり持つべき者は友達だ


「よく分からねーが助けてやる! 秋先輩の生写真5枚でどうだ!!」


「あ、ずり! なら俺は……く、靴下!」


「うわ、お前マニアックすぎ」


「い、良いだろ別に」


「…………」


一瞬でもあいつらに頼った俺が馬鹿だった


「あ、あれ、佐藤? 返事を、返事をくれ~」


「一足で良いんだ! 一足あれば俺は人生を頑張れそうな気がするんだよ! 頼む、佐藤おおぉぉぉぉ……」


元友人達の声をダッシュで振り切って、俺はひた走る。所詮人間は一人、俺は孤独なロンリーウルフ


「い、いかがわしい取り引きまで行っているだと? ……恐るべきは巨悪よ。一介の警察官に過ぎない俺が、あのロリコン野郎を倒せるだろうか?」


ロリコンって……


「止まれ〜止まらんと撃つぞ〜いっそ止まるな〜」


本気で倒す気か!?


「た、助けて〜!」


悲鳴を上げながら公園内に逃げ込み、奥にあったジャングルジムの周りをぐるぐる回る


「お、追い付けん!」


「い、いい加減に諦めて下さい」


左に来たら右に、登って来たら下がる。常に一定の距離で牽制。こうなれば捕まえられまい


「や、奴め俺を翻弄している!?」


「ふふふ、もう捕まりませんよ?」


「く、なんと卑劣な。それでも伝説のロリコン王か!?」


「違いますよ!」


まんじりともしない奴の視線をにらみ返しつつ、ジリジリと下がる。後ろにはフェンスがあるが、胸の高さ程度のものなので、飛び越えられない事はない


「逃げる気か? だが、絶対逃がさんぞ!」


目、怖っ!?


「お兄さ〜ん」


殺意が籠った眼光に怯えていると、公園の入り口から切羽詰まった声がした


「え?」


「む?」


声の方向には、こちらへ向かって走って来る中学生の姿。あいつは……直也君!?


「大丈夫ですか、お兄さん!」


直也君は組織の犬を警戒しながら、俺の隣に立つ


「直也君……どうして此処に?」


「部活帰りだったんですけど、お兄さんが助けを求めていたのを見たから、追って来たんです」


警戒を緩めず、しかし笑顔で直也君はそう答えた


「そ、そうだったのか……ありがとよ」


俺のダチとは大違いだ


「お兄さん、ここは俺に任せて下さい」


「だ、だが、奴は国家権力だぞ?」


「お兄さん。俺、お兄さんの力になりたいんす。それにお兄さんは間違った事なんかしない、だから国家権力なんか怖くないっす」


「直也、お前……」


「俺を、俺を男にして下さい!」


「直也!」


「うぉぉおおー!!」


直也は雄叫びを上げながら組織の犬に向かって行き、焦る犬の体にしがみついた


「こ、こら、何をする貴様!」


「さぁ、行って! 俺の屍を越えて!!」


「直也〜!!」


俺は走った。フェンスを越えて


振り向くな。振り向いたら俺はきっと戻ってしまうだろう


さらば直也。俺はお前を忘れない――


「……母ちゃんに相談しよ」




今日の始末書



四枚目




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ