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俺の遊び 7

カブトムシ。これ以上、人の心を揺さぶる虫の名前は存在するだろうか? そう、カブトムシ。それは夢のワンダーインセクト、漢のロマン


「てな訳で、此処がそうだ」


綾さんと別れた俺達は、寂れた駅裏へと出た。んでもって歩道を数分歩き、右に別れた細い道の坂を登った先にある小さい雑木林が此処だ。その雑木林中心に、昔からカブトムシが集まる木があるって訳だ


「俺と俺の妹の秘密基地だったんだぜ? お前らに譲るよ」


俺の土地では無いけどさ


「ふ~ん」


「へ~」


わ~、興味なさそ~


「此処がお兄ちゃん達の秘密基地だったんだ……」


雪葉が羨ましそうに呟いた。あの頃はまだ小さかったから、連れて行けなかったんだよな


「あ! ムラサキツユクサ。あっちはキリの花です」


「草はきちんと刈ってあるし、しっかり手入れされているね」


「この裏のデカイ家に住む爺さんが、毎日掃除しているんだ。会ったら挨拶してやってくれ、喜ぶから」


金が無い時は爺さんの家に乗り込んで、よくおやつを貰ったものだ


「で、メインのカブトムシは……」


うっすら残る記憶を頼りに、林の中心部へ向かう


「昔よく取れたんだよ、この木」


他のものより一際幹が太い木に近づき、探す。おっ、いた


「ほれ、カブトムシ」


早速捕まえたカブトムシは、蜜を吸って中々に肥えていた


「すご~い! お兄ちゃん、触っていい?」


「ああ」


手のひらに乗せてやると、雪葉は指でツノを軽く撫でた


「硬い、硬い。えへへ」


「クワガタとかも居るんだぜ?」


一匹捕まえて、リサ&千里に見せてみる


「ふ〜ん」


「へ〜」


やっぱり興味無さそうだ


「カブトムシ……クワガタ……一匹500円で売るとして、食費が1日1200円だから……うふ」


一方花梨は、雪葉の持つカブトムシを見て不気味な笑みを浮かべた


「か、花梨ちゃん?」


「え? あ! な、な〜んて。じ、冗談だから、ね?」


そう言ってウフフと笑うが、目は全力でクロールをしていた。相変わらず嘘が付けない奴だな


ま、それはともかくとして……


「美月?」


先程から美月は少し離れた所で、俺達の様子を伺っている。何故か元気も無い


「ほら、美月。結構デカイだろ?」


新たなカブトムシを手にし、美月の側へ行く。こいつを見れば、テンション上がるだろう


「う〜」


近寄る俺に、美月は止めてと言わんばかりに両手を前に出して、いやいやと首を振った


「み、美月?」


「カブトムシ、やだぁ!」


そして美月逃亡。俺、呆然


「セクハラなう」


「してない! み、美月〜」


「カブトムシ嫌い〜!」


美月はスタコラサッサと、坂の下まで逃げて行ってしまった


「か、カブトムシ嫌いだったのか、あいつ?」


聞いてみると、雪葉達もまた驚いていた


「美月ちゃん、ミミズとか掴めるのに……」


「この間なんか、ムカデ掴もうとしていたわよ? 流石に止めたけど」


「しかし、カブトムシは駄目か……。美月〜、カブトムシは木に返したぞ〜」


「……ほんと?」


美月は、木の陰に隠れながら聞く。お前は星 明子か、などと十代には分かる筈も無いツッコミをしてしまいそうだ


「ああ、もうみんな返したよ」


言いながら雪葉達に目で合図。察してくれた雪葉達は、急いでカブトムシを木に返した


「ご、ごめんね、兄ちゃん。わたし、カブトムシ大嫌いなんだ。……ツノとか」


ツノ?


「なんで、ツノなんかあるんだろ?」


ツノが嫌いなのか?


「ま、まぁ、確かに良く見ると不気味よね。ニョッキリしてるし……」


「硬いし!」


テンションがた落ちで戻って来た美月を、雪葉達がフォロー


「ふむ。……じゃ、そろそろ別の所行くか。この辺でオススメある?」


そう尋ねると、子供達は顔を見合わせて軽く躊躇をした。そんな中、一本の手が上がる


「じゃあ、次はアタシが紹介するわ。ここからなら、結構近いし」


よし、次は花梨だ


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