表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
370/518

俺の遊び 6

「お前達はこの町の事を知っているか?」


水の音が心地よい公園噴水前。水飛沫にハシャグ子供達へ、俺は渋い声(多分)でそう語りかけた


子供達は一旦動くのを止めて、訝しげな顔で俺を見る。何言ってんのコイツって感じだ


「いや、知ってる様で知らない事もあると思うんだよ。例えば、この公園の東から抜けて小道を進んだ先にある三階建てビルの地下にあるたこ焼き屋を知ってるか?」


俺がそう訪ねると、皆は知らないと首を振る。知っている雪葉だけは味を思い出したのか、複雑な顔をした


「看板すら出ていない、知る人ぞ知る店だ。因みに不味いから気を付けろ」


以前ダチに罰ゲームとして食わされたが、よくこんな下手に作れたなと逆に感心してしまった程だ


「とにかく、こんな感じで知らない事とかあるだろ? そこでだ、今日は自分が知っている町のお勧めスポットや裏話を披露し合う、なんてのはどうよ?」


実際にその場へ行ってみたりな


「どうよって言われても……どう?」


花梨が代表し、皆の意見を聞く。基本雪葉は俺を全面肯定だから、真っ先に手を上げて賛成してくれた


「わたしも!」


「師匠に賛同」


「わ、私は……うん」


続けて三人が同意した所で花梨は頷き、あんたはどうかとリサに尋ねた


「え!? えと……い、良いわよ、特別だからね!」


「はいはい。それじゃあ風子はどう?」


「もちろん賛成だよ花梨。僕はこの町に来て、日が浅いからね。知らない事は沢山あるんだ」


風子がそう言うと、花梨は不思議そうな顔をし、風子を見つめ返す


「花梨?」


「……あ、そっか。風子は転校して来たのよね。なんだかずっと前から友達だった気がしてたから、忘れていたわ」


さも当たり前の様に言い、あはは笑う。それを聞いていた風子はキョトンと目を丸くした


「うん! もう風ちゃんは、私達には欠かせないお友達!」


そんな雪葉の言葉に他の子達も、しっかりと頷く。それを見た風子は少しだけ困り顔で、


「……ありがとう、みんな」


だけど嬉しそうに微笑んだ


「……はは」


たく。良い仲間達だよな、お前達は。少し羨ましいよ


「さて、それじゃそろそろ行くか」


「おー!」


「最初は俺が紹介するぞ!」


「おー!」


カブトムシが良く捕れる秘蔵の場所だ! 興味あるかどうかは知らないが……


てな訳で、テンション上げて公園を西から抜けて駅方向へ進む。秘蔵の場所は駅裏にあるのだ


先頭をズンズン歩き、ちょいと振り返る。やっぱり子供達は、きちんと二列に並んでいた


「……花梨」


「え? な、なに?」


「お前らっていつも二列になって歩いてるのか?」


「え? 道が細くなったらちゃんと一列に並ぶわよ?」


「そ、そう……」


俺よりしっかりしてやがる。侮れんな


「てゆーか何処に向かってんのよこれ。もう私、歩くの飽きた!」


一番後方のリサが口を尖らせブーイング


「リサはモヤシっこ」


「うっさい!」


「やめい、やめい。もうすぐ着くから。ほれ、駅が見えて来た」


「駅? 駅なんかに珍しいものなんてあるのかしら」


「やっべ〜、マジ可愛いわ!」


リサの疑惑に満ちた声を、興奮した男の声が打ち消した。それはこちらへ歩いて来る、二人組が発したものだった


「どうする? もう一回行ってみる?」


「行く? 声かけちゃう?」


「声は……無理だ」


「だよね……とにかくもう一度見て来よう!」


「おう!」


そう言い、二人はUターンをして駅に向かって行く


「…………」


なんだありゃ?


変な奴らだと思いながら、同じく駅に向かう。すると前を歩く二人組は、ティッシュ配りをしているお姉さんの側へ行き、ティッシュを受け取った


「…………むう」


そのまま駅構内へと入って行く二人組。俺達もまたお姉さんへ近付いて行く


白いスポーツ帽子を被り、赤いロゴ入りの白Tシャツを着たお姉さん。ズボンは、ぴっちり超ショートのデニムパンツで、そこから伸びる白い足は長くてしなやかだ


しかし、一番注目すべきはそのヒップラインだろう。締まっていながらも女性特有の丸みを残していて……って、何力説してんだ俺は


「……ふ。とんだセクシーガールだぜ」


この俺が惑わされるとはな


俺は興味を無くし、お姉さんの横を通り過ぎ――


「はい、ティッシュで〜す」


「あ、どうも〜」


三個も貰っちゃったぜ!


「さっそく今晩、使って下さいね」


「よ〜し、今晩いっぱい使うぞ〜って、何で夜限定!?」


思わずお姉さんの顔を覗き込む。するとそこには


「あ、綾さん!?」


「はい、綾さんです。今日は……なんでしょう?」


綾さんは首を傾げ、胸の前で腕を組む


「う〜ん。遠足のようですが……」


「あ、やっぱり遠足に見えます? ある意味正解ですよ」


市内巡りって奴だな


「こんにちは、お姉さん!」


俺達の話が途切れた所で、雪葉は綾さんにペコリと頭を下げた


「はい、こんにちは雪葉さん。皆さんもこんにちは」


綾さんは一見冷たい印象を受けるシャープな顔立ちをしているが、こうしてにこやかに笑っていると、逆に凄く優しい人に見える。それは雪葉以外の子達も同じようで、少し戸惑いながらもこんにちはと返事を返した


「うわぁ、皆さん可愛いですね〜」


「ええ。それに、みんな良い奴らなんですよ?」


仲間の為に頑張れる奴らだ


「雪葉さんのお友達でしょう? 皆さんが良い方達なのは分かります」


綾さんはそう言い、雪葉達に優しい視線を送る。それにしても……


「綾さん」


「はい」


「凄い格好ですね」


太ももが半分以上も露出していて、目のやり場に困ってしまう


「あちらに比べれば全然ですよ」


そう言って指差すのはバス停の方向だ。そこには、綾さんと同じ格好をした眼鏡のオッサンが居た


「…………」


通行人は明らかに彼を避けている


「夢に見そうでしょう?」


「ええ……」


それも悪夢で


「……と、それじゃ俺達はそろそろ行きます」


「はい、お気をつけて。あ、そうだ佐藤君」


「え? うわ!」


綾さんは急に俺へ体を近づけて、耳元に口を寄せる。ラベンダーの様な甘い香りが鼻をくすぐった


「な、なんです?」


「……ラインが出てしまうので、今、下着を身に付けていません」


「ええ!?」


「だから蒸れてしまいます。佐藤君にお会いしましたので、尚更濡れて……」


「ち、ちょ!?」


何を言って


「嘘ですけどね」


「何言ってんだ本当に!?」


青少年をからかいやがって!


「うふふ。やっぱり佐藤君は可愛いです」


そう言い、綾さんは俺から離れる


「ごめんなさい、変な事を言って。またご連絡しますね」


そして、雪葉達にさよならと手を振った


「……まったく」


相変わらずな人だ



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ