俺の遊び 5
さて、俺がリサ&千里に絡まれてから、かれこれ30分の時が過ぎた。呼び出した子達は全員無事コンビニ前へと集まり、今は皆がそれぞれ話を弾ませている
「花梨! 今日こそ決着よ!!」
「決着って……なんのよ?」
「え? え、ええとえと……。ま、先ずは胸の大きさ! ふひゃ!?」
「寝ぼけてるみたいだから、ぽっぺつねって起こしてあげるわ!」
「ひはひ、ひたひ〜ゆ、ゆるひて〜」
「…………」
相変わらず仲の良い二人だな
「宮ちゃん、今日のお稽古は?」
「5時からピアノだよ雪ちゃん」
「みやー、今度またピアノ聞かせて?」
「うん良いよ、みっちゃん。いつでも遊びに来て」
「分かった! 雪も一緒に行こ?」
「うん!」
こっちの三人は穏やかな雰囲気だ、多分いつもこんな感じなのだろう。そして向こうは……
「風ちゃん」
「なにかな?」
「狐が一匹居ました。そこに狸が三匹やって来て、猫が二匹寝転びました。それをトラさんとタコさんが浅草で見物していた所、パジェロに乗ったアルマジロが通りかかりました。この中で人間は何人?」
「明確なのは一人だね」
「その心は?」
「車の運転は人間以外出来ないから、かな」
「……完敗」
向こうは良く分からん。つか、風子すげー
しかし、これからどうするかな。もう俺は必要ない気がするし、画期的な遊びってのも全く思い付かない……逃げるか
「で、これからどうするのよ」
「いたた……その人が画期的な遊びっを教えてくれるって」
頬をさすりながら俺を指差すリサ。どうやら運命からは逃げられないらしい
「あい……さ、佐藤お兄ちゃんが?」
「……え?」
お兄ちゃん?
「いや、まさか……空耳か?」
花梨が俺をお兄ちゃんと呼ぶ訳が無い。もし空耳じゃないとすると……なづなちゃん?
俺は花梨をジっと見つめ、なづなちゃんかどうかを確認してみる
「な、なによ」
いつになく弱気な表情で俺を見つめ返して来るが……
「本物っぽいな」
身長で判断。
「なによ!」
「いや、いきなりお兄ちゃんとか言うからさ」
偽者かと思ったよ
「だ、だって……。べ、別に呼び方なんてどうでも良いでしょ!」
プイッとそっぽを向いてしまった。どうやら機嫌を損ねてしまったらしい
「確かにそうだな。分かった、好きに呼んでくれ」
たまには介さんとか良いかも
「さて、と」
いつまでも此処に居たって仕方がない。移動するべ! て、どこにだ?
「むう」
困ったな
「……知ってる? これが大人の哀愁って言うのよ」
「え? ……ただ、ボーッとしてるだけでしょ」
「フフン、駄目ね花梨は。千里、ちょっと来て」
「なに?」
「ほら、大人の哀愁。花梨は分からないんですって」
「分からない」
「子供よね〜」
「リサが何を言ってるのか分からない」
「そうそう、私が何を言ってるのか分からない……って、千里!」
逃げる千里をリサが追いかける。そして二人は、そのままどっかに行ってしまった
「…………はぁ」
花梨は溜め息を付き、ベンチに座った。他の子達も、そろそろ立ち話に疲れてきたっぽい雰囲気がある。困ったな……
「リサ達が戻って来たら移動しましょう。さ、佐藤お兄ちゃん」
「あ、ああ」
とりあえず公園にでも行ってみるか。なんて思っていると、走って行った方とは違う道からリサ達が戻ってきた
「ま、まて〜」
「待たないし」
二人の差は、約15メートル。千里にはまだ余裕があるが、リサに至ってはもうフラフラで、右手を力なく上げながらヨタヨタ走るその様は、もはやゾンビと言っても良い
「そしてゴール」
一着、千里。汗を拭く姿が爽やかだ
「ひふあふやはゃ」
二着、リサ。言動すらもゾンビ化している
「大丈夫、リサちゃん?」
側へ行き、声を掛ける雪葉。リサはハァハァしながら頷き、花梨の所へ
「な、なに? 暑いっ!?」
目の前に立つリサを花梨は慌てて避ける。その避けた所へ、リサは座り込んだ
「はぁふぅ、はぁふぅ」
リサの周りに、蜃気楼が出来ている。見ているだけで暑い
「水、買って来るから」
そう言い、三度コンビニへ入って水を八本購入
「960円で~す」
「あいよ」
これで残り4040円。厳しい数値だ
「ほれ、水だ水だ。飲むが良い」
コンビニを出て、先ずリサに渡す
「冷たいからゆっくり飲めよ」
そして他のガキんちょ達にも配布。皆は蓋を開け、一気飲み
「……だよな」
そりゃこんな暑い日に、ただ突っ立ってたら喉も渇くわな
「よし、それじゃリサが落ち着いたら公園に移動するか!」
どうするかは行ってから考えよう
そしてそれから数分後。雪葉達と適当に話していると、リサがパッと立ち上った
「復活よ!」
両手を腰に当てて、大威張り。思ったより元気そうだな
「じゃ行こうか、みんな」
「はーい!」
返事を聞き、俺は皆の先頭に立って歩く。そして歩きながら考える
体を動かす遊びは危険だと言う事をリサは実証してくれた。となると、体を余り使わず、尚且つ外でしか出来ない遊びを考えなくてはいけないのだが……おっと信号か
信号前で足を止めて振り向くと、何故か子供達はきっちりと二列に並んでいた
「な、なんて規則正しい……」
軍隊みたいだ
「なんだか遠足みたいだね、お兄ちゃん」
最前列の雪葉が、笑顔でそう言う
「……遠足」
遠足、遠足……
「お兄ちゃん?」
「遠足……あ!」
それだ!