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俺の遊び 4

「ほら美月。ちゃんと汗を拭いとくんだぞ?」


「ありがとー」


コンビニを出た俺は、まず美月にタオルを手渡した


「ほら、お前達も持っとけ」


続いてベンチで休んでいるリサや、将棋の話をしている雪葉達にもタオルを渡し、俺は首に巻く


「汗をかいたらしっかり拭く。なるべく喉が渇く前に水分補給をする。調子が悪くなったら直ぐに言う。この辺を守ってくれ」


「はーい」


元気良く手を上げた美月に微笑み返し、再び空を見上げる


「……しかし本当に良い天気だよな」


冷房の効いた図書館かどっかに引きこもりたい気分だ


その時、ふいに一陣の風が吹いた。新緑香る初夏の風が――


「……来たか」


俺は視線をゆっくりと下ろし、その風を見つけ


「きゃ!」


られなかったぜ!


「も〜、強い風やだなぁ……あれ? どうしたの、お兄ちゃん。なんだか顔が赤いような……」


風で揺らめいたスカートを両手で押さえる妹が、不思議そうな顔で俺を見つめた


「パンチラげっとだぜ」


「して無い!」


勘違いして恥ずかしかっただけだ!


「がっくし」


千里は肩を落とし、リサの元へと行く


「なんで残念がるんだよ……」


しかし風子の奴め。俺を欺くとは


「ふ、流石だな」


「んん? ……あ! 花梨ちゃんと宮ちゃんだ」


「おーっす!」


駅へ続く左側の道から、二人は並んでやって来た。それを雪葉と美月が手を振って迎える


そしてそれに気付いたのか、花梨達もまたこちらへ向かって大きく手を振った


「か、花梨!? ち、千里! 鏡とか持ってない?」


「大丈夫、いつもと同じ。可愛いぜベイベー」


慌てて髪を整え始めたリサに、千里はフォロー? をする


「べ、別に可愛くなくても良いんだけど!」


「なんでやねん」


お、千里のツッコミだ。中々だな


「こんにちは宮ちゃん、花梨ちゃん」


感心しながらリサ達を見ている間に、花梨達は直ぐ側へ来ていた


「ええ、こんにちは」


「こんにちは雪ちゃん、美月ちゃん」


「二人とも遅いぞ〜」


「あんたが早すぎるのよ。……あ」


美月達と一通りの挨拶を交えた後、花梨はこちらを見て動きを止めた


「……ん?」


てか、俺を見てるのか?


「どうした?」


額の汗を拭き、四人に近寄る。鳥里さんは「ひっ」と、短い悲鳴を上げて後退った


「どしたの、宮?」


美月が尋ねると、


「ご、ごめんなさい! 近寄らないで下さい!!」


完全否定。もはや害虫扱いだ


「んー? 変な宮。それより後は風子だけ!」


美月は俺に駆け寄り、何故か俺の右手を掴んで左右に振る


「風子が最後? 珍しいわね」


「うん、風ちゃんはいつも早く来て私達を待っててくれるから。今日は逆だね」


うんうんと頷きながら話をしている花梨と雪葉。その二人の側にリサがこそこそとやって来た。しかし話には加わらず、様子を伺っている。どうやら話に加わるキッカケを探してる様だ


「リサ」


「はう!?」


声を掛けるとリサは飛び上がり、慌てた様子で俺を睨み付けた


「なによ!」


「花梨達にタオルを渡してやってくれ」


俺は近寄れないし


「タオルを? ……し、しょうがないわね。渡して来てあげるから感謝してひれ伏しなさい!」


「あ、ありがとう」


ひれ伏しつつ、タオルを渡す。するとリサは、して得たりってな顔で花梨達の所へ向かって行った


「なぁなぁ、兄ちゃん、兄ちゃん」


「ん? 何だ?」


そんなに腕を振ったら外れてまうで〜


「今日は何するの?」


「今日か? 鬼ごっこでもやろうかと思ってた……んだけど」


さっきから汗が止まらない。そして美月の手のひらもまた、しっとり汗ばんでいる


「死人が出るかも知れんな……」


第一候補者、俺


「鬼ごっこ? う〜ん」


美月は腕を組んで、唸り始めた


「やっぱ鬼ごっこは辛いか」


暑いもんな〜


「鬼ごっこ好きだけど、宮と雪はあんまり好きじゃないと思う」


「ふむ」


確かに雪葉は走るのが苦手だ


「ま、鬼ごっこってのも適当に言っただけだから。美月達が楽しめれば何でも良いよ」


「わたし、兄ちゃんと一緒なら何でも楽しい!」


「そうか? ありがとよ」


撫でり、撫でり


「えへへ!」


その時、そよ風がなびいた。熱した体を優しく癒す、清純の風


「来たか……」


俺は振り返り、風の名を呼ぶ


「風子」


「あれ? 良く分かったね。驚かそうと思って、コンビニ脇の小道から忍んで来たのだけれど」


「風が……風が教えてくれた。そう言う事だ」


どう言う事だ?


「……ふふ。今日の風はお兄さんの味方なんだね」


風子はそう言った後、ペコリと頭を下げて


「こんにちはお兄さん、美月。今日はいい天気だ」


「そうだな」


嫌になるぐらい


「こんちわっ風子!」


「え、風ちゃん? 本当だ!」


「来たわね風子」


美月の声をキッカケに、風子の周りへ皆が集まって来る。やっぱカリスマ性があるよな風子は


「妹大会、復活?」


「いや、だからしないから」


一人増えてるし



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