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第144話:俺の遊び

午後になった日曜日。さっき姉ちゃんに、最近雪葉を構いすぎだと怒られた俺は、北を目指して旅に出ていた


「そんな構ってないと思うんだけどな……」


むしろ世間の兄妹よりコミュニケーションが足らないのでは、と思う。だけど、言われてしまったら仕方ない。少し気をつけよう


とにもかくにも反省し、反省ついでに古本屋へ向かって歩いている


「……ふぅ」


今日も暑い


「ちょっと、そこの屍!」


信号待ちをしながらハンカチで額の汗を拭いていると、そんな声が向かい側の道路から掛かった


「まさかとは思うが、俺の事か?」


うんざりしながら声がした方を見る。すると、予想した通りの顔がそこにはあった


「リサか」


相変わらず生意気そうな顔だ


「私も居るし」


腰に両手を当て仁王立ちするリサの背後から、ひょっこり千里が顔を出した


「よう」


青になった信号を渡り、待っていた二人の所へ行く。二人は半袖短パンと言う、非常に夏&子供らしい格好をしていた


「今日は暑いな」


「夏なんだから当たり前でしょ。それより――」


リサは一度言葉を区切った後、ビシッと俺を指差して言った


「何か面白い遊びを教えなさい!」


「教えて」


「子供なんだから自分で考えろよ。そっちの方が面白いだろ?」


全く。もはや立派な青年の域に達した俺に、何を聞いてやがる


俺がそう言うと、二人、特にリサは露骨に呆れた顔をして、


「ほら、やっぱり役に立たない。きっと知らないのよ」


と言った


「恭君は、もうちょっと知識人だと思ってた。がっくり」


「…………」


ガキんちょ達の目は、侮蔑に溢れている。所詮大人なんてこんなもんか的な目だ


「…………いや、知ってるよ? 出し惜しみしただけだから」


「ふ〜ん」


あ、全然信じてねー


「良いわ、じゃあそれ教えてよ。面白かったら今日の遊びに採用してあげる」


「あ、ああ……」


やばい、特に思い付かない。しかし大人として、此処で逃げる訳には……


「……じ、人生ゲームってのがあって」


「却下」


「人生無理ゲー」


即座に否定


「出し惜しみしてこの程度?」


「2点」


そして追い打ち


「ぐ……ち、違うって。人生ゲームを元にした、全く新しいゲームだっての」


「ふ〜ん」


「へ〜」


二人の目が非常に冷ややかだ。夏には涼しくて良いかもしれん


「じ、人生、七転び八起きゲームだ!」


以前、燕に聞いた事がある。数々の苦境を乗り越えてゴールを目指すその様は、一時間と言う短い時間ながらまるで長い人生のシミュレーションだと


「……聞いた事ないわ」


「流石、恭君。一味違う」


おお、眼差しに少し尊敬の色が!


「それ、やってあげても良いわ。どうやってやるの?」


「ど、どうやって……」


どうやって?


「……まさか知らないとか」


うっ


「リサ、恭君はそんないい加減じゃない。謝るべし」


「う……ご、ごめんなさい」


ううっ!


「……恭君?」


「あ、ああ。と、友達がな、持ってるんだよ。ちょっと電話して借りてくる」


俺は慌てて携帯を取り出す。そして、燕に連絡。頼む、出てくれ〜


プルルルル、プルルルルガチャ


数回のコール後に回線が繋がり、俺は直ぐに本題に入る


「もしもし、燕? 俺だけど聞きたい事が……」


「本日、燕は電話に出ません」


返って来たのは、とても落ち着いていて、だけど妙に艶っぽい女性の声だった


「え?」


誰だ?


「伝言があれば、お聞きしますが」


言葉に刺がある。俺への嫌悪感を隠そうともしない


「い、いえ。突然のお電話、すみませんでした」


「いえ」


ツー、ツー。電話は、あっさりと切られ、寂しい電子音だけが残される


「……燕」


俺は今の会話に何故だか強い不安を感じ、強く電話を握りしめた


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