第27話:夏の休日
ゴールデンウイーク2日目
朝飯を食べ、雪葉とゲームをし、少しだけ勉強をしてからコンビニと本屋へ行き、家に戻って昼飯を食べてると……
「ふぁ~、………あ~頭いた~」
寝起きの夏紀姉ちゃんとリビングで遭遇してしまった
「………かゆ」
Tシャツと短パン姿の姉ちゃんは、腹をボリボリ掻いている。普段外へ出掛ける時と、同一人物とは思えないだらし無さだ
「ね、姉ちゃん? いくら休みだからって、余りにも……」
「うっさいわね。姉の休日に、ごちゃごちゃ言うんじゃ無いわよ、シスコン!」
「シ、シスコ……」
可愛い弟をシスコン呼ばわりとは……なんて酷い女だ
「何よその目は」
「ね、姉ちゃんには弟をいたわる気持ちが無いのかよ!」
いっつも変態扱いしやがって!
「いたぶる? いたぶって欲しいのかしら? そうねぇ、アキも居ないし……ふふ。良いわよ? 」
姉ちゃんは蛇の様に舌なめずりをしながら、ゆっくりと近付いて来る
「な、夏紀姉……様?」
「ふふ……うふふふ」
「ひ、ひぃい!?」
15分後~
「ふぅ。変態な弟を持つと苦労するわ」
肌がツヤツヤしている姉ちゃん
「か、関節が、腰がぁああ」
逆に俺は瀕死
「さてと、出掛けるから準備しなさい」
「は、はい?」
「ドライブ行くわよ。雪葉も連れて」
「ハァ? 何言って」
「……………ょん」
ゴニョゴニョと何かを呟いている
「何? 聞こえないって」
「コミュニケーションよ! あんたが言ったんでしょうが!!」
「お、俺が言ったって…………あ!」
たまには雪葉達と話せって言ったあれか!
「だからって突然言われても困るっての。俺達にも予定と言うものが」
「あんたが欲しがってた桃太郎侍のサイン色紙、あげるわよ」
「行きましょう、姉様」
「よし、それじゃ雪葉を呼びに行くわよ」
「イエッサ!」
敬礼をし、雪葉の部屋の前へ。そしてドアをコンコンとノックする
「………………」
「いないのかしら?」
「う~ん、さっきまで居たけど……」
もう一度、軽くノック
「…………雪葉? いないのか?」
「……ちょっと覗いても大丈夫かしら?」
「俺に聞かないで下さいね」
「たく、使えない男ね。良いわよ、あたしが覗くから」
姉ちゃんはゴクリと唾を飲みこみ、恐る恐ると少しずつドアを開けていく
「あんたは覗き魔かよ」
「ああん!?」
ま、間違えて口に出してしまった!
「ゆ、雪葉が先だろ!」
「あ、そ、そうね、ごめん」
何とかごまかして部屋の中を覗くと、ベッドの上で抱き枕を抱えて眠る雪葉が居た
「……寝てるわね」
「そうだね」
「………………にぃ」
「ん? 寝言かしら」
「んぅ……あ、だめぇ、お兄ちゃん…………すき」
「………………」
「………………後で警察行きましょう?」
「はぁ!?」
何、勘違いしてるんだこの女は!!
「…………そ」
「しっ! 続きがあるわ」
「す……き焼きに味噌……ダメ」
俺達はドリフの様にずっこけた
「どういう寝言よ!」
「ね、姉ちゃん! 起こしてしまうから」
「あ、ごめん……ごめんね雪。おやすみなさい」
俺達は静かにドアを閉めて、部屋を離れる
「……姉ちゃん」
「はいすみませんごめんなさい」
なんつー心の篭ってなさ!
「けっ! ドライブは駄目になったがサインは貰うからな!!」
「何言ってるのよ、行くわよドライブ」
「へ? だ、だって雪葉は寝てるし春菜と秋姉は部活だし……」
「あんたが居るでしょう」
30分後~
「………………」
車庫の前で待たされる俺
「待たせたわね」
姉ちゃんは、きちっとしたスーツにレイバンのサングラスをかけて登場した
「ど、どちらの西部警察から?」
「誰が渡 哲也だ!!」
ぽかりと殴られる
「乗りなさい」
姉ちゃんは愛車であるスカイライン 370GT タイプSPに乗り込み、助手席の鍵を開ける
「ど、どちらへ行くのです?」
車に乗り、震える子猫の様に尋ねると、姉ちゃんはニヤリと笑いながら言った
「風に聞きなさい」
「…………」
嫌な予感しかしないのは何故?
「さぁ、行くわよ」
「……あいよ」
気は進まないがシートベルトを締め、いざ出発。しかしこれが、悪夢の始まりだったのです……