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今日の夏紀さん

某日某時某リビング


「おに〜ちゃん」


「なんだい雪葉」


「えへへ」


「お、なんだか上機嫌だな雪葉〜」


「きゃっ。も〜、頭撫でちゃ駄目」


「ふふ。ごめん、ごめん許してくれ」


「ん〜、許す! だから……ひざ枕してい?」


「ああ、どうぞ」


「違うよ、お兄ちゃん。雪葉がするの」


「え? お、おい恥ずかしいって」


「だ〜め。はい、お兄ちゃん」


「う、うむ〜。じゃあ少し……。お〜、中々寝心地が良いな」


「えへへ」


「…………」


ムカついた。


二人のイチャつき具合にムカついた


何あれ? 見せ付けてくれてんの? アタシだって妹達とイチャつきたいっての。末っ子大好きだっての


「お兄ちゃん、次は右の耳ですよ」


「うむ……おおぅ、何とも言えない心地良さ。眠くなって来るぜ」


「眠って良いよ、お兄ちゃん」


ああ、あのシスコン馬鹿にラリアットを食らわしたいわ。倒れたところでアンクルロックを決めて止めにシャイニング……


「ぬう……ぐうぐう」


「……おやすみなさい、お兄ちゃん」


な、なんて慈愛に満ちた穏やかな顔。アタシなら脳天に肘打ちよ?


「…………あれ? 夏お姉ちゃん? いつからそこに?」


「うっ……い、今来た所よ」


大分前に居たなんて言えない……


「さ、さ〜て、部屋に戻るわね」


「うん」


逃げる様に部屋へ戻り、ベッドに座って溜息


最近、家でアタシの存在感が薄い気がするわ。やっぱり夜遊び歩いて、昼間まで寝る生活を繰り返していたからかしら。会わない日もザラにあるし


アタシもあの馬鹿みたいに雪や春、秋と仲良くしたい。でもどうすれば……ん、そうだ!



某日某時某部屋


「なんだよ姉ちゃん、いきなり部屋に呼び出して」


「アンタにちょっとお願いしたい事があるのよ」


「え!? な、なに?」


何、怯えてるのかしら。優しく微笑んでやってるのに……まぁ良いわ


「実はね」


説明中・・・


「雪葉と仲良くしたい? すれば良いじゃん」


「うっ」


随分簡単に言ってくれるわねコイツ


「……仲良くする方法が分からないのよ」


歳も離れてるから、何を話して良いか分からない


「ふ〜ん」


「色々話したいんだけどね……」


「ふ〜ん」


聞いてるのかしら、コイツ


「……と、言う事で協力しなさい」


「え? べ、別に良いけど、どう協力すれば良いのさ」


「アンタ、雪になりなさい」


「…………は?」


「雪に成り切って話すのよ。本番前の練習」


我ながら苦しい策だとは思うけど、コイツなら雪の事を本人以上に知ってるだろうし……


そんな悩めるアタシの言葉に、恭介は目を丸くして言う


「……大丈夫、頭? うげ!?」


あ、ヤバ。思わずティッシュ箱投げちゃった


「な、何するんだよ姉ちゃん!」


「ごめん、ごめん。アタシも必死なのよ。ね、お願い」


「ね、姉ちゃんが俺に頭を下げた……」


恭介は驚愕し、体を震わす。相変わらず失礼な奴ね


「……分かったよ。ちょっとだけな」


だけど、何だかんだで付き合ってくれるのよね。そういう所、昔から全然変わってない


「ありがとう。それじゃ初めましょう」



恭介さん変身中・・・


「夏紀おね〜ちゃん♪」


「ぶっ飛ばすわよ!」


「ち、ちょっ落ち着いて落ち着いて!」


「あ、ご、ごめん。つい気持ち悪くて……」


危うく脳天に拳を振り下ろす所だったわ


「たく……まだやるの?」


「本番はこれからよ! よし、ねぇ雪」


「はぁ……。なぁに、お姉ちゃん?」


ムカつくわね……


「お、お姉ちゃん? なんだか目が凄く怖いんだけど?」


「とと、ごめんなさい。

……雪は今、欲しい物ある?」


「いきなり物で釣るのかよ。まるでキャバクラに通うオッサ……!?」


「……なにか?」


「め、目に殺意……ご、ごめ」


「どうしたの〜。アタシは全っっ然、気にしてないわよ〜」


「すみませんでした!」


怒りを隠して穏やかに言ってやってるのに、なんでこんなに怯えてるのかしら?


「……それでどうなの? 雪は何が好き?」


「えっと……カバさん!」


「カバ? カバってあのマヌケ面の?」


「今、雪葉のブームなんです!」


「へぇ。じゃあ好きな食べ物は?」


「ケーキかな。後は、イチゴ!」


「なるほど」


メモメモ


「よし。じゃあ好きな場所はどこ?」


「動物園とか水族館! って雪葉のふりをする必要あるのか、これ……」


「なるほど。他には恋の話を……それじゃ今、好きな子いるのかな〜?」


「……AVのオープニングインタビューかよ」


「ああん!?」


「た、多分、居ないと思うな〜。まだ雪葉には早いよ、おね〜ちゃん」


「そう……」


ま、コイツにベッタリだしね


「よし、最後の質問よ。雪は……お、お姉ちゃんの事、どう思ってる?」


こんな事、本人には聞けないけど……な、なんだか緊張するわね


「……もちろん大好きだよ。だから、もっと雪葉とお話してね。お姉ちゃん」


「…………ふふ」


まったく、似てないにも程があるわよ。でも


「……ありがと」



翌日


「おはよう雪」


「あ、夏お姉ちゃん。おはよ」


「秋もおはよう」


「ん……おはよう、姉さん」


「あら〜、珍しく早いわね夏紀〜」


「今日から早起きする事に決めたのよ」


そして秋や春。雪とついでに馬鹿達から尊敬される姉になるわ!


「な、夏紀お姉ちゃんの目が燃えてる……」


「……三日」


「え? な、なにが三日なの? 秋お姉ちゃん」


「さ、二人とも。一緒に朝ご飯食べましょう。今日のご飯はなにかしら〜」


ふ、徹夜明けで食欲無いけどね……



そして三日後。無理が祟って力尽きた夏紀の部屋で、覚まし時計は何故か電池が抜かれていたという


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