燕の訪問 4
やたら登場人物が多くなってしまった女系家族。もう訳わからねーよ! という方に。
名前表【】は重要度S~E
【S】
母
佐藤 夏紀
佐藤 秋
佐藤 春菜
佐藤 雪葉
佐藤 恭介
【A】
霧島 花梨
風見 風子
坂上 美月
菊水 燕
徳永 綾音
【B】
父
リサ・クオーネン(フィンランド人)
神崎 千里
【C】
六桜 静流
日永 宗院
鳥里 宮
霧島 香苗
岡田 直也
レディー・オカメ(ヒーロー)
【D】
戸田さん(てんねん)
ワカメの人
桜庭 佐久
真田 奈都美
柊 ゆかな(はらぐろ)
宮田 刀
霧島 なづな(ほぼておくれ)
組織の犬
【E】
残りの人達
「こんばんは、佐藤君」
部屋を出て向かった玄関先には制服姿の真田先輩がいた。ピンと伸ばした背筋が綺麗だ
「どうしたんですか、真田先輩?」
「ええ。秋に用があったのだけど、まだ帰って無いみたい」
「そうなんですか? 携帯は……」
「繋がらないの。図書館かな?」
「さすが先輩。秋姉の行動を読んでますね」
俺もそう思う
「マナーモードにしてみたらとは言っているのだけど、きっと癖で切ってしまうのね」
秋姉は携帯を余り活用しない。学校にも持っていかないし、メールも滅多に打たない。ただ、出かける時は持って行きなさいと母ちゃんに言われてるから、学校が終わったら必ず家に一度戻って、携帯を持って出かけて行く
「図書館は七時までですし、後2、30分で帰ってくると思いますけど、上がって待ってます?」
「ありがとう、じゃあそうさせてもらうね。それで実はもう一人、私の他にいるのだけれど……」
先輩にしては珍しく歯切れの悪い言い方をする。なんだ?
「少し待っててもらっても良いかしら?」
「ええ」
「じゃあちょっと失礼するわね」
そう言い、先輩は玄関を出て行く。言われた通りその場で待っていると、直ぐにまた扉が開いた
「お待たせ」
「……お邪魔します」
入って来たのは先輩と、先輩に比べて二回りは小さい、しょぼくれたちびっ子……
「静流さん?」
「恭介さんが佐藤 秋さんの弟だったなんて……友達になれると思っていましたのに」
静流さんは弱々しい目で俺を睨む。睨まれる様な事はしてないと思うが、なんか胸が痛むな
「と、まぁこういう訳なのよ」
「え? ど、どういう訳です?」
「う〜ん。それは秋が帰って来てからかな」
「あっと、そうですね。どうぞ二人とも、上がって下さい。今、燕が来てますよ」
「え? 燕ちゃん? 久しぶりかも!」
さっきまで明らかに困っていた先輩の表情に喜色が浮かぶ。そう、先輩は秋姉の紹介で知った燕を非常に可愛がっているのだ
因みに、ゆかなと先輩は仲が悪い。二人とも似たような軍師タイプなのだが、性質がまるで違うからだろう
「でも秋が居ないのに、燕ちゃんが居るという事は……もしかして、ヨリをもどしたの?」
先輩は声を潜め、口元に笑みを浮かべながら俺に尋ねた。相変わらず恋愛話が好きな人だな
「戻してませんよ。でも大切な友人には代わりありませんから」
「ふぅん? 良いのかなぁ。燕ちゃん、すごく魅力的だから引く手あまたよ?」
「そうなんですか? 燕がモテる?」
確かに美人だし、可愛いとも思うけど……
「全然イメージが湧きませんね」
しっかりしてるかと思えばドジだし、偉そうだと思ったら気が弱いし、それに頑固だし、不器用だし泣き虫だしお人よしだし。……でも、頑張り屋で優しい奴だ
「そう……ですね。モテるかも知れません」
少なくとも俺は好きになった訳だしな
「でしょう! だからここは一つ、お姉さんに任せてくれない?」
「お姉さんって……あ! ご、ごめん静流さん。こんな所に立たせっぱなしにしちゃって」
小さいから忘れてた! などと一瞬、思ってしまった俺をお許し下さい
「いえ、和気藹々とお話するお二方を見ていますと、なんだかほっとします。ですからお気になさらないで下さい」
静流さんは力無く首を振る。やっぱり元気がないみたいだ
「あの……ごめんなさい静流さん。私が連れて来たのに、自分の事ばかり話してしまって」
「本当にお気になさらないで下さい。正直な所、先程から上の空だったのです」
確かに少しぼうっとしている。心ここにあらずって感じだ
「とにかく上がってください二人とも」
「ええ。お邪魔します」
先輩は先に玄関へ上がった後、靴を揃えながら目で静流さんを促した
「……お邪魔します」
それを見た静流さんは複雑な顔をしたが、同じ様に靴を揃えて上がる
「とりあえず俺の部屋で大丈夫ですか? 少し汚いですけど」
「ええ」
「はい」
二人の了解を得たので、いざ俺の部屋に出陣だ!
「ここです」
3秒で着くけどさ
「はい、どうぞ」
ドアを開けて、二人を先に部屋へ招き入れる
「ありがとう、お邪魔します」
「む。……奈都美か?」
「こんばんは燕ちゃん。久しぶりね」
「うむ、元気そうでなりよりだ。……そちらの方は?」
燕が静流さんに目を向けると、静流さんはその場に正座し、
「はじめまして、六桜 静流と申します。お見知りおきを」
と頭を下げた。それを受けて燕も姿勢を正す
「ご丁寧にありがとうございます。私は菊水 燕と申します」
「ま、まぁ堅苦しい挨拶は終わりにして……そうだなお茶入れて来るよ。それじゃ先輩、後は宜しく」
空気を和らげといて下さい
「え? え、ええ」
困惑気味だが、ま、先輩なら大丈夫だろう。調和のプロだからな
さて、お茶お茶っと
ガチャっと、ノブを回して――
ゴゴゴゴゴ
ゴゴゴゴゴ
「ひぃ!?」
一人ぽつんとテーブルについていた小さな背中。その背中には大きな闇があった。気のせいか効果音まで見えるぜ!
「か、母ちゃん?」
恐る恐る母ちゃんを探すと、母ちゃんはソファーに座っていた。手を合わせて俺に謝っている風に見えるのは、気のせいと思いたい
「ゆ、雪葉さん?」
「あ、お兄ちゃん」
俺の妹は笑顔で振り向きました。口は三日月の様に裂け、目はギラリと鋭い光を放っている
「どうしたの、お兄ちゃん。そんな所に立って。大丈夫、雪葉は怒って無いよ? ほら、うふふ」
「す、すみませんでしたぁあああ!!」
土下座。それも床にヘッドバットをくらわす程の土下座
プライド? そんなもん犬の餌にくれてやるよ。生き残る事、それが勝利の最低条件なのさ
「お、お兄ちゃん?」
「すみません! すみません!!」
「ゆ、雪葉は本当に怒ってないよ? 変な勘違いをしちゃった自分に怒ってるの」
「そ、そうなのか?」
「うん。……まぁ誤解されるような事をするお兄ちゃん達も、雪葉としてはどうかと思いますが」
敬語!?
「でも、雪葉も悪いの。だから……ごめんなさいお兄ちゃん」
ペこりと頭を下げる雪葉さん
「……ごめんな雪葉。今度からは気をつけるよ」
主に春菜が
「うん!」
「うん。……はは」
やっぱ雪葉は普通に笑ってるのが一番可愛いぜ!
「ご飯の後、一緒にイチゴ食べようね、お兄ちゃん」
「ああ!」
仲直り出来て、ほっと一安心だ。さて、お茶入れて戻るとするか