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第26話:秋の合宿

秋の合宿


「ただいま〜」


「ただいま!」


「…………おかえり」


水族館から帰ると、スポーツバックを持った秋姉がちょうど出掛ける所だった


「秋姉、合宿かい?」


「…………うん」


「頑張ってね、秋お姉ちゃん!」


「…………うん」


「3日間だっけ? ちょっと寂しいけど行ってらっしゃい!」


「え? ………う、うん」


「?」


秋姉は何故か困った顔をして、家を出て行った


「何か秋姉、困って無かったか?」


「うん。ちょっと変だったかも」


「う〜む」


我が姉ながら考えている事が読めない人だ


「微妙に気になるが、秋姉なら大丈夫だろう」


秋姉は一人で大抵の事は出来るし、口下手ではあるけれど、本当に困った時は誰かに頼る事が出来る人でもある


逆に夏紀姉ちゃんは一切、人に頼らない。家族としては一番心配させるタイプの人間だ


「ま、心配は置いといて、疲れたな。夕食まで休もうか」


「うん。今日はありがと、お兄ちゃん」


笑顔の雪葉に、担いできたぬいぐるみを渡し、俺は自分の部屋へと行く



「少し昼寝でもするかな」


そして俺はベットに寝転んで目を閉じた



…………………………



ピリリリ、ピリリリリ


「…………ん?」


ピリリリ、ピリリリリ


携帯が鳴っている。誰だろう


俺は携帯へ手を伸ばす


ピリ…………


「あ」


電話は切れてしまった


着信歴は公衆電話


「う〜む」


「ご飯ですよ〜」


母ちゃんの呼ぶ声だ


「は〜い」


飯だ、飯だ!!




「でね、でね、アシカさんがね!」


夕食は煮込みうどん


雪葉は今日行った水族館の事を、一生懸命話している


「へー楽しそうじゃん! てか、私も誘え〜」


「お前、朝から居なかったじゃん」


「部活だったけど、水族館行くなら休んだし」


「いや、部活優先しろよ」


ぶーぶと文句を言っている春菜を無視し、うどんを食べ終える


「ごちそうさま」


「から松〜」


……もはや突っ込むまい


「あ、お兄ちゃん」


椅子から立ち上がると、雪葉が俺を呼び止めた


「ん? どした?」


「後でお部屋に行っても……いい?」


雪葉は上目遣いで窺う様に尋ねる


「ああ。ゲームでもするか?」


「うん!」


よっぽど楽しかったのか、どうやら今日の雪葉は甘えっ子モードらしい



部屋に入りベットに転がってマンガを読む


マンガを読み終え、何気なく携帯を見ると、夕食を食べていた時間に着信があったらしい


着信歴は公衆電話


「…………」


……誰だ一体



コンコン


「はい、開いてるよ」


「……おじゃまします」


雪葉は寝巻姿で、マクラを抱えていた


「うん? マクラ?」


「うん……。駄目?」


「ふふ、雪葉は甘えっ子だな」


雪葉を手招きして、頭を撫でる


「いいぜ。雪葉は寝相良いしな」


「やった! お兄ちゃん大好き!!」


そう言って雪葉は俺のベットに自分が寝るスペースを作る


「ふ、まだまだ子供だな」


何か可愛い孫を見ている心境……。


いやいや! 妹だろう!?


「と、取りあえずゲームをやろうぜ!」


「うん!」



それから一時間、パズルゲームやら格闘ゲームで盛り上がっていると、雪葉が欠伸をし始めた


「そろそろ寝るか?」


「……もうちょっと」


ゴシゴシと目を擦る雪葉を軽く撫でる


「また明日も遊ぼう」


「…………ん」


眠そうにふらつく雪葉の体を支え、ベットに寝かせる


「おやすみ、雪葉」


「おやすみなさい……」


電気を消し、少し側に居てやると、直ぐに寝息を立てはじめた


「…………おやすみ」


さてと、アイスでも食って風呂に入るか!



携帯を持って静かに部屋を出る


もうみんな寝たのかリビングには誰もおらず、何と無く寂しくて携帯を開いてみと、着信歴


……公衆電話


時間は雪葉とゲームをやっていた頃だ


「…………」


ピリリ、ピリリリ


「っ!?」


携帯が鳴る


「………………」


俺は震える手で電話に出た


「………………」


「………………」


長い沈黙


「……も、もしもし?」


「…………あ……よかっ」


「ひ、ひぃぃい!?」


電話を切り、電源を落とす


「な、何だ今の!?」


聞き取りにくかったが、確かに女の声で“あの世“って言っていた!


「何だよあの世って!?」


恐怖新聞とかそういう類の物なのか!?


震える足を動かし、ソファーへと座る


呼吸を落ち着け、辺りを見回すと、見慣れた筈のリビングが、異様な雰囲気に包まれていて……


「っ!」


俺は慌てて部屋へと戻った


真っ暗な部屋。急に強くなって来た風


俺は雪葉の横に潜り込み、息を潜める


ガタン!!


「ひっ!? ……風か」


恐怖で思わず雪葉を強く抱きしめてしまった


「……ん」


雪葉もまた霊的な何かを感じているのか、俺の胸に顔を埋め、抱き着いて来る


「だ、大丈夫だ。兄ちゃんが守るからな」


「ん………に……」


大丈夫だ、明日になればただの間違い電話で笑い話になる


きっとそうだ。きっと……


「………………」


いつしか俺は深い眠りへとついた



………………


コン、コン


「……………?」


コン、コン


「っ!?」


コン、コン…………コン


「な、何?」


部屋のドアがノックされる音


「な、なにさ!?」


コン、コン………………………ガチャリ


「ひぃぃ!!」


布団を頭迄被り、呪文を捕らえる


「悪霊退散、悪霊退散、悪霊退散、悪霊退散ー!!」


「…………だ、大丈夫?」


「え?」


聞き慣れた声に布団から顔を出すと、僅かな月明かりに照らされた秋姉の姿


秋姉は心配そうな顔に、多くの汗を流している


「あ、秋姉?」


「…………………よ、良かった」


秋姉は起き上がった俺をギュッと抱きしめる


秋姉の胸は激しい鼓動を立てていて、その体は熱く、汗だくだと言うのに何故か甘い匂い


「ど、どしたの??」


「……………心配した」



それからまだ寝ている雪葉を起こさぬ様、ゆっくり部屋を出て、リビングへと行く


そこで話を聞くと、どうやら先程からの電話は秋姉だったらしい


秋姉は寂しげな俺を心配して電話した所、俺が悲鳴を上げた物だから、気が気でなかったとの事


「…………そろそろ学校に戻るね」


汗が引いた後、秋姉がぽつりと呟いた


「自転車で送って行くよ」


「…………大丈夫」


「送らせて」


「………………ん」



家を出ると少し肌寒い満月の夜


学校迄の距離を秋姉とドライブだ



「でも、あんなに何度も掛けて来なくて良いのに」


特に一度目の着信と、二度目の着信の間なんて10分と無いし


「…………私、二回しか掛けて無い」


「………………え?」






今日の精神的疲労


俺≧秋>>>>父>>>>>>>雪


続いてる

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