第142話:燕の訪問
そのうち削除
もしも春菜以外からパンツを借りたなら
・燕
「燕」
「なんだね?」
「パンツ貸してくれ」
「うむ。……え!?」
「頼む」
「な、え? そ、それは一体どう言う」
「頼む!」
「だ、だけど」
「頼む!!」
「う……む、向こうを向いていてくれ!」
貸してもらえる
・秋
「パンツ貸して秋姉!」
「………………」
「あ、秋姉?」
「男の子……だから仕方ないよね。でも、自制する事も大切だよ?」
優しく諭されて死にたくなる
・雪葉
「雪葉、お前のパンツを貸してくれ」
「お、お兄ちゃん?」
「パンツを貸してくれ!」
「う……うん……お、お兄ちゃんが、貸して欲しいのなら雪葉は……う、うう」
泣かれながら、貸してもらえて死にたくなる
・夏紀
「姉ちゃん! パンツを貸しぐへ!?」
殴られる
・花梨
「パンツを貸してくれ花梨!」
「なっ!? こ、この馬鹿! 馬鹿!! ど馬鹿ぁ!!」
止まない罵倒と共に、犬がやってくる
・風子
「すまん、お前のパンツ貸してくれ」
「……ふふ」
「ふ、風子?」
「理由は聞かないよ、お兄さん。少し驚いてしまったけど、お兄さんの頼みなら断れないね。用意してくるから待っててくれるかい?」
色々と察してもらえて借りられる
・美月
「パンツ貸してくれないか?」
「なんに使うの?」
「な、何に? い、いや泥棒をその……」
「良いよ~」
結構、簡単に貸して貰える
・千里
「パンツを貸して」
「使用前? 中? 後?」
「ま、前で」
「へたれ」
「何でやねん!」
うやむやにされて貸して貰えない
・リサ
「パンツ貸してくれ、リサ!」
「へ、変態!!」
拒絶後、即通報
・綾音
「パンツ貸して下さい」
「はい、良いですよ。じゃあ脱がして下さいね」
「え!?」
「前からいきます?」
「や、止めて! しゃがみ込んだ後、なまめかしく足を開かないで!」
勝てないので、借りられない
・母ちゃん
「母ちゃん、パンツ貸して」
「良いわよ~」
特に何もなく貸して貰える
・春菜(2回目)
「パンツ貸してくれ」
「おう! 持ってけ!」
きっぷが良すぎて、また泣きたくなる
「…………はぁ」
暗黒化した雪葉の長い説教がようやく終わり、部屋に戻った俺。そのままベッドに倒れ込む
やはり雪葉にも鬼の血が色濃く流れている。それは、もしかすると秋姉より……
「……まさかね」
首を振りながら、財布を手に取って中身を確認。五千円札が一枚だ
「よし」
イチゴ買って来るか。雪葉が怖い訳じゃないけどな!
自分をごまかしながら携帯を手に取り、そのまま外に出る。深い藍色の空はオレンジ色のカーテンに彩られ、見事な黄昏れ時となっていた
「さてと」
駅前のデパートだな。暗くなる前にパッパと行くべ
それから10分程歩き、駅前へ。帰宅時なのか、いつもより人通りが多かった。俺は人を避け、古びたデパートに向かう
「あ! 恭介クーン!」
「は? ぐえ!?」
避けた人の一人が突然横から飛び付いて来た! なんだ、襲撃か!?
「買い物? 私は病院帰り! お話したいけど、子供達が待ってるから帰るね。それじゃあね〜」
襲撃者は、いっぺんに喋った後去って行く。人混みにまみれてしまって、もはや誰だったかすら分からない。だが
「あの感触は……」
多分、香苗さんだな。ナイス巨乳と言わせてもらおう
しかし病院帰りか。幸い俺は割と丈夫だから良いけど、体の弱い人は大変だよな。今度暑中見舞いに青汁でも持って行くか
なんて考えつつ、デパートでイチゴを購入。もう時期じゃ無いが、今は温室があるからあんまり関係無いやね
「…………ん?」
デパートを出ると、信号待ちをしている数人の中に、見知った顔を発見する。今日は色々な人に会う日だな
「燕」
「む」
側に行って声を掛けてみると、燕は険しい顔を俺に向けた
「燕?」
「ああ、恭介。買い物かね?」
表情を和らげて、俺に微笑む燕。だがどうもピリピリしている様な……
「何かあったか?」
尋ねると、燕は少し驚いた顔をする。だが、直ぐに冷静の仮面を被り直した
「いや、大した事では無い」
「力貸すぞ」
「だ、だから大した事では無いと言っている」
「…………」
まったく。相変わらず頑固な奴だな
「どうした? 燕」
ジッと目を見て、ゆっくりと名前を呼ぶ
「……そんなに優しく名前を呼ばないでくれ。甘えたくなってしまうじゃないか」
「良いぜ、甘えてくれても。何があったんだ?」
「なにも……ない」
マジに頑固だな〜。仕方ない、ちょっと強く聞いてみるか
「燕!」
「は、はい!」
「俺じゃ話を聞く事も出来ないのか?」
「そんな事は……」
「なら聞かせてくれ」
「……うん」
燕が頷いた所で、場所をデパート内のベンチ前に変える
「いつも誰も座って無いよな、此処」
「…………」
「燕?」
「私事で人に話す様な事では無いのだが……。今日は会いたくない客が家に来ていてな。客が帰るまで暫く時間を潰していたのだ」
「なるほど」
思ったより簡単な理由だったが……よっぽど嫌な客なんだな
「此処までは歩いて来たのか?」
この駅は燕の家から結構遠い
「こちらの駅は馴染み深い。君によくゲーセンへ連れて行ってもらったからね」
ニヤリと笑いながら、燕は言う。少しはいつもの余裕が戻って来たみたいだ
「まだ時間潰さないと駄目なのか?」
「……恐らく夕食後、彼は私の母に舞踊を披露するだろう。だから、少なくとも22時迄は帰りたく無い」
「俺ん家に来いよ」
「なっ!? ひっ」
ひ?
「っく! ひっく!?」
「な、なんだ?」
「ひ、ひゃ! ひゃっくり! と、とまなら!」
「…………わ!!」
「っ!? ……ひっく」
「…………」
「…………ひっく」
「ご、ごめん」
ジト目で睨まれてしまった……
「と、とにかく家に行こうぜ。帰りは姉ちゃんに送らせるから」
「……ひっく」
何とも不満げそうだが、とりあえず頷いてくれたので、いざ出発だ!