第135話:花のパーティー
ピンポンとチャイムの音が響く日曜日の午前。ようやく来たかと、俺は腰を上げる
今日は花梨主催のパーティー日。雪葉は今から一時間程前に、迎えに来た風子達と先に行った
雪葉の奴、何かを企んでいる顔をしていたな……楽しみだ
ピンポーン、ピンポーン
「はいはい、今開けますよ」
腰をトントン叩きながら玄関を開けると、思った通りの人物が機嫌悪そうに立っていた
「開けるのが遅い!」
「そりゃ、すみません。じゃ行こうか」
靴を履き、玄関を出る。日差しは今日も強くて暑いが、風は心地良く、アスファルトの上に降り注ぐ木漏れ日が波間の様に揺れていた
「わざわざ迎えに来てくれてありがとな。俺、花梨の家の場所分からないからさ」
先にスタスタ歩いて行くリサに声を掛けると、リサは足を止めて振り返り、
「別に花梨の家なんて行きたくないけど、あなたを案内する為に仕方なく行くんだから。感謝してよね」
千里が言った通りのリアクションをした
「…………」
凄いな、あいつ。なんか続きも試してみたくなって来るぜ
「……じゃ、行くの止めるか?」
「え!? だ、駄目よ、そんなの! せっかく花梨が私も呼んでくれて……じゃなくって! あなたを連れて来てって頼まれたのに、連れて行けなかったら私が悪いみたいになるじゃないの!」
リサは慌てふためきながら、俺に詰め寄る。実に分かりやすい
「ふ〜ん」
「な、なによその嫌らしい目は! ロリコン!」
「……お前と千里と花梨にはマジで一時間、説教する必要がありそうだ」
もちろん正座で
「と、とにかく、引っ張ってでもあなたを連れて行くから!」
リサは俺が着ているシャツの裾を掴み、ぐいぐいと引っ張ってゆく。お陰でシャツは伸びるし、俺の腹も丸見えなのだが、嫌がらせなのだろうか
「あ、慌てるなって、引っ張らなくても着いて行くから」
「うるさいわね、もっと早く歩いてよ! 全く何を……き、キャー!? 変態〜!!」
それから僕はその辺を歩いていらした方々に囲まれ、気付いた時にはお巡りさんに拘束されていました。今日もお仕事ご苦労様です。日本はまだまだ安全だね!
そんでもって25分後
「紛らわしい事をしてしまって、すみませんでした」
「ご、ごめんなさい」
パトカーに乗せられ、25分。ようやく解放された俺達
俺が事情を説明している時に、混乱したリサが突然、実は私達兄弟なんです! とかほざきやがらないでくれましたら、こんなに拘束されなかっただろうし、電話番号やら住所を聞かれる羽目にはならなかっただろう
結局家に連絡され、母ちゃんが電話の応対をしたらしいのだが、その母ちゃんと話しをしていたお巡りさんは急にしどろもどろになり、不自然なほどに俺を褒め始めた。もはや国家権力をも怯えさせる力を持っていると言うのかあの母は……
「こ、こちらこそ申し訳ございませんでした。とんだ、はやとちりをしてしまって」
「あ、いえ、慣れてますから。お仕事ご苦労様です」
慣れたく無いけど。いつもの犬がいなかった事だけが救いだな
「それでは失礼します」
「はい! お母様には、くれぐれもよろしくお伝え下さい!!」
「え、ええ……じゃ行こうぜリサ」
「30分も遅くなっちゃった……」
リサは肩を落とし、しょんぼりと呟く。意外と責任感が強いのかね?
「ま、気にするな」
「し、してないわよ! 花梨なんか三日ぐらい待たせてやるんだから! いい気味よね!!」
「パーティー終わってるだろ……」
大変だな花梨も