第134話:秋のお迎え
「あ〜疲れた」
三日に渡って続いたテスト期間が、ようやく終わった金曜日の昼。今朝からクラスメート達の俺を見る目がおかしいが、きっと気のせいだろう
「帰り、飯でも食いに行くかS」
「え!? あ、いや、その……ご、ごめん! 俺まだそっちの世界には行きたくないんだ〜」
ダッシュで逃げ出すS。何だあいつ?
「じゃT」
「う……ゆ、ゆるせ、佐藤! 俺はお前を受け入れられない!!」
Tもまた、ダッシュで逃げ出した
「大丈夫なのか、あいつら?」
「佐藤ちゃん、あたし応援するからね」
呆れながら二人が出て行った方向を見ていると、いつになく真剣な眼差しをした戸田さんが俺に近寄り、俺の右手を両手でギュっと握りながら言った
「え? な、何、戸田さん」
「あ! あたしモブキャラから脱出したんだ〜。やった〜」
戸田さんはぴょんと跳ねて喜んでいる
「モブキャラ? それより何故にちゃん付け?」
「え? だって佐藤ちゃん、女の子でしょ? 大丈夫だよ、見た目や性別なんて問題じゃないんだから」
「な、何言ってるのか良く分からないんだけど?」
「雰囲気で分かるよ〜。この間から凄く女の子オーラ出してるもん」
「出すか!!」
事情聴取中・・・・・
「お、俺がそんな事を」
戸田さんから聞いた話は衝撃的だった。昨日、一昨日と俺はオカマ言葉を喋り、男どもにシナをつくりながら色目を使っていたらしい
高熱と薬で朦朧としていたとは言え、にわかには信じられない話だが、クラスメート達の俺を見る目がアレなので、おそらく真実なのだろう
「佐藤ちゃん。あたし佐藤ちゃんの味方だから。頑張ろうね?」
「アホか!!」
それから戸田さんや、まだ教室に残っていたクラスメート達に釈明していると、廊下が騒がしくなって来た。それと同じくクラスメート達の目が輝き始める
「な、なんだ?」
「きっと秋さんだよ〜。一昨日から放課後、秋さん、佐藤ちゃんの様子を見に来てたんだよ」
覚えてないのかと、不思議そうに戸田さんは言う
「そ、そうなの?」
全然記憶に無い……って言うかマジで二日間の記憶が無いんですけど。大丈夫なのか、俺
「秋さま〜」
「キャー秋様がこっち向いた〜」
「秋様、これ受け取って下さい!」
声援は激しくなり、人の数も増えて来たようだ。そう、秋姉はもはや国民的アイドルと言っても良い人気者なのである
「ん……ありがとう。でも、余り騒いだりしたら駄目だよ?」
はーい!
「はーい!」
「佐藤ちゃんは本当にシスコンさんだね〜」
「その暖かく見守ってあげる的な眼差しは止めてくれない? ……さて、と。それじゃ俺も秋姉を出迎えるとするか。また来週な、戸田さん」
「うん! またね、佐藤ちゃん」
「ちゃんは止めて……」
しかし、すっかりシスコン扱いになってしまったな。……まぁいい
「秋姉」
「あ……恭介。調子はどう?」
「大丈夫だよ、秋姉」
「…………良かった」
こうして秋姉が微笑んでくれるだけでなんだか力が沸いて来るし、記憶なんかどうでも良くなる(良くは無い)。これがシスコンのお陰だって言うのなら、どんと来いだ
「ありがとう秋姉」
いつも本当に
「……ん。じゃあ、帰ろう」
「うん。帰ろ、秋姉」
秋姉のファン達の目が超怖いけどな
今日のモブキャラ
T≧S>>>>>>>>>>>>>>>>>>戸
次男