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俺の事件 4

山荘に来た俺達。鍋食ってたら意識失って、起きたら事件が起きていた!


桜庭山荘事件 Final



「秋姉、昨日起こった事を教えてほしい」


山荘の二階、三つある内の一部屋で俺は秋姉に話を聞く


「…………昨日は」


昨日、明かりを消した真っ暗な部屋で俺達は闇鍋を食ったらしい。だが箸で掴んだ物を一口食べた瞬間、俺と金田さんと夏紀姉ちゃんはぶっ倒れ、鍋パーティーは中止になったとの事だ


「ちなみに俺達は何を食べてたのか分かる?」


「ん……その時恭介は熊の手、姉さんは蛇の頭。金田さんは…………」


「……か、金田さんは?」


「……食べられるゴキ〇リをくわえてた」


「え!? な、なんでそんな物が鍋に……」


「……多分佐久さんが入れたのだと思う。凄い珍味があるからって言ってたから」


「そ、そう。それで倒れたのか」


秋姉の料理が原因な訳じゃなかったんだ……。疑ってごめん


「それからみんなは直ぐ部屋に?」


「……春菜と雪葉は10時前に部屋へ。私は2時ぐらいまで食堂」


「2時まで?」


「うん……三人とも、うなされていたから」


看病をしてくれてのか……ええぃ、なんて羨ましい奴なんだ俺! 記憶が無いのが恨めしい


「……佐久さんもずっと一緒に居てくれた。私、先に寝かせてもらったのだけれど、佐久さんは朝まで診てくれていたみたい」


「そう……」


となると、佐久さんは容疑者から外れる? そうだな、佐久さんは犯人なんかじゃない


メイドが普段どんな仕事をしているのか分からないけど、トイレットペーパーの補充や芯の片付けぐらい気付けばやるだろう。それが出来なかったのは、一晩中俺達の看病をしていてトイレに行ってないからだ


「なら容疑者は絞られるな」


「…………」


桜庭夫妻。はっきり言えば


「あの人……か」


「…………余り深く追及しない方が良いと思う」


「そうか、そう言う事だったのか!」


「恭介?」


「謎は全て解けた」


「ん……おめでとう、恭介。でも、みんなには内緒に」


「行ってくるよ秋姉! この惨劇を終わらせてくる!!」


「あ……ま、まって」


俺は部屋を飛び出し、階段を駆け降りた。そう、全てを終わらす為に……


そんでもって5分後〜


「どうしたんだね、私達を一カ所に集めて」


午前七時リビング。集まったのは桜庭夫婦と佐久さん、金田さん。そして心配そうに俺を見つめる秋姉と、図々しく朝飯を食べている春菜だ。俺は皆を一瞥し、自分の推理を披露するべく口を開く


「今回の犯人が分かりました」


「犯人? ああ、トイレの事だね。確か外部犯だと……」


「いえ、犯人は内部犯です。そして……この中に居ます!」


「なんだって!」


「き、恭介さん」


「犯人……でございますか?」


「あ……だ、だめ」


「このシャケうめー」


「ワッハハ」


俺の言葉に皆が動揺を見せた。今だ!


「この事件の真犯人、鮮血の魔術師はあんただよ桜庭 健太郎!!」


「…………ふ、ふふ。何を言い出すかと思ったら下らない。証拠はあるのかね証拠は!」


ビシッと犯人を告げた俺に、桜庭さんは真っ向から否定した。長引けば長引く程、悪化すると言うのに……


「……俺がトイレを見た時、使用済みトイレットペーパーの一部が赤かった。始めそれが何なのか分からなかったけど、やっと分かったよ。あれは血だったんだ」


「血ですって!? け、怪我をしているの、あなた?」


桜庭夫人は真剣に夫を心配している。この人の為にも早く終わらせよう


「……怪我などしていないよ敦子。どうやら彼はお疲れのようだ、朝ご飯でも食べて――」


「貴方は切れ痔だ。それもかなり進行している」


「なっ!?」


「そ、そんな筈は……恭介さん。主人は痔など患って下りません!」


「奥さん。この家は痔持ちに優しい作りになっているのですよ」


俺はソファーへ行き、そこにある座布団を手に持つ


「昨日、食堂へ行った時におかしいと思ったんです、何故椅子が座りにくいドーナツ型の円座だったのだろうと。そしてソファーに敷かれたこの円座型の座布団です。見た所、皆さん腰が悪く無さそうなのに、何故全ての椅子を円座にしているのだろうと」


「そ、それは……それは私がドーナツ好きだからだ! そんなあやふやな疑問で私を犯人扱いしないで欲しい!」


「……では決定的な証拠を出しましょう」


「な、なに!?」


「正確な時間は分かりませんが、今朝トイレに行った貴方はいつもより多く出血した。そう、流れるかどうか試しに少し水を流してみるのも忘れぐらい、大量の出血を」


「ぐ……」


「慌てた貴方はトイレを飛び出し、薬を取りに行ったんだ」


「ふ、ふん、まるで見ていた様な事を!」


「……まだ気付いて無いのですか?」


「なに!?」


「さっきから腰が引けてるんだよあんた! 座薬を入れてるから落ち着かないんだろ!?」


俺の指摘により、皆の視線が一斉に桜庭さんへ向く。そして桜庭さんは、脂汗を流しながら最後の抵抗をした


「し、証拠……証拠だ、証拠はあるのかね!」


「……貴方が下着を脱いで四つん這いになればそれで終わりです。もし座薬が入って無かったら土下座でもなんでもしましょう」


「う、ぐぅ……」


「あ、あなた。彼の言う通りにして濡れ衣だと証明しましょう。佐久さんが確認してくれるわ」


「パスでございます」


「そ、そう? なら金田さんが……」


「ワッハハ。そりゃ勘弁ですわい」


「じ、じゃあ私が」


「……もういい」


「え? あ、あなた?」


「もういいんだ敦子、私の負けだ」


桜庭さんはまるで憑き物が落ちたかのように優しく微笑み、そっとソファーに座った


「……ふふふ。全く私はとんでも無い客を招いてしまったようだね。まさか名探偵が紛れていたとは」


「桜庭さん……」


「その通り。私がトイレを詰まらせた犯人、鮮血の魔術師だ」


潔い。その潔さが何故もっと早く出せなかったのか


「そ、そんな……き、きっと何かの間違いよ! 間違いと言って、恭介さん!!」


「もう止すんだ、敦子! これ以上私に恥をかかせないでくれ……。さぁ恭介君。早くクラ〇アンにでも連絡してくれたまえ」


「……貴方が連絡しなくてはならない所は一つですよ」


「なんだって?」


「肛門科。まだ間に合います」


痔は恥ずかしい事じゃない。それも一つの人生なんだ


「…………ふ。私が君を欺ける訳が無かったのだね。男として、人間としての器が違う」


「奥さんと尻を大切に」


「……ありがとう。若き名探偵よ」


「米、おかわり〜」


「ワッハハ」



エピローグ


山荘を出ると、空は雲一つ無い青空だった。俺達は濡れた道を歩き、駐車場へと向かう


「結局一泊か。学校に欠席の連絡しないとな」 


「…………昨日、母さんに連絡した時にお願いしておいたから大丈夫」


「そっか、ありがとう」


流石秋姉。俺なんかよりよっぽど気が回るぜ


「…………恭介」


「ん? なに、秋姉」


感心していると、秋姉は優しい眼差しで俺を見つめた。なんだろう?


「……凄いね、恭介は」


「え?」


「ん……私、桜庭さんが隠したがってると思って恭介を止めようとした。でも、それじゃ桜庭さんの病気は治らないよね」


「……そっか」


俺より先に真相に気付いていたのかって、そりゃそうだわな


「ちょっとカッコつけたかっただけだよ」


実際は全くカッコ良く無かったと言う噂も……


「……うん。かっこ良かったよ、恭介」


「秋姉……」


ありがとう、その言葉が俺の金メダル


「はぁ……なんか意味が分からない一日だったわね、記憶すら無いわ」


肩をトントン叩きながら車の少し手前で姉ちゃんはキーをポケットから取り出した。これからまた運転しないといけないんだから大変だわな


「ここの飯、超美味かったな! 少ね〜けど」


「お前ね……」


食ってばかりだなコイツ


「ねえ、秋お姉ちゃん。結局トイレで何があったの?」


「…………どんづまり」


「ほら、乗り込め〜」


「お〜」


先に車へ乗った姉ちゃんに続き、俺の姉妹達は車へと乗り込んで行く


「恭介様」


最後に俺も乗り込もうとした時、後ろから声を掛けられた


「あ、佐久さん。お世話になりました」


声の主は佐久さんで、走って来たのだろうか僅かに肩が上下している


「いいえ、こちらこそ。当家の闇を晴らして頂き本当にありがとうございます」


「たいしたことはしてませんよ」


「いいえ。私は借りを返すメイドでございます。このお礼はいずれ必ず致します」


「は、はぁ」


もう会うことも無さそうだけど……ま、偶然ってのもあるからな


「それじゃ佐久さん。またいずれ」


「はい。さようなら佐藤様、どうかお気をつけて」


「ええ、さようなら」


さようなら、桜庭山荘


ドアを閉めた振動で、車の側で咲いていた露草の雫がこぼれ落ちた。もう雨の夜は終わったのだ


頭を深く下げて俺達を見送る佐久さんに最後の挨拶をし、俺は後部席のシートに深く腰を沈めて目を閉じ発進を待った




今日の推理力



秋>佐>>>俺>>>>>>雪>>>>春>>夏


ウツボ


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