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俺の事件 2

突然の豪雨で雨宿りを余儀なくされ、なんとか山荘へと辿り着いた俺達。そこで出会った、謎のメイド佐久。佐久は言う、タオルで体を拭けと。言われた通り体を拭いた俺達を待っていたものとは


桜庭山荘事件


File2


「いやはや、大変だったね君達」


タオルで体を拭き、洗面所でドライヤーを借りた後、佐久さんに案内された場所はリビングの様な広い部屋だった


そこで俺達を待っていたのは三人の男女。その中でソファーに座りワインを飲んで居た初老の男が立ち上がり、両手を大袈裟に開きながら俺達を迎え入れる


「私はこの山荘の持ち主で桜庭 太郎。しがない美術家さ」


「私は太郎の妻で桜庭 敦子。怪しい女よ」


「ワシは金田 餠夫。金が有りすぎる美術商だわい。ワッハハ」


「私は佐久。ただの卑しいメイドでございます」


聞いてもいないのに自己紹介を始める四人。昔の土サス的な展開だが、二十代以下には分からないだろう


それはともかくとして、お世話になっているのはこちらだ。客用らしい高そうなソファーを奨められた俺達は、そこに座って簡単な自己紹介をする


「なるほど。ではこの素晴らしい出会いを記念して闇鍋パーティーを開こうでは無いか!」


「なんでやねん!?」


あ、ヤベ、思わず突っ込んじゃった


「まぁ、それは良いアイデアだわ。ちょうど闇鍋が食べたかったのよ」


「ワッハハ。闇鍋、闇鍋ごっちゃんです」


「分かりました。直ぐに闇鍋の準備に取り掛かります」


強引かつ不可思議な急展開。だが昔の土サスはもっとカオスだったのだ。多分


「何、こい……コホン。この方達」


「鍋! やったー!!」


「ん〜。秋お姉ちゃん、闇鍋ってなぁに?」


「…………やみ」


俺の家族の反応は、まちまち。てゆーか、食う事は決定?


「では下拵えをして参りますので、今暫くお待ち下さいませ」


「あ……佐久さん」


部屋を出て行こうとする佐久さんを、秋姉が止めた


「はい。なんでしょう、秋様」


「ん…………私、手伝います」


「げ!?」

「げげ!?」


俺と夏紀姉ちゃんのリアクションが重なる


「ありがとうございます秋様。ですが秋様はお客様でございます。どうかおくつろぎ下さい」


た、助かった……


「まぁ待ちなさい佐久。せっかくの申し入れを断るのも不粋。此処は一つ言葉に甘えてみてはどうかね?」


余計な事を!


「……はい、旦那様。では秋様、宜しくお願いします」


「…………こちらこそ」


二人は頷き合い、部屋を出て行った


「……大変な事になるわよ」


夏紀姉ちゃんがボソリと呟く


「だ、大丈夫だよ、佐久さん居るし」


きっと……多分……だったらいいな……


「さぁて鍋が出来る迄の間、酒でも飲もうではありませんか。私は大人数で飲む酒に目がなくてねぇ」


「まぁ、あなたったら。お子さんもいらっしゃるのですよ」


「全く旦那さんは酒が好きな方だ。ワッハハ」


「…………」


三人で勝手に盛り上がっているが、俺達は完全においてきぼりをくらってる。いっそこのまま放置してほしい


「夏紀君」


「あ、アタシ!? な、なんでしょう?」


「見た所、相当飲めるくちだね? どうだろう、私の秘蔵の酒でも一杯やらんかね」


「秘蔵!?」


姉ちゃんの目が輝く!


「あ、いや……お誘いありがとうございます、桜庭さん。ですがアタシには運転がありますので」


おお、きっぱりと断った


「今日は、もう運転出来る天候には戻らないだろう。部屋は沢山ある、泊まっていきたまえ」


「そこまで甘える訳にはいきません。それに禁酒中ですから」


「そうか……百年に一度の酒、ロマネブッチャー1921。中々開ける機会は訪れないものだね」


「う!? ろ、ロマネブッチャー1921ですって……ぐぅ!」


姉ちゃんは強く歯を食いしばり、悲痛な顔で言葉を続ける


「せ、せっかくのお誘いですのに……も、もも、ももも……っ! 申し訳ございません!!」


泣いている。今、姉ちゃんの心が泣いている……


「いや、こちらこそ強引に誘ってしまい、すまなかったね。では飲まずに引き続き会話を楽しむとしよう」


「はぁ」


別に楽しく無かったけどな


「そうだな、あれは私がまだ二十の頃……」


それから30分。別に聞きたくない思い出話を延々と聞かされ、ようやく終わった頃に佐久さんが戻って来た


「お待たせしました、皆様。食事の支度が整いましたので、食堂までご案内致します」


「よっしゃ〜鍋! つまんねー話聞いて超腹ぺこだぜ!」


春菜は勢い良く立ち上がる。とんでもなく失礼だが、言われた本人はニコニコしているから良しとしておこう


「それでは行こうか。闇鍋の舞台へ」


ゴーン。ゴーン


重い音を鳴らしながら壁時計が時間を知らせた


午後七時。この時間こそが全ての始まりだったのだと、俺達は後で知る事となる

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