第24話:鳥の誤解
学校帰り、今日発売のチャンプを立ち読みしようと、俺はコンビニへ入った
雑誌コーナーには、俺と同じような制服姿の野郎どもが数人いて、邪魔くさい
立ち読み何かしないで、きちんと買えってんだ!
「おっと、ごめん」
身勝手な若者に腹を立てながらチャンプを取ろうとした時、横の人にぶつかってしまった
「あ、いえ。大丈夫です」
「すまないな……あ、直也君か」
「あ! 春菜さんのお兄さん!? こ、こんちわーっす!!」
直也君は手を後ろで組み、腹から声を出す
「あ、ああ。こんにちは。……取り合えず出よう」
突き刺さる視線に堪えられなくなり、俺は直也君を連れてコンビニを出た
「す、すみません、つい」
「ああ、気にするなよ。昨日は春菜の誕生日、来なかったんだな?」
「……はい。実はプレゼントも渡せてなくて」
「ふむ……そうだな」
春菜が嫌がる事はしたくないが、直也君が少し可哀相でもある。どうしたものか
「…………謝れ」
「すみませんでした!!」
「い、いや俺じゃなくて春菜に学校で謝れ。あいつはああいう性格だから、きちんと謝れば根に持たない」
「は、はい」
「直也君に悪気があった訳じゃないってのは分かってるけど、あいつ言い訳とか弁解は聞かないんだよ。一度謝ってしまった方がいいと思う」
「……分かりました、謝ります。実は俺も謝りたかったのですが、余計怒らせるんじゃないかと怖くて」
「……まぁ確かに怒らせると怖いかもな」
多分、俺より喧嘩強いし
「ま、とにかくそう言う事で」
「はい! ご指導、ご鞭撻の程、ありがとうございました!!」
「うむ、よかよか」
それから俺達は、中学校や高校の事を話す
「そういえば春菜さん、テニス苦手なんですよ」
「ふ〜ん春菜がねぇ」
あいつは運動神経しか神経が無いんじゃないかってぐらい、どんなスポーツでもこなす
「どうも自分で球を上げて打つのが苦手みたいです」
「そうか、ありがとう」
「はい?」
今度、春菜とテニスをしよう。もしかして始めてスポーツであのモンスターに勝てるかもしれん
「ククク」
「?」
一人含み笑いしていると、後ろから女の子の声がした
「直也兄さ〜ん」
「うん? ああ、宮ちゃん」
直也君は振り返り、女の子の声に応える
妹かな?
俺も挨拶しようと振り返る
「あっ! あ、あ……」
振り返った俺の顔を見て、凍り付いた女の子は、雪葉の友達の鳥里さんだった
「どうしたの? 宮ちゃん」
直也君はしゃがみ、鳥里さんと同じ高さの視点にして尋ねる
「そ、その人……」
「うん? ああ、俺の先輩だよ。色々な事を教わっているんだ」
「……………」
鳥里さんは、怯えた目で俺を見上げる
此処は一つ、誤解を解こう
「鳥里さん」
「は、はい……」
俺は顔を両手で隠す
「?」
「ばぁ!!」
俺の必殺! 梅干し食べたタコ入道!!
この顔で俺は、小さかった頃の春菜や雪葉を笑わせてやったものだ
「ぶっ!? あは、あはははは! す、すみませんお兄さん、そ、その顔っあははは!!」
「ふ、また一人笑わせてしまっ……たか?」
「………………」
鳥里さんは固まってしまっている
「あ、あの〜鳥里さん?」
「………………ひっく」
「え?」
「グス、ひっ、えっぐ」
「ええ!?」
泣き出してしまった!
「な、ど、あ? え、な、直也!!」
「は、はい!!」
「どうしたらいい!?」
「えぇ!? え、ええと、宮ちゃんは駅前のケーキ屋に売っているシュークリームが好きです!!」
「よし、でかした! 一階級特進だ!!」
「こ、光栄です!!」
後の事は任せ、俺は駅前に向かい疾走した
「ただいま!」
「早っ!? さ、さすが春菜のお兄さん……すげぇ」
直也君はゴクリと唾を飲む
「はい、シュークリーム」
まだ少しグズッている鳥里さんに、シュークリームが入った箱を渡す
「!?」
鳥里さんはビクッとし、直也君の後ろに隠れてしまった
「宮ちゃん?」
直也君は不思議そうに俺と鳥里さんを見比べる
「……参ったな」
こんな時、雪葉が居てくれたら……
そんな時、思いが通じたのか奇跡が!
「あら、宮じゃない。何してるの?」
鳥里さんに声を掛ける買物袋を持った少女。彼女は!
「はぁ……花梨か」
花梨じゃなぁ……
「あ、あんたは! って、その溜息は何よ!!」
「いや、ちょっと期待が外れて……」
「わ、私だって会いたく無かった!」
「いや、会いたく無い訳じゃないんだ。俺、花梨の事気に入ってるし」
「ひうっ!? ごほ、ごほ……な、何を」
「芸人みたいで面白い」
「〜〜〜〜っ!」
花梨は俺に近付き、ローキックをしてきた
「いて、いて、いて、って本当に痛いよ!!」
三回とも正確に同じ場所を蹴りやがった
「ふん!」
花梨は腕を組んで、そっぽを向いてしまった
「か、花梨ちゃん……」
今だ直也君の後ろに隠れている鳥里さんが、か細い声で花梨を呼ぶ
「え、何? うん?」
呼ばれて横へ来た花梨へ、鳥里さんは耳打ちをする
「………で………な……」
「え? あいつが? 別に怖くないわよ?」
「か、花梨ちゃん、こ、声が!」
「大丈夫よ。もしあいつが変な事をしてきても守ってあげるから」
「で、でも……」
「ちょっとあんた! こっちに来なさい!!」
「は、はい」
俺は二人に近寄る
「よく分からないけど、あんたが悪いんでしょ? 宮に謝りなさいよ」
「は、はい……鳥里さん、ごめんなさい」
「あ………う……」
「宮、こいつの事、許してあげられる?」
「な、何かをされた訳じゃない……から」
「そう。ま、こんな奴嫌いなのは仕方ないけど、多分そんなに悪い奴じゃないから」
花梨は俺の足をポンポンと叩く。なんか散々だ……
「宮ちゃん。先輩がいい人だってのは俺が保障するよだから……ね」
「直兄さん……はい。あ、あの今までごめんなさい、雪ちゃんのお兄さん」
鳥里さんは頭を下げる
「あ、ああ。こっちこそごめんね。と、そうだ、みんなでシュークリーム食べようか」
「わぁシュークリーム! あっ……ふ、ふん子供の食べ物ね」
「六個あるから花梨の鳥里さんには2個だ」
俺はみんなに配る
「春菜さんのお兄さん、ゴチになります!!」
「し、仕方ないわね。食べてあげる」
「あ、ありがとうございます」
それから俺達は近くの公園へ行き、ベンチに座る
そして食べたシュークリームは、確かに美味かった
「……ありがとな花梨」
「あ、頭なでるな!!」
昨日の好感度(鳥)
直>>花>>>>>>>>>>>>>>俺≧虫
今日の好感度(鳥)
直>>花>>>>>>>>>>>>>俺>>虫
つづくか!?