表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/518

春の誕生日 2

「お誕生日、おめでとう!」


午後5時。春菜の誕生日会が始まった


メンバーは夏紀姉ちゃんを除く家族全員(父、忘却)と春菜の友達5人だ


この5人は、どうやら特に仲が良い友達を呼んだらしく、みんな気兼ね無しにお祝いしている


ただ……


男一人はきつい


「春菜、直也君は?」


「え? 呼んで無いよ。あれを呼ぶわけ無いじゃん」


遂にあれ呼ばわりか……


「この人が春菜のお兄ちゃんか〜。へ〜」


茶髪の女の子が、俺を覗き込む


「何だよ、人の兄貴がそんなに珍しいのか?」


「べっつに〜」


膨れっ面の春菜に、茶髪は含み笑いでごまかした


「春菜、春菜! これプレゼント!!」


黒髪の女の子は……って髪で判断するのも酷いな。春菜、名前言わないかな……


「お、サンキュー絵里!」


絵里さんか、よし覚えたぜ


「私、真理……」


このアホ!



それからみんな次々とプレゼントを渡していき、次は雪葉の番となる


さて、雪葉のプレゼントは何だろうか


「おめでとう、春お姉ちゃん!」


「ユキ〜ありがと」


「はい、プレゼントだよ」


雪葉は、絵を渡す


それは春菜や俺達が朝食を食べている絵だ


絵は拙いながらも細部までキッチリと書かれていて、一目で時間と手間が掛かっているのが分かる


「ありがとう雪! ねーちゃん、すっげー嬉しいぞ!」


春菜は雪葉をギュッと抱きしめた


「お、お姉ちゃん。まだだよ、もう一つあるの」


「え? でも私、めっちゃ満足してるぜ?」


「ちょっと待っててね」


雪葉はトテトテと、リビングを出て行く


「……何だろ?」


俺達は雪葉が戻って来るのを待った


「お待たせ!」


戻って来た雪葉は、ダンボールに色を塗って作った黒いシルクハットの帽子と、ステッキを持って現れた


「春お姉ちゃんの誕生日を祝って、手品します!」


「お、頑張れ、雪葉!」


「雪葉ちゃん、頑張れ〜」


「良いぞ、雪!!」


みんなの歓声が沸く中、雪葉はちょっとテレた顔をして、ステッキをクルッと回した


すると、ステッキの先から花が出てきて、その花を春菜に渡す


「やるなぁ」


感心していると、母ちゃんが後ろに来た


「あの子、練習してたからね〜」


「すげー妹だよ」


雪葉は次々と手品を披露していくが、段々と本格的になっていく


始めは温かい目で見ていた俺達は、次第に真剣な目となっていった


「はい、カナさんがサインを書いてくれた、スペードの5はこのレモンの中に入っています! 切って下さい」


春菜の友達がレモンを切ると、その中にはサイン入りスペードの5が!


「え〜!? なんで〜?」


驚き戸惑う俺達


「か、母ちゃん、雪葉どれぐらい練習を……」


「去年の年末にマジックの特集を見てからかしら〜。一日に1時間は練習してたわよ〜」


……本当にスゲー妹だ



「これで終わりです。ありがとうございました!」


雪葉のお辞儀で手品は終わり、リビング内は拍手の渦に包まれる


「ほんとありがとな、雪。すげー楽しかった!!」


「お誕生日本当におめでとう、春お姉ちゃん!」


こうして誕生日会のテンションはマックスになったのだが、最後は俺か……


何かとっても渡しずらいんですけど


「は、春菜〜」


ワイワイ騒ぐみんなの視線をコソコソと避け、小声で春菜を呼ぶ


「ん? お、兄貴。どうした?」


「お前にプレゼントだ」


「え!? 兄貴が私に? 珍しいなぁ」


春菜はわざわざデカイ声を出して皆に知らせやがった


「去年もあげただろ!」


「え? ん〜〜? あ! もしかして、あの相撲まんじゅうの事か!」


「あ、ああ」


「あれはビックリしたね。相撲取りの顔がめっちゃリアルなんだもんな。嫌がらせかと思ってたよ」


あははと笑う春菜


一年間、ずっと嫌がらせだと思われていたのか……


「と、とにかくホレ」


春菜に紙袋を渡して後ろを向く


「なんだ、なんだ〜」


ガサガサと袋を開ける音がする


……ふ、それを履いて部活頑張れよ春菜


「お〜先週私も買った靴じゃん。これいい靴なんだよな〜ありがと」


素直に喜ぶ春菜。凍り付く周り。引き攣る俺の顔


「高かったろ? 五千円もするもんな〜」


「ええ!?」


雪葉が驚きの声を上げた


「ありがとな、兄貴! ……兄貴?」


「よ、喜んで貰えて兄ちゃん、兄ちゃん嬉しいよ!」


これは悲しくて出た涙じゃない。嬉しくて出た涙さ


俺は肩を落とし、元居た場所へと戻った


「ど、どうした、兄貴?」


「ち、ちょっと、春菜!」


茶髪の子が、春菜を引っ張って耳打ちをする


まぁ、つまらない物をプレゼントした僕には関係無い事でしょうけど


「え!? 何でそんな事しないといけないんだよ!」


「良いじゃない減るもんじゃないんだし」


「い、嫌だよ、みんないるのに……」


「大丈夫、パーティーの余興よ! 春菜だってお兄さんに感謝してるんでしょ?」


「……ちぇ、意味分かんねーよ」


春菜は渋々と言った顔で俺に近寄る。僕には関係無い事ですがね


「……ありがとな、兄貴」


春菜はボソッと呟き、俺の頬にキスをした


「なっ!?」


「いいぞ〜春菜!」


「きゃ〜!!」


「あら〜」


雪葉の時と同じぐらい、場は盛り上がる


「あ〜うるせー! もう自棄だ、食うぞ〜」


春菜はリビングに特攻し、出前の寿司や母ちゃんが作った料理を食いまくる


「…………ふ、まだまだ子供か」


「………………嬉しそう」


「うわっ!? あ、秋姉、いたんだ……べ、別に嬉しく無いっすよ?」


「? 春菜嬉しそう」


「え? あ、ああ……そうだな」


「こら〜そのいくらは私のだぁ!」


おめでとう、春菜




今日の存在感


春>>雪>>>友≧母>俺>>>>>>秋>>父


つづけさま

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ