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夏の海 3

「ま、今日は許してあげるわ。アンタのシスコンは病気だしね」


「病気扱いしないで!」


そう言われると本格的にヤバそうじゃないか


「俺はただ姉リスペクトなだけであって、シスコンとかそんなんじゃ」


「ただいま、おに〜ちゃん」


必死に無実を訴えていると、雪葉が小走りでやって来てエヘーっと俺に寄り添った


「あ、ああ、おかえり。ご苦労様」


「うん!」


「う……」


なんて素直な瞳だ。それにくらべて姉の水着姿で喜んで騒いでいる俺って一体……


「……ただいま」


「おかえり秋姉!」


雪葉に続いて戻って来た秋姉。つか、やっぱビキニは最高ですわ!!


「……減点3ね」


夏紀姉ちゃんがボソッと何かを呟いたが、敢えて気にしない事にしよう


「ん、ただいま……。良い天気だね」


荷物を車内に置き、秋姉は眩しそうに手をかざして空を見上げた


なんて絵になる姿だ。もしこれが自衛隊の募集ポスターだったら、俺は入隊せざるおえない


「早く海いこーぜ」


最後に来た春菜が焦れた声を出す。秋姉はコクンと頷き、買って来た大量の水や氷をテキパキとクーラーボックスに詰め込んだ


「……うん」


頷きながら秋姉はクーラーボックスを肩に担ぐ


「俺が持つよ、秋姉」


「……大丈夫」


ニコっと微笑む秋姉。この微笑みだけで俺は、30キロの米俵を背負って山を登れる


「良いから恭介に持たせなさい。そのくらいしか役に立たないんだし」


あんたにだけは言われたくねーよ。なんて言えない俺に愛の手を


「でも……」


「大丈夫、大丈夫。俺に任せて!」


「……ありがとう」


秋姉は少しでも動けば触れてしまいそうなぐらい俺の側へ寄り、ゆっくりと自分の肩から俺の右肩へクーラーボックスのベルトをかける


「……手を離すね」


「あいよ! うっ」


秋姉が手を離した瞬間、ズシっとベルトが肩に強く食い込んだ


「……大丈夫?」


「へ、へーき、へーき。軽い、軽い」


重っ! めっちゃ重っ!


「…………さすが男の子だね。もう私じゃ敵わない」


嬉しそうに微笑んでくれているけど、多分余裕で勝てると思います……


「じゃ、荷物運び頼んだわよ奴隷。アキ、春菜、雪。姉ちゃんに付いて来なさい!」


「誰が奴隷だ」


なんだか分からんが、姉ちゃんは急にテンションを上げ、みんなを引率し始めた。もしかして、重くてスムーズに歩けそうにない俺の顔を立ててくれたのだろうか?


「俺はゆっくり行くからみんなは先に行ってて。春菜、雪葉から離れるんじゃないぞ」


「分かった! 私は雪の姉貴だからな!」


春菜は私が保護者だと言わんばかりに雪葉の手を繋ぎ、夏紀姉ちゃんの後を追ってゆく。どちらかと言えば雪葉の方が保護者なのだが、まぁ良い


「秋姉も行って」


「……うん」


秋姉は若干心配そうな顔をしたが、先に行ってくれた


「………………さてと」


四人がちょい先の階段を下りたのを見計らって俺もヨタヨタと歩きだす。20キロ以上は楽にありそうだな、これ


それから5分。ようやく階段を下りた時には、みんなの姿は無かった。たいした距離じゃないのに随分時間を掛けてしまったな


「えっと……」


まだ時期じゃないのか微妙に客が少ない浜辺を歩き、視界が開けた所で見渡すと、30メートルぐらい先に、どっかで借りて来たのかビーチパラソルを担いだ春菜が居た。他の三人は見当たらない


「春菜〜」


早歩き、とは言ってもやはりヨタヨタしながら春菜の所へと急いで向かう


「ん? お、兄貴。どうした?」


「みんなは?」


「あっちの海の家。夏姉がナンパしてきた男達に土下座させてる」


「ナンパから土下座になる過程が全く分からないのだが……しかしもうナンパされたのか」


前にも言ったかもだが、うちの家族は水着になると非常に目立つ。ほっとくとナンパされまくりな一日に成り兼ねない


しかも今回はビキニ秋姉と言う、神ですらひざまづかせそうな最終兵器までいらっしゃる。その最終兵器を前にしては男など餓えた狼のようなもの


「俺がみんなを守るしか無いか……。なるべく俺から離れるんじゃないぞ春菜って春菜!?」


さっきまで春菜が居た場所に、ビーチパラソルだけがぶっ刺さっている。ちょっと目を離した隙に消えるとは、忍者みたいな奴だ


「たく……あ、いた」


この暑い中、春菜はダッシュで海の家に向かっていた


「しかも早いし……」


あれじゃ、誰も声掛けてこないわな


「ようようよう」


なんて油断したら後ろから俺を呼ぶ声が! さっそく絡んで来たか!!


「あ、あれはただのオカマです! 春夫って言うケチな野郎なので、ナンパ、勧誘、その他もろもろお断りです!!」


振り向きもせず、有無を言わさぬ強い否定。これで引かなきゃ拳を交える事になるだろう!


「兄さん、いいケツしてますね〜」


さわさわ


「きゃ!?」


やだ。この人、アタシ狙い? って何故俺のケツを!


「な、何を……あ、綾さん!?」


驚きの中振り向くと、にこやかに微笑む綾さんの姿があった


「はい、綾さんです。偶然ですね」


「え、ええ、偶然過ぎて本当にびっくりしています。ところで……何をしてるんですか?」


綾さんは黒いビキニの上にラムネと書かれたTシャツを着て、重そうなクーラーボックスを肩に担いでいる。汗に濡れたシャツが、なんだか妙にエロい


「アルバイトですよ。稼ぎ時ですので」


そう言って綾さんは、クーラーボックスを開けてラムネを一本俺に手渡す


「あ、はい。いくらですか?」


「お友達価格で無料です」


「え? あ、ありがとうございます。でも……良いんですか?」


「メガネの時給から引いておきますから」


そう言い綾さんは、春菜が向かった海の家を指差す。そこではどっかで見た事ありそうなオッサンが、客引きをしていた


「…………大変ですね、あの人も」


凄い人なのに


「今朝は食パンの耳だけを塩をかけて食べていました」


「また悲しくなるエピソードを……」


後で焼きそばでも奢ろうかな


「じゃあラムネ、遠慮なく。ありがとう」


プシュっとラムネのビー玉を落とし、ゴクリと飲む


「く〜! うまい!」


良く冷えた炭酸が、喉を焼くぜ!


「どういたしまして。ついでに触っときます?」


「はい? って何故唐突に四つん這いになって俺へ尻を突き出す!?」


女豹か! 女豹なのか!


「さっき触らせて頂きましたので」


「もうラムネを頂きましたから、そんな事しないで良いですよ!」


しかし、手が! 俺の手が勝手に!?


「ところで佐藤君」


勝手に動く前に、綾さんはサッと素早く立ち上がってしまった


「……それで良いんですけどね。なんです?」


「私は無難なトランクスは嫌いです。先っぽが出るぐらいの際どいブーメランで冒険して下さい」


「真剣な顔をして、いきなり何ぬかしてんですかアンタは」


「ではフンドシで」


「ハードル上がってますがな」


「…………フ〇チン?」


「止めて! 美人がフ〇チン言うの止めて!!」


なんか嫌だ!


「む〜」


全否定すると、綾さんは不満そうな顔で唇を尖らてしまった


「佐藤君!」


「は、はい」


ヤバイ、怒ってる?


「佐藤君はいつまで出し惜しみをする気ですか!」


「……はい?」


「そんなんじゃアレですよ!? えっと……まぁとにかくアレです! アレがアレな……加〇鷹にはなれませんよ!!」


「…………とっとと仕事に戻ったらどうです?」


これ以上付き合ってると疲れそうだ


「……ごめんなさい、良いオチが浮かばなくて」


綾さんはガックリと肩を落とし、クーラーボックスを肩に担いだ


「加〇鷹ではなく、宮沢〇え。だったらありだったかなと」


いわゆるサンタフェ


「……本当、佐藤君って幾つなんです?」


「ネタが分かる綾さんも中々……」


つか、加〇鷹って……


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