第131話:夏の海
窓を開けると、強い雨音が耳につく土曜日夜。空は真っ黒で、雨が止む気配は全くない
「凄い雨だな」
「……うふふ」
何となしに呟くと、リビングのソファーで携帯をいじっていた夏紀姉ちゃんが不気味に笑った
「姉ちゃん?」
「天気予報、明日も大雨ですって。どう? この間の悪さ。ちょっとみんなと海に行きたいなって思ったらこれよ?」
ニヤニヤと余裕ありげに笑っているが、ちょっと涙ぐんでる所が哀れさを誘う
「まぁ夏はこれからだしまた誘えば良いじゃん」
「ふん。どうせまた雨が降るわよ。それとも嵐かしらねアハハのハ」
うわ、相当拗ねてるよ
「つ、次はきっと晴れるよ。うん、間違いない」
「どうだか」
ふんっと鼻を鳴らし、麦茶を注ぐ姉ちゃん。酒が入ってない分、静かって言ったら静かだが……
「まぁまぁ。明日はみんなでドンジャラでもやろうぜ」
「…………ドンジャラ」
それから、しょぼくれた姉ちゃんと暫くお茶をして、いつの間にか12時前。姉ちゃんのアタシ寝るわ発言で解散。海に行けなくなったのは残念だが夏はこれからだ、また行けるチャンスもあるだろう
「じゃ、おやすみ」
「ええ。おやすみ」
う〜む、やっぱ元気ないなぁ。明日肩でも揉んでやるか
「……ねむ」
俺も寝よう
歯を磨いて部屋へ戻り、ベッドの上で時計を見ると、12時過ぎ。久しぶりに目覚ましかけないで寝るか
AM 07:03
ドタドタドタ
「ぐーぐーすやすや」
ドタドタドタドタ
「む……ぐー」
バターン!!
「うわぁ!? な、なに事だ!」
襲撃か!?
「どーよ!!」
「え? な、なに? なんなの?」
パニック状態で部屋を見回すと、ドアの前で姉ちゃんが仁王立ちしていた
「ね、姉ちゃん?」
「海に行くわよ!」
「……うににく和洋?」
何を言ってんのかさっぱり分からん
ぽけーっとしていると、姉ちゃんはズンズン部屋の中へ入って来て
「どう、この青空! お日様も笑ってるわ!!」
カーテンを開けながらサ〇エさんみたいな事を言い出した
「へーどれどれ」
起き上がって窓の外を見上げると、雲一つ無い超快晴
「さぁ、準備しなさい。一時間後に出発よ!」
テンション高いな〜
「分かったよ。じゃ顔洗ってくる」
「やっぱり最後は逆転する女なのよねアタシは。持って生まれた強運ってやつかしら」
「……強運ねぇ」
どっちかって言うと、悪運?
「海は広いな〜♪」
上機嫌に歌いながら2階へと上がって行く姉ちゃん。凄いテンションだ
「……やれやれ」
ま、元気になって良かったかな