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春の部活帰り 3

「こうやってな、クシャクシャにしたストローの袋に水を一滴垂らすと、微妙に動くんだぜ」


喫茶店に入って20分、パフェやケーキも食べ終え、話題が無くなって来ていた


「へぇー。面白いね、お兄ちゃん」


余り興味なさそうだが、雪葉は一生懸命俺の話を聞いてくれる。これが夏紀姉ちゃんなら『で?』と無表情で聞き返し、俺を追い詰めるだろう


「じゃあ、そろそろ出ようか?」


「お兄ちゃんにお任せです」


ニコッと笑顔で雪葉は応える。全く一体誰に似たらこんな良い子が……親父?


「お兄ちゃん?」


「ああ、ごめんごめん。よーし、じゃ引き上げるべ」


「うん! ……あれ?」


伝票を手に取って立ち上がろうとした時、雪葉は店の入口方向を少し驚いた顔で見た


「ん? どした?」


釣られて振り向いてみると、入口には春菜っぽい後ろ姿の奴と、その友達と見られる二人がウェイターに席を案内されている


「春お姉ちゃん?」


「多分な。一人だけジャージだし」


他の子達は、ちゃんと私服を着ているのに、一人緑色のジャージを着ている様は、もしかしてバカなんじゃないだろうか? と思わせてくれる


「あ、やっぱり春お姉ちゃんだよ」


「そうだな。部活帰りにちょっと涼みに来たんだろ」


なんと贅沢な!


「雪葉、挨拶してこようかな」


「別にしなくても良いんじゃないか? なんか盛り上がってるし」


春菜を中心に楽しそうな声が聞こえてくる。その声を何となしに聞くと、春菜の友達だと思っていた二人は、どうやら部活の後輩らしい。三人は俺達とは少し離れた席に座り、会話に花を咲かす


「お疲れ様でした〜」


「お疲れ様です、春菜先輩」


「ああ、お疲れ。今日は二人とも結構走り込んでたな」


「はい。でも春菜先輩に比べたら全然……」


「多く走れば良いってもんじゃないからさ。今の自分に合った練習をしねーと。そこいくとお前らは良い感じでやってると思うぜ」


「あ、ありがとうございます!」


「アザッス先輩!」


「…………ふむ」


中々先輩してるじゃないか


「後でからかってやろうぜ。さ、帰ろう」


よっこいしょっと腰を上げて……


「あ〜あちー。もージャージ脱ぐしかねー」


「本当暑いですよね〜。あ!? せ、先輩! 体操服から……す、透けてます!!」


「透けてる? ああ、乳首? 邪魔だよなこれ、取れねーかな」


ゴーン!!


「キャ〜!? お兄ちゃんが何故か突然まえのめりに倒れてテーブルに頭を〜」


「ぐ、ぐおお〜」


「だ、大丈夫、お兄ちゃん?」


「な、なんとか……」


つか、アホかあいつは!


「先輩は部活中ブラジャーとかしない派んすか? デカイのに」


「蒸れんの嫌なんだよ。暑いし」


あははと笑う春菜を、カッコイイとリクペクトする後輩1。なんつー体育会系だ


「あ、あの……スポーツブラとかありますよ?」


遠慮がちに聞くのは後輩2だ。どうやら彼女は常識人らしい、安心したぜ


「さ、帰ろぜ雪葉」


よっこいしょっと立ち上がって、伝票を


「ふーん。今度兄貴に買ってもらおかな」


「……え? お、お兄さんにですか?」


「ああ。この前、兄貴が興奮しながらパンツ貸してくれって言うから、やるって言ったら新しいの買ってくれる事になってさ」


スッテーン!!


「キャ〜!? お、お兄ちゃんが何故か突然足を滑らせて体操選手みたいな上下の開脚を〜」


「股が〜股がぁああ!」


裂けてまう裂けてまう〜


「そ、それは……大丈夫なんですか?」


「何が?」


「あ、えっと……春菜先輩のお兄さん、ちょっとアレなのかなって……」


「アレ? 良く分かんねーけど、まあまあ良い兄貴だと思うぜ? 私は超好きだけどな!」


「…………」


ふ、春菜の奴め


「大丈夫、お兄ちゃん?」


「ああ、心配かけてごめんな。さ、今度こそ帰ろう」


床に落ちた伝票を拾い、俺は財布を手に雪葉と共にレジへと向かった




今日の風評被害




「それに色々知ってんだぜ〜。コンドームの使い方とか知ってるか? 兄貴が詳しく教えてくれたんだ」


パコーン!!


「ひゃー!? つってーな! 何すんだよ!! いきなり頭叩きやがってって、兄貴!?」


「お前、マジでいい加減にしろ!」


ツヅマニ


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