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春の部活帰り 2

駅前の喫茶店、茶太郎


「ふぃ〜。少し歩いただけでも汗が噴き出るな」


「セミさんも凄い鳴いてるね」


「あれはミンミンゼミだな。さ、入ろうぜ」


「うん!」


自動ドアを潜ると、そこは別世界。ヒンヤリとした空間が汗を冷やす


「いらっしゃいませ。何名様ですか?」


180センチはありそうなウェイターの兄ちゃんに二人だと伝え、一番奥の四人掛け用の席へと案内された。割と広い店内の中、客は少なく、のんびり出来そうな雰囲気がある


「涼しいね、お兄ちゃん」


「ああ、ちょうど良い感じだよ」


寒くもなく、生暖かくもなく絶妙な温度だ


「ほら、メニュー。好きなの頼みな」


テーブルに置かれたメニューを開き、雪葉に寄せる


「う〜んと……あ! 雪葉、カバさんパフェ!」


「此処でもか!?」


なんなんだ最近のカバブームは。なんだか闇社会の力を感じるぜ……


「お兄ちゃん?」


「あ、ああ……飲み物は要らないのか? 甘いパフェに苦めのアイスティーとかさ」


「ん〜ん。太っちゃうもん」


「はは、そっか。じゃ注文するぞ。すみませーん注文お願いします」


「はい、ただいま」


さっきのウェイターが、スムーズな動きでこちらにやって来る


「ご注文、承ります」


「はい。カバさんパフェとアイスコーヒー、それとこのケーキで」


「はい、承りました」


注文を受けた後、ウェイターはメニューを手に取り、数ページめくってテーブルにそっと置いた。見てみると、カバの頭に人間の身体を持つ不気味な生物が五匹でポーズを取って写っている


「ただいまカバフェアをしていましてカバ系二品を注文して頂けると、こちらのスーパーカバ戦隊カバチタレフィギュアを差し上げております」


「ただカバって言いたいだけでしょ? てかこんな不気味な人形なんか……うっ!?」


「カバさん……」


じーっとメニューを見ている雪葉の目が、キラキラと輝いている!


「カ、カバカレーを追加だ!!」


「ありがとうございます。お味はグリコとバーモンドとハウスがありますが、どちらになさいます?」


「レトルトか!?」


「それはどうでしょう」


「なんで意味ありげなんだよ……ハウスで良いです」


「承りました。では少々お待ち下さい」


そう言い、颯爽と去って行くウェイター


「変な店だな……」


「あ、ありがとう、お兄ちゃん」


「え?」


「カバさんグッズ。欲しかったの!」


「ああ。どういたしまして」


しかしカバさんか……。何度見ても不気味だな


「時に雪葉君。最近学校とかはどうかね?」


メニューを閉じ、兄貴っぽい事を聞いてみる


「うん、凄く楽しいよ。夏休みになっちゃうのがちょっと残念なくらい。あ、そうだ。お兄ちゃん来週の日曜日、何か予定ある?」


「ん? もしかして花梨のパーティーの事? 大丈夫、俺も行くよ」


改めてみんなに礼を言いたいしな


「え? お兄ちゃんパーティーの事、知ってたの?」


「ああ、千里に聞いた」


「千里ちゃんが? ……珍しいかも」


「珍しい?」


「うん。千里ちゃんって凄く仲良くならないと、自分から何かをお話しする事ないの。だから」


「ふーん。ちょっと変わった子だよな」


「え? そ、そう……かな」


雪葉は表情を暗くし、困惑気味に呟く


「あ、ごめん。雪葉の友達に変わってるなんて失礼だった。悪い意味じゃないんだ、個性的で良いと思ってる」


元カノも変わってる奴だったし


「類は友を呼ぶって奴かな。雪葉がいい子だから雪葉の友達もいい子ばっかりだ」


兄は誇らしいぞ


「ん、んと……。あ、ありがとうお兄ちゃん」


照れ臭そうに、はにかむ雪葉。良かった、夏紀姉ちゃんに似なくて


「お待たせしました、カレーです」


「カレー早っ!?」


来たのはごく普通のカレー。カバっぽさのかけらも無い


「まあ良いや。先に食べさせてもらうな」


「うん」


スプーンを手に取り、一口


「…………やっぱレトルトか」


バーモンド頼めば良かったぜ


「あ、カバさん」


「え? ……ああ、なるほどね」


ニンジンがカバっぽく切ってありました

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