クリスマス系家族 2
「一杯食べてね~」
そんなママの声で始まった夕食。
リビングのテーブルには一体何処の相撲部屋ですか? と言いたくなるぐらい食材と、すしめしが乗っていた
「うっお~! クリスマス最高!! いただきま~す!」
若干引いてる俺や夏紀姉さんを無視して、大喜びの春菜。おにぎりみたいな手巻き寿司を作り、頬張る
「……夏紀姉さん、イクラ食べて良いよ?」
大きめの皿に溢れんのイクラ。此処は寿司屋か?
「……たま~にね。たまにだけど、変な家だな~って思う時あるわ」
「……奇遇だね。俺もそんな時あるよ」
「……大人になるってこういう事なのかしら」
「…………かもね」
「ほら~、早く食べないとなくなるわよ~」
ママが、ア然とする俺と夏紀姉さんに、そう言ったけど……
「それはないわ」
「それはないよ」
珍しく夏紀姉さんと意見が合った瞬間だった
一時間後
「うぇ~苦しい~」
腹をぱんぱんにさせ、横たわる春菜。春菜でも流石に全部は食えなかった
「食べて横になると牛になるぞ」
「も~」
「え~い、このポッコリお腹め!」
牛の鳴きまねをする春菜のお腹をくすぐる
「ちょ!? や、やめ! 止めて兄貴!?」
「うりうり~」
「あ、あはははは! くすぐったい、くすぐったいって兄貴~」
本当、くすぐりに弱いよな~
「ふぅ……。そろそろ勘弁」
「……………も~」
勘弁してやろうかと思ったら、横からもう一匹の牛の声が
「へ?」
「へ?」
思わず春菜と顔を見合わせ横を見ると、床からスーッと起き上がる秋姉さんの姿
「……あ、秋姉さん?」
「……………な、なんでもない」
秋姉さんはカキの様に顔を真っ赤にさせ、冷蔵庫の方へ行く
「…………」
「…………あ、兄貴~仕返しだ~」
「う、うわ~やられたぁ~」
気まずさで三文芝居を始める俺ら。何故か途中で雪葉も混ざって、大賑わい
「は~い、それじゃそろそろケーキ食べましょ~」
くすぐりっこが終わって一段落した後、さっき俺が買って来たケーキをママがテーブルに置く
「け、ケーキって……俺達はともかく春菜は」
腹一杯で横たわっていて……あれ? 春菜は
「どうした兄貴。早く椅子に座れよ?」
「お前、凄いな!?」
いつテーブルに!?
「は~い、それじゃみんな席に着いて~」
「は~い」
素早く着席する俺ら。チームワークは最高だ
「ロウソク立てて~、電気消すわね~」
パチっと電気を消すと、ケーキの上に立つロウソク灯が、優しく部屋を照らした
「きれ~」
「……ん。なんだか暖まる」
「たまにはロウソクも良いわね」
「……美味そう」
「一人変な感想の奴が居たぞ!」
「うふふ。……ジングルベ~ル、ジングルベ~ル」
「鈴が鳴る~」
自然と、家族全員で歌い始めたクリスマスソングは、何処か音程がズレていたけど何だか凄く暖ったかくて……
「父ちゃん元気かな~」
「あ、忘れてた」
「あ、忘れてた」
俺と夏紀姉さんの声が見事にハモった瞬間だった