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クリスマス系家族

以前外伝として書いていたもので、そろそろ削除をする予定だったのですが、なんだか消すのが勿体なくなってしまって、こちらに移しました


近いうちに整理しますので、なんで夏の話の途中で数年前のクリスマスやるねんって感じで超見苦しいかと思いますが、どうかお許しを……

ジングルベルの歌が商店街に流れる十二月二十四日。空からは小さな雪がホロホロと降る午後四時頃


俺は予約していた十六号のショートケーキと八号のチーズケーキを買い、家を目指し急いでいた


「早く家に戻らなくっちゃ!」


今日は手巻き寿司。遅くなると、春菜がグズッてしまう。来年は絶対自転車を買おう


来年は俺も中学校。去年盗まれたのが腹立って、自転車を買い直さず一年を過ごしたが、不便この上ない


「ふぅ、はぁ、ふぅ、はぁ」


駅前から小走りで走る事十五分。ようやく見えてきた我が家


「着いた!」


家の周囲には誰も居なくて、クリスマスと言う特別な日と、もしかしたら積もるかもな雪とで、テンション上がってしまっていた俺は、妙なスキップをしながら家のドアへ向かった


「おら、おら! スキップ、スキップ!!」


誰かに見られたら確実に変人だ。その緊迫感が俺をドキドキさせるぜぃ


「あ………………おか」


「ただいま~!」


ドアを開けて暖かい家の中へ。誰にも見付からなかったぜ!


「あ、おに~ちゃん。おかえりぃ」


達成感に胸を踊らせていると、玄関でフキフキと拭き掃除をしていた雪葉が、掃除を中断して俺を出迎えた


「寒かった? お風呂にする? ご飯がい? それとも雪葉?」


俺のダッフルコートを一緒懸命脱がし、身体一杯でコートを持って屈託無い笑顔で言う雪葉。

 ママが見ているサスペンスドラマに影響されているらしい


「ん~。雪葉だ!」


雪葉を抱き抱え、きゃっきゃと笑う雪葉のおでこにキス


「掃除、偉いよ雪葉」


いい子、いい子と頭を撫でて……


「………………えり」


「うわっ!? あ、秋姉さん? い、居たんだ」


いつの間に居たのか、俺の後ろには白いセーターを着た秋姉さんの姿があった


「………………」


ジトーっと、拗ねたような目をする秋姉さん。こんな目をするのは珍しい


「あ、秋姉さんも、いい子、いい子~」


気まずさに、思わず秋姉さんの頭を撫でる


「…………ん。着替える」


秋姉さんは猫の様に目を細めた後、自分の部屋へと向かって行く


「……な、何だったんだろう」


我が姉ながら謎だ


「もうすぐご飯だから、お部屋で待っててね、おに~ちゃん」


下ろしてと言う雪葉を下ろすと、雪葉は掃除用具を片付け、とてとてリビングへ向かって行った。多分、ママを手伝っているのだろう


「……ふふ」


俺は雪葉が畳んでくれたコートを手にとり、言われた通り部屋へと向かった



「あ、兄貴。おかえり」


部屋へと入った俺を胡座で出迎えたのは、妹の春菜。奴は俺のベットの上で食パンを食べながら漫画を読んでいやがった


「で、何故に食パン?」


「へ? ああ、これか。ほら、今日はオレの大好物な手巻き寿司だろ? 下手するとオレ一人で全部食べるかもしんねーじゃん? せっかくのクリスマスだぜ? そんなテンション下がる様な事、したく無いじゃん」


だからさ、と、春菜は憂いを帯びた表情で言った


「春菜……お前」


根本的に気遣う部分が違うぞ。そう言いたい所だが、せっかくの妹の成長だ。生温かい目で見守ってあげよう


「ところで兄貴」


「なんだ妹」


「イクラを賭けてゲームしようぜ!」


結局賭けは俺が勝ちましたが、マジ泣きする妹にイクラを譲る事にしました。



「でも春菜。多分そんなに気にする事ないよ」


まだ少しグズッている春菜の背中を撫でながら、リビングへと向かう


「父さんは出張中だし、夏紀姉さんは今日、遅いんじゃない? 姉さんはいっつも遊び歩いてるからな。

 不真面目で、不健康、おまけに不衛生。あれで良く生徒会長なんてやってるよ。モテる割には彼氏出来ないし、て、姉さんの本性を知ったら彼氏になるなんて物好き居る訳無いか! あはは……どうした、春菜?」


春菜は下を向き、ガタガタと震えていた


「で、でも夏姉は頭良いし、オレは大好き~」


「まぁ俺も夏紀姉さんの事は好きだけどね。ただ奥さんや彼女にはしたくないな~。一月の小遣い500円とか平気でやりそうだ……」


後ろからガシっと頭をわしづかみされ、俺の身体は硬直する


「私も貴方が好きよ? うふふふふ」


「ぼ、僕も姉さん、大好きっ! い、今のは姉を慕う弟のくだらない戯れ事で……」


ギリギリギリ


万力に挟まれたかの様に頭が絞まる


「ね、姉さん? ちょ~っと頭が痛いな~なんて」


「孫悟空っているじゃない? 西遊記の」


「は?」


「あのわっかって、ずーっと絞まり続けるとどうなるのかしら?」


「な、なにを言って?」


「試してみる?」


「い、いえ! またの機会にぃいいいい~!?」


頭を絞めるパワーが更に倍! はらたいら!!


「だ~れが行かず後家だぁああああ!!」


「そ、そんなこと言ってないいいい! 助けて春菜~」


「な、夏姉? 兄貴も反省してるみたいだし……」


「ああん!?」


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」


役に立たねぇ! こうなったら最後の手段!!


「た、助けて、秋ねうわっ!?」


秋姉さんの名前を呼ぼうとすると、頭をギュっと抱きしめられた


「か、可愛い弟よね~、本当に~」


声が震えていますよ?


がちゃ


ずん、ずん、ずん


そんな効果音を出してしまうぐらい、こちらに向かって来る秋姉さんは迫力があった


「…………姉さん?」


「あ、あらアキ! 居たのね~。いや~、家に帰ったらこの子が居てさぁ余りにも可愛いから抱きしめちゃったっ! ……そうよね、春菜」


こくこくと頷く春菜


「……そうなの?」


「う、うん。夏紀姉さんがイクラを俺と春菜に全部あげるって言ってさ。驚いちゃったよ」


この家では俺と春菜と夏紀姉さん以外イクラを食べない。ちなみに夏紀姉さんの大好物


「なっ!? そんな事」


「孫悟空」


「うっ」


「西遊記」


「ううっ」


「わっかが絞まるとどうなるんだろうね?」


「い、イクラ全部あげるわよ」


「わ~い。夏紀姉さんありがと~」


「…………仲良し」

ニコッと笑う秋姉さん。気付いてないのだろう、俺と夏紀姉さんの間にある緊迫感を


「おに~ちゃん、おね~ちゃん。ごはんですよ~」


その緊迫感を打ち破る、雪葉の声。廊下で固まっている俺達を不審がるそぶりも無く、夜ご飯を知らせてくれた


「よっしゃ! ご飯!」


いきなりテンションMAXになった春菜がリビングへ飛び込んで行く。元気な奴……


「じゃ、俺も行くとするか。夏紀姉さん、可愛い弟を抱きしめたい気持ちは判るけど、そろそろ離してくれません?」


「ぐっ! そ、そうね」


夏紀姉さんは悔しそうに俺を抱擁から解放する


「これからは弟を可愛いがるのも、ほとほどにしないといけませんなぁ」


「こ、このガキ」


「…………姉さん?」


「か、カキが食べたいなぁ」


勝った!


「……ん。明日買ってくる」


「あ、ありがと~。お金は出すからね~ホホホのホ」


わざとらしく笑う夏紀姉さん。もうお小遣なさそうなのに無理しちゃって


「……くくく」


「もちろん、あんたも、食べる、わよねぇ?」


「………はい。割り勘にしましょう」


顔は笑顔なのに目が全く笑ってないと言う顔芸を見せられては、黙って頷くしかなかった

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