千の退屈 3
「もう胸でいいです……ごめんなさい」
不毛な言い合いは、6ループ目に俺の完敗で終わった。もう口答えするのは止めよう……
「つか暑い!」
気付けば全身汗だくで、千里もまた額に汗を浮かべている
「ちょっと水買って来るからお前も飲め」
「ポカリ的すいっと希望」
「ああ、分かった」
この辺に自販機あったよな
急いで坂を駆け降り、近くの自販機へ
「うむ〜」
ポカリ売ってねーな。仕方ない、こっちで我慢してもらおう
「悪い、オカエリヤスしかなかった」
よく冷えたオカエリヤスを持って土手に戻り、千里に手渡す
「構わない。似たようなものだし」
「そっか、良かった。外で遊ぶのは良いけど熱中症とか気をつけろよ」
「恭君、やさし」
「そうか?」
「優柔不断でもないし、みんなに好かれるの分かる」
「そ、そう?」
嬉しい事、言ってくれるぜ
「うん。ロリコンを宣言するなんて、常人では出来ないし」
「いつ俺がロリコン宣言をした!?」
「してないの?」
「してるか!」
「じゃあ、なんで好かれるのか分からない」
「どういう基準だよ!」
「国際基準?」
「なんで国際!?」
「なんで?」
「俺に聞くな! ごほ、ごほ」
く〜、さっきから叫びっぱなしだ
「喉痛くない?」
「痛いよ!」
「のど飴……」
千里はスカートのポケットを探り
「無いから酢イカあげる」
酢イカを俺に差し出した
「いや、余計痛くなるから」
「クレイジーチャレンジャー」
「チャレンジしない!」
「へたれ」
「やかましいわ!」
ちくしょう、会話の主導権が全く取れない!
「恭君」
「今度はなんだ!?」
次は負けねぇぜ!
「花梨ちゃんの事」
「うぉう!?」
いきなり本題か!
「なに?」
「い、いや、なんでも……花梨がどうしたって?」
「ちょっと元気ない。私達に気を使ってる感じ」
「……ふむ」
あいつ真面目そうだしな
「でも友達だし、それは大丈夫。問題は恭君の方」
「俺?」
「この間の大会、勝てたの恭君のおかげだし、恭君は大人かもだし、友達とも言えないし、どうしていいか分からないみたい」
「ふむぅ」
俺としては、もう終わった事なんだが、花梨としてはそうもいかないのかも
「今度話してみるよ」
「そこで恭君に朗報。今度の日曜日、花梨ちゃんのうちでパーティーするから。恭君も来て」
「日曜日? 日曜日は予定あるんだよ」
ま、どうせ姉ちゃんとの約束だし、破っても……
「じゃあ土曜日」
「こらこら。勝手に曜日変えるなって」
花梨の代わりにツッコんでおく
「恭君のわがまま。わがままボディ」
「なんでやねん!!」
あ、久しぶりな普通のツッコミ……
「でも分かった、花梨ちゃんと相談してみる。恭君のメールアドレス教えて?」
「え? あ、ああ」
携帯をポケットから出し、アドレスを開いて千里に渡す
「…………ありがと」
千里は携帯の画面を何秒か見た後、俺に返した
「どう致しまして……メモとかしないのか?」
「覚えた」
「マジで!?」
10桁ぐらいあるんですけど……
千里は無言で携帯を取り出し、めっちゃ早くボタン打ち込む
「送信」
ほぼ同時にブブブと俺の携帯が震え、開いてみると題名にU.S.Aと書かれたメールが来ていた
「なんでU.S.A?」
疑問に思いながらメールを開いてみると、フ〇ックユーの文字
「…………お前ね」
「別にリサに対して言った訳じゃないんだけど?」
「なんで被害者づら!? てかリサの事なんか思い付きもしなかったよ! ごほごほ!!」
「喉痛くない?」
「痛いよ!」
それからまた何周かループして……
「フゥハァ……つ、疲れた」
もう喋る気力が無い
「恭君へとへと。ちょっと残念」
そう言って千里はケツを払いながら立ち上がり、こくんと頷く
「でも、おおむね満足。ありがと」
「よ、よく分からんが、良かったな」
「じゃあそろそろ帰る。メール送るから」
「お、おう」
「バイバイ」
「ああ、またな」
トトトトと土手を駆け降り、手を振りながら帰っていく千里
「…………はぁ」
疲れた
今日の暇つぶし
千>>>>>>>>俺
つらし