第126話:Tの天然
妹大会の翌日。筋肉痛はまだ治まってないが、もうすぐテスト期間と言う事もあり、無理をして学校へ来た俺。そんな真面目な好青年の俺へ、最初に声を掛けて来たのはクラスメートのTさんだった
「あ! おはよう、佐藤君。テレビ見たよ」
「お、おお。……見たのか」
地方テレビだってのに結構見てた奴いるんだな
「うん! 佐藤君って妹多かったんだね。みんな可愛くてびっくりしちゃった。ヤナの椅子借りちゃうよ~」
Tさんは、のほほんとした童顔に好奇心の色を浮かべ、俺の隣の席に座った
「あれは妹と、その友達だ。本当の妹は一人だけなんだが……秘密だぞ」
「わ、秘密聞かされちゃった。なるほど、なるほど。う〜ん、そうだね〜佐藤君の妹は……リサちゃんだ!」
「人種が違うだろ」
「じゃあ……すらっとした子!」
「風子の事か? 違う」
「金魚の子!」
「せめて本人の特徴ぐらい言ってやれよ。ちなみに美月な、違うけど」
「あ、そっか分かった! もうこうなったら花梨ちゃん!」
「何が分かったってんだよ。違うから」
「え〜。じゃあどの子?」
「雪葉だよ、雪葉。白いワンピース着てた子いたろ?」
「え? あの大人しそうな可愛い子? 凄い! びっくりするぐらい似てないね!!」
「大きなお世話だ、こんちくしょう」
似てないってなら俺とリサなんか絶望的に似てないだろ
「あ、でも秋先輩ともあまり似てないし……もしかして」
「いや違うから。血、繋がってるから。普通の家族だから」
「ちぇ」
「残念がられても困るんだけど」
「残念じゃないよ、がっかりなんだよ」
「どう違うんだよ」
そんな不毛な会話をしていると、クラスの連中が続々と登校してきた
「あ~暑い、暑い。ん? あれ? 珍しい組み合わせね」
その中でMが俺達に興味を持ったらしく、近付いてくる。そのMを、クラスの連中が何となしに目で追った
明るく、目鼻立ちがはっきりしているMは、クラスで一番の人気者だ。Mが普通に歩くだけで、皆は注目してしまう。花があるって奴だな
「おはよう二人とも」
そのMは俺達の側に立って、長身を少し窮屈そうに屈め、俺達の視点に合わせた。クラスの女が憧れる170の身長は、Mにとっては邪魔なだけらしい
「おはよう美佳。今ね、佐藤君の妹の事を話してたんだ」
「妹? 春菜さん? 凄いよ彼女、また県の記録を更新したんじゃなかったっけ?」
「へえぇ〜。凄いね佐藤君」
「まあな」
自慢の妹達だ
「今は雪葉ちゃんの事を話してたんだ。佐藤君、昨日妹大会で優勝したんだよ」
「妹大会?」
「ほら駅前にポスターとか貼ってたやつ。優勝賞金一千万円の」
一千万円の言葉にMは目を丸くし、
「ずっと好きでした。付き合って下さい」
「金目当てだろ?」
「うん」
「即答は止めて! せめて少し悩んで!!」
「金があれば愛もそのうち生まれてくるから」
「どんだけ達観してんだよ……言っとくけど金はもう無いぞ。みんなで分けた後、全部使った」
「ごめん。別れて」
「早っ!?」
「一時の気の迷いだったみたい。夏のせいだね」
「う~ん。美佳は大人の女だねぇ」
「何処がだよ」
大人の女ってのは、美しく聡明で優しくって女神で……あれ? 秋姉、条件にピッタリじゃん!
そうか、秋姉は大人の女だったのか。薄々そうじゃないかと思っていたけど、やはり……
「どうしたの佐藤、急にニヤニヤして。パンツでも見えたか?」
「さっきから発言がオヤジ過ぎるぞM」
「だって佐藤がエッチいから」
「へ~佐藤君ってエッチなんだ」
エッチだエロスだと騒ぎ立てるMとTさん。クラスの連中達は一見無関心を装っているが、明らかに聞き耳を立てている。ヤバイ、このままでは皆に俺がエロだと誤解されてしまう!
「俺はエロくなんかないぞ! ちょっと姉好きなただのシスコンだ!!」
あ、シスコンは余計だったな。撤回を……
「うん。シスコンなのは知ってる」×14
「…………」
クラスメート達の声が、見事に揃った瞬間だった
今日のテレビっ子
T>>>俺>>>>>M
「うわ~ハモった。なんか凄いね~。流石平成のシスコンの王様だね、佐藤君!」
「さ、最後まで見ちゃってくれたのか……金で解決できるかね?」
「え?」
「どうか昨日の事は忘れて下さい……」
「ん~、忘れたらサインくれる? シスコンの王様、佐藤 恭介、戸田の家に参上って。部屋に飾っておくから」
「絶対忘れる気ないだろ!?」
痛烈