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雪の妹大会 13

「おー。超すげー」


レストランから体育館に戻ると、既にその真ん中には簡易な部屋のセットが組まれていた。しかし簡易とは言え、本棚やベッド、左半分だけあるベニヤ板の壁があり、ドラマ撮影が出来そうなぐらいしっかりしている


「すげーね、兄ちゃん!」


「ああ。無駄に金掛かってるよな、この大会」


どこがスポンサーなんだろう?


「……ふん。私のテレビデビューにしては貧相だけど、花梨と決着をつけるぐらいは出来そうね」


「あ―そう。良かったわね」


温度差が激しい二人だな


「とにかく出場のワッペンを貰って来ようぜ」


「そうね行きましょう」


そう言って花梨が先頭になり、受付バニーさんの方へ向かうと、リサがそれを早足で追い越した


「ふふん」


「…………馬鹿じゃないの?」


「ばっ!? な、なによ! 馬鹿って言う方が馬鹿なのよ!!」


「はいはい」


「う、あ、アホー!」


「…………」


リサは夏紀姉ちゃんに似ているかと思ったが、この哀れさはむしろ俺に近いかも……


「頑張れよ、色々」


何となく小声で応援してみた


「すいません、俺達出場したいんですけど」


バニーさんの前に立ち、そう言うと、バニーさんは俺を見て驚いた顔をする


「なにか?」


「あ、失礼しました佐藤様。この大会、全種目出場したお兄様は今まででお一人しかいかなかったもので、少し驚いてしまいました」


「そうなんですか?」


「ええ。その方は二十二人の妹様を連れ、全ての部門で優勝された伝説の勇者です。もう二度そのような方は現れないと思っていたのですが……」


バニーさんは、憧れと尊敬を感じる目で俺を見つめた……が、正直そんな変態と一緒にしないで欲しい


「あ、失礼致しました。こちらがワッペンとなります。七番と八番、お兄様は両方ですね」


「どうも」


「私、七番貰うわ。文句ある?」


「ないわよ。頑張りなさい、リサ」


「あ……か、花梨なんかに応援されたって、頑張らないもん!」


いや、頑張れよ


「う〜ん、ナイスツンデレですね。優勝目指して頑張って下さいませ」


「ええ。ありがとう」


後は試合が始まるのを待つだけだ


七番のワッペンを胸元に付け、雪葉達の元へと戻る。軽い緊張と、一千万円の期待で落ち着かない中、いよいよ最後の締め切りが発表された


「ツンデレ部門、出場者の方は後五分以内に受付を済ませて下さい。それを過ぎますと、参加出来ません」


一度別の競技に参加した妹は、他の競技には出れない。そんなルールがあるので、今まで出なかった妹達は最後であるこの対決に出る筈だ。だが、思ったより人の流れが少ない


ピピー。笛の音が体育館に響く


「以上で受付終了です。出場者の方々は、セット前に集まって下さい」


「よし……行くぞ!」


「ええ」


「勝負よ、花梨!」


「いってらっしゃい、お兄ちゃん達」


「がんばれー兄ちゃんと花梨とリサ!」


「ふふ。応援してるよ、三人とも」


「金髪の珍プレイ期待」


みんなの応援? を得て俺達は行く。最後の戦いへ


「…………私は神を信じない。だが、もし私の命が尽きた時、私はこう言って死のう。神様、ツンデレをありがとう! イィヤッハー!!」


ヤー!!


「それじゃ、一番目の妹ちゃん! 宜しくベイビィ!!」


「一番目、祐樹お兄ちゃんと初美ちゃんお願いします」


セット前に行くと、直ぐに金ぴかオッサンと、受付バニーさんが最初の兄妹を紹介した。そして紹介された兄妹はセットの上にあがった。兄はそのままベッドに入って寝たふりを始める


「これはしっかり見とかないとな」


一番最初は誰よりも新鮮な演技を出来るが、参考にする演技が無い為、不利だ。この二人は、どこまでやれるか


ジリリリリ


目覚ましが鳴り響く。そこへドアが開き、妹が飛び出して来た


「あ―まだ寝てるの? 早く起きてー」


「う〜ん、まだ眠いよ初美」


「……起きろっつてんだろ、こら? くせー息吐いて無駄に二酸化炭素を撒き散らかしてんじゃねーぞボケ!」


「は、はい! 今、起きます!!」


「あはっ、良かった〜。はーやく起きないと、コンポタージュが冷めちゃうぞー」


「…………あれで良いのか?」


まだ続いている芝居を見ながら、花梨に聞いてみる


「……さあ?」


花梨にも分からないらしい


「なによあれ。あんなのただのムカつく女じゃない。あれじゃ駄目ね」


リサはつまらなそうに呟いた


「……そうなのか?」


「ふふん。見てなさい、間が持たなくなるわ」


その言葉通りセットの上では、起きた兄に対して妹は脈絡の無い話を繰り返している


「そして逆ギレ」


「も〜お兄ちゃん! 頷いてばっかいないで何とかしてよ!!」


「ほ、本当だ……」


「ゲームオーバー。おととい来なって奴ね」


すげぇ……。コイツ、ただもんじゃねえ!!


「あーあ、やっぱりレベル低い。花梨、見てなさい。断トツ優勝してあげるから」


「……期待してるわ」


花梨の疑惑に満ちた目に気付かず、リサは満足げに笑った


だがその次の兄妹達もリサが予想した通りに展開を進めて行き、それ以降の兄妹もリサは次々に当ててゆく。どうやら花梨の疑惑は外れたようだ


そしてあっという間に時間は経ち、六組目の兄妹も終了。遂に俺達の出番となった


「行くわよ、恭介お兄ちゃん」


「ああ。頼むな、リサちゃん」


前に一度舞台に出た。度胸はついているはず


「それでは七番の恭介君とリサちゃん。宜しくお願いします!」


よし、行くぞ俺!


「がんばれ〜、お兄ちゃ〜ん」


ああ、雪葉。一千万捕って温泉旅行だぜ!


俺は大きく頷き、セットの上へと乗り立った


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