夏の夜長 2
「ひどい目に遭った……」
夏紀姉ちゃんが連れて行かれた後、リビングへと戻る
それにしても、すっかり目が覚めてしまった
なんかテレビやって無いかな……
夏紀姉ちゃんが持って帰ったすし詰めを食べながら、つまらないテレビ番組を適当に見る
「マジでつまらないな」
ぼやいていると、リビングのドアが開いた。夏紀姉ちゃんだ
「はぁ……」
ため息を付く姉ちゃん。酔いは覚めているみたいだ
「お疲れ」
「正座させられて30分。アキのやつ、殆ど喋らないんだもの……」
再びため息を付き、俺の横へと座る
「ちょっと悪酔いだったわね、ごめん」
俺が最後に食おうと思っていた中トロを、いきなり食いやがった!
「ああいう酔い方は彼氏に嫌われるぜ?」
俺が彼氏だったら引くわ。中トロ盗ったしさ
「はぁ? それ嫌味? 男が居ない姉に対する嫌味かコノヤロウ!」
夏紀姉ちゃんは俺の頬を左右に引っ張る
「ら、らって夏紀姉ちゃんよく誰か、家に呼んでるじゃねーか」
「ああ、あいつらは後輩や飲み友達。もし本当に男だったら、雪葉が居るのに家へなんか呼ばないわよ」
そうなのか? 紛らわしいな。中トロ盗ったからか?
「そういう誤解を招く事をしてるから彼氏出来ないんじゃねーの?」
「………そうかもね。でも今、男欲しく無いし、恋愛とか面倒臭いのよね」
場末のバーにいるホステスの愚痴かよ……。中トロ盗ったくせに
「……なんか寂しい事、言ってるな」
「そういうあんたはどうなのよ、彼女と上手くやったるの?」
「いつの話だよ。とっくに別れてるって」
「え!? そうなの? いつよ?」
「半年前かな? 死兆星が見えたからとか言ってた」
「……別れて良かったわねそれ。でも、そんな事も知らなかったなんてちょっとショックだわ」
「そうか?」
「それだけみんなと話して無いって事よね……はぁ、お酒止めようかな」
つーか、なんでこんなマジな話を夜中にやらなきゃあかんのだ?
「ま、たまには皆と夕食たべな」
「……うん。でもあたし、空気悪くしてない?」
「はぁ?」
「ほら、あたしが居るとなんか皆よそよそしいって言うか……」
「そんな事無いよ。気にしすぎだよ」
「そうかしら………」
夏紀姉ちゃんは黙ってしまう
「はぁ……俺さ、夏紀姉ちゃんの事、大好きだよ? 尊敬もしてる。春菜や雪葉だってそう思ってるし、もっと話す機会を欲しがってる」
「…………生意気よ」
夏紀姉ちゃんはコツンと俺の頭を叩き、微笑んだ
相変わらず夏紀姉ちゃんの微笑みは優しくて魅力的だ
「……あれ? 今、アキ入って無かったわよね?」
「ま、まあ秋姉は夏紀姉ちゃんの事なんか尊敬してないんじゃないかな〜って……」
「…………なんか?」
「…………あ」
今日の泣き顔
俺>>>>夏>>春>>>>母≧秋
つづけたい