第121話:夏の禁酒
20XX年、7月7日。佐藤家に衝撃が訪れた
「……お酒止めようかしら」
「ええっ!?」
「そ、そんな……。身体の調子が悪いの? お姉ちゃん」
「な、夏姉! 病院に行った方が良いよ!!」
「…………びっくり」
みんなでベランダから七夕の空を、まんじゅう食べながら見上げていた夜の事。飲んでいたワンカップ酒を置き、呟いた夏紀姉ちゃんの一言に、俺達は驚愕する
「あ、あんた達ねぇ」
「だ、だって、姉ちゃんから酒を取ったら、何も残らぁたたっいたたたたた!?」
ナツキの必殺、アイアンクロー!!
「……まったく。こっちは真面目に話をしているのよ」
姉ちゃんは呆れた風に呟き、アイアンクローを俺から解除してくれた
「ご、ごめん」
「もう良いわ。お酒止めるし」
「でも……どうして?」
心なしか秋姉も心配そうに尋ねると、夏紀姉ちゃんは、ぽつりぽつりと語り出す
「ちょっと前に大学の仲間と飲み会に行った時、ハメを外しすぎて」
「ハメを?」
「ええ。それで飲み過ぎちゃって、クラクラしている時に、あたしに言い寄る男が居てね、あたしは無視してたんだけど二次会の時に強引に連れ出されてさ、そこから先の記憶が曖昧なのよ。気付いたら――」
「き、気付いたら?」
ま、まさか……
「その男が道端で泣きながらあたしに土下座をしていたわ」
「…………え?」
聞き間違いか?
「それでその翌日、彼に改めて話を聞きに行ったのよ。そうしたら、彼、怯えながら昨日はすみません、もうしません、生きていてごめんなさいって平謝りしてきて……」
「…………」
「話を聞くどころか、二度と近付きません、同じ空気も吸いませんから許して下さいって事で終わったわ」
「…………へ~」
何もコメントできん
「それで……姉さんは大丈夫だったの?」
「ええ、何も無いわ」
「……そう。気をつけないと駄目だよ?」
「はい。心配掛けてごめんねアキ」
「…………」
「…………」
秋姉と姉ちゃんの深刻そうな会話に雪葉達は入っていけないらしい
「とにかくさ、そう言う事でお酒は今日で止め!」
「うん、でも良いことだと思うよ」
俺の被害も激減しそうだし
「そうだよな~。夏姉飲み過ぎだし、私達も心配してたんだよ。な、雪」
「うん。でも良かったぁ夏お姉ちゃんが病気になったら嫌だもん」
「うぅ、家族にもそんなに心配をさせていたなんて……」
姉ちゃんは、よよよと泣きまねをし、おもむろに立ちがって
「よし、今日で最後! 今日は秘蔵の酒、限界まで飲むわよ~」
と、高々に宣言しました
「ね、姉ちゃん?」
「はぁ……まんじゅう食べよ」
「お姉ちゃんって……」
「ん、…………だめだこりゃ」
今日の呆れ顔
俺>>秋>春≧雪>>>>>>>夏
つみれ