第116話:父の船旅
船は長い航海後、唐突に止まった
「つ、着いたのか?」
三日。三日と言う時間、僅かな水と、カビたパンだけを与えられ閉じ込められていた佐藤達は、今おかれた状況も忘れ、安堵の息を吐く
「……お、お水が欲しいよ」
掠れた声で、うわごとの様に呟いたのはミーシャだ。彼女は、この部屋で唯一の女性であり、最年少の少女である
「きっともうすぐ飲めるから、頑張るんだよ」
彼女に声を掛けたのは、優しい瞳をした日本人。彼は、この三日間自分が飲むべき筈の水を、約半分少女に与えていた
「サ、サトウ……ありがとう」
「けっ! さっさと死んでくれりゃ、そのガキの分、水が飲めたのによ」
二人を見て悪態をつくのは、元水夫のバッファード。彼は人より身体が大きいと言う理由で、他の者より多くの水や食料を奪っていた
「おい、そんな言い方は無いだろう! 彼女も仲間じゃないか!!」
憤るのは閉じ込められた五人の中で、もっとも元気だった男、スナフ。現役の軍人であり、真面目な男だ。彼のお陰で、辛うじて船の中の秩序が保たれていたと言っても良い
「くくく」
「なにが可笑しいのだ、ご老体!」
「なに、生き残ってしまった事の哀しみに、思わず笑みが零れてしまっただけさ」
その言葉に、部屋は静まり返る。彼等はこれから先、自分達に何が起きるか分かっていない。しかし――しかし、この老人の言う事が確かなら、これから待ち受ける物は、苦難を越えた地獄である
ギギギギギ
天井の端にある、入口が音を立て開く
「うっ!」
三日振りの強い太陽の光が、サトウ達の目を強く刺激した
「灰巌島へようこそ、薄汚い奴隷達。私達は君達を歓迎しよう」
男にしては高く、耳障りな声が、まばゆい光から響く
「そして誓おう。君達へ素晴らしい未来を与えると」
そして地獄が始まった
今日の船酔い
父>ミ>>老>バ>>>>ス
つづ……かなくてもよくね?