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秋の挑戦 2

トントントントン


リズミカルに鳴る音は、ブロッコリーやパセリを刻む包丁の音


ジュージュー鳴るのは、肉を焼くフライパンだ。香ばしい匂いが食欲をそそる


ここはキッチン、大魔境


勝負服である割烹着を着て、フランス料理に挑戦している秋姉


「頑張ろうね、秋姉」


「……うん」


サポートは料理本と俺


忙しい中、秋姉が俺達の為に作ってくれるのだ、反対など出来やしない


ならば俺は料理のフォローをし、食べれる物に仕上げる。それだけさ……


「ホワイトソース……ワイン、小麦粉、バター、牛乳…………唐辛子」


唐辛子!?


「あ、秋姉? ホワイトソース作るのに一味唐辛子は入れない方が良くない?」


「……ひと刺激」


「で、でもほら、初めての料理でしょ? 最初は基本に忠実な方が良いんじゃないかな?」


「ん。……そうかも」


秋姉は唐辛子の蓋を閉めて棚に置いた……と思ったら、返し手で!?


「ケ、ケチャ」


早いっ!!


秋姉の左手が閃光の様に煌めき、ホワイトソースは赤く染まった


「……基本はケチャップ」


なんで!?


「……しお」


秋姉は次に、ソースへぱっぱと軽く塩を振り


「……コショウ」


コショウを軽くかける。色はともかく、美味しそうだ


「……砂糖」


「砂糖……砂糖!?」


「……バルサミコ酢」


「バルサミコ酢!?」


「……イカスミ」


「イカスミ!?」


「……絶品」


「絶品!?」


電光石火な秋姉の手は、止める事すら叶わないって、なんでイカスミが家に……


「……完成」


ソースは甘生臭いと言う新境地を開拓し、完成してしまった


「す、凄い……」


鍋の中で暗黒が渦巻いている


「……次はカボチャ」


「あ、お、俺が用意しておくよ」


「ん……ありがとう」


今日のメニューは、サーロインステーキとカボチャのテリーヌ


バターで炒める甘いカボチャと、ガーリックと一緒に焼く香ばしいステーキ、そしてどんな味かするのかすら想像つかないホワイトソースをかけ、完成する究極の一品


「……私、お肉を見ているね」


「うん」


秋姉は、肉をひっくり返し、火を強める


……今のうちに、さっさとカボチャを作ってしまおう


「……ガーリックに敢えて混ぜようバルサミコ」


俳句!?


「あ、秋姉。春菜はシンプルな味を好むと思うんだ、だから今回はこれで終わりしよう?」


「…………ん」


ちょっと残念そうだが、秋姉は頷いてくれた


そして――


「完成!!」


で、出来た……ソースはアレだが、初めて秋姉の手から結構美味しそうな料理が誕生したぞ!!


思わず感涙を流す俺を、秋姉は不思議そうな顔で見つめ


「……あなたが手伝ってくれたから、凄く美味しそう」


と、微笑んでくれた


「……うん」

これで俺の役目は終わった。後は身を任せる、それだけさ……

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