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花の逆上がり 2

さて、なづなちゃんに連れられ、やって来ました二丁目公園


少し狭いが辛うじてサッカーも出来るグランドの奥に低い階段があり、その階段を上がった先に滑り台等の遊具が置いてある


「じゃ、行こうか」


「うん」


途中なづなちゃんに事情を聞いていたので、俺はそのまま奥を目指して歩く


「しかし鉄棒ねぇ」


「うん。お姉ちゃん唯一の弱点なんです」


「ふーん。お、やってるやってる」


「お姉ちゃ〜ん」


「え? なづな? 家に帰ったんじゃ……って何よ!」


「何んだよ!?」


なづなちゃんと一緒に近付く俺を見て、花梨はいきなり怒声をあげやがった


「な、何であんたがなづなと居るのよ!?」


「なづなが呼びました!」


褒めてって顔で花梨を見上げる、なづなちゃん。花梨は困り顔で俺となづなちゃんを見比べた


「……お姉ちゃん?」


「う……あ、ありがとうなづな」


「はい!」


花梨は、なづなちゃんには辛うじて笑顔を見せたが


「……で、何か用?」


俺には冷たい眼差しを向けて下さった


最近、こいつの態度が益々悪くなってるのは気のせいだろうか……


「逆上がり出来ないんだって?」


「う……な、なづなに聞いたの?」


「教えてやるよ」


「いらないわよ!」


「今度、テストあるんだろ?」


「うっ!? ……な、なづなぁ」


「チカンさんに教えてもらおうよ、お姉ちゃん」


「お、教えてもらえって言われても……」


「遠慮すんなよ」


「してないわよ!」


「よし。じゃ、やってみよう」


「頑張って、お姉ちゃん!」


「な、なづな……うぅ、なんでこんな事に……」


明らかに嫌そうだが、しぶしぶ花梨は鉄棒を握る


「よし行け!」


「煽らないでよ! …………えい!!」


ずさっと両足を斜め前に突き上げる花梨さん。これは逆上がりじゃなく、ドロップキックだ


「腕が伸び切ってるんだよ。後、足は斜めに蹴るんじゃなくて、頭上目指して蹴り上げる様にするんだ」


「こ、こう? ……えい!」


バランスを崩しながら、ずさっと右足を斜め前に突き上げる花梨さん。これでは逆上がりでじゃなく、南斗獄屠拳だ


「う〜ん、ちょっと変なんだよな。どれどれ」


お手本って事で花梨の隣にある、ちょっと高めの鉄棒の前へ行く


「よっと」


そして軽く逆上がり


「チカンさん、凄い!」


「で、出来て当たり前よね。大人だし……」


「はいはい。じゃ、やってみな」


「…………えい!」


ずさっと両足を斜め前に突き上げる花梨さん。これでは逆上がりじゃなく……ってしつこいか


「そうだな……先ずは補助するから、形を覚えよう」


花梨の後ろ横に立つ


「腕を縮めてな、こうやって腰を……」


「きゃ!? お、おしり触らないでよ!!」


「あのなぁ……じゃ足持つから鉄棒から手を絶対に離すなよ」


今度は前に回って、花梨の両足を支える


「行くぞ〜」


足を上げて鉄棒に腹を触れさせて……


「足はこう、んで腕は縮めたまま」


「う、う〜〜」


「そんで、ぐるんと!」


見事な一回転。逆上がり完成!


「どうだ?」


「…………出来た?」


感想を尋ねると、逆に尋ねて来た


「形にはなってたぞ。何となく分かったか?」


「……多分」


「よし、じゃあ行け!」


「う、うん……えいっ!」


腹を軸に、鉄棒をくるりと回る花梨さん


「おお! やったな、花梨!!」


そして流石、俺


「う、うん! 出来た!!」


「凄い! お姉ちゃんもチカンさんも凄い!!」


手を合わせ、三人できゃっきゃと喜んでいると、サイレンの音が聞こえた


「ん? パトカー?」


車は段々近付いて来て、公園の前で止まる。そして現れる組織の犬


「お、お巡りさん、あれです! あれが女の子をべたべた触っていた変態です!!」


「通報ありがとうございます! ……ん? あ、あいつは!?」


「…………俺、嫌な予感してきちゃったな」


また、いつものパターンか……


「き〜さ〜ま!!」


「じゃ、俺は帰るよ」


逃げる準備完了


「ありがとうございましたチカンさん!」


「……あ、ありがと」


「うむうむ。またな、二人とも」


そしてダッシュ!!


「ま、待て、変態がぁあああ!!」


「誰が待つかよ!」


そしていつものように始まるトムとジェリー。今日は距離があるので余裕だ


「あ! チカンさんがお巡りさんに追われてる! お巡りさ〜ん。チカンさんは、お姉ちゃんのおしりを触っただけで悪い事してませ〜〜ん」


「ち、ちょ、な、なづなぁ!!」


「…………」


「…………」


僕と彼との時が止まった


「…………あははは」

「き、貴様ぁあああ!」


「ひぃいい!?」


組織の犬、スピードアップ!!


ま、まずい。このままでは追い付かれる!


逃げながら携帯電話を取り出し、雪葉の携帯へピポパ


「はい、もしもし?」


「ゆ、雪葉! 作戦九、出来るか!?」


「お、お兄ちゃん!? う、うん大丈夫!」


「分かった! 今からそっちに向かう!!」


「はい!」


それから全力でひたすら走り、我が家の前へ


「ハァハァ、ハァハァ……つ、着いた!」


「ヒィ、フゥ……や、やっと諦めたか」


家の前で足を止めた俺に、ゆっくりと近付いてくる組織の犬。そして


「今度と言う今度は、ただじゃ済まさんぞ………………あ、あの、どいて頂けませんか?」


「……だめ」


その間に立つ秋姉!


「あ、貴女の後ろにいる男は歴史的ロリコン性犯罪者で!」


「…………誤解」


「で、ですが目撃者が」


「……呼んで」


「え?」


「……目撃した人。呼んで」


「う!」

「う!」


秋姉が怒っている!?


「そ、それは……」


「…………」


「そ、その……」


「………………」


「で、ですから」


「……………………」


「ほ、本官は職務に戻ります! し、失礼しました〜!!」


逃げて行く組織の犬。女神の勝利だ


「あ、ありがとう秋姉」


「ん。……もう大丈夫?」


「うん!」


「お兄ちゃ〜ん」


2階の窓から我が妹が手を振っている


「作戦成功だ、ありがとな雪葉!」


「えへ」


作戦九。それは禁断の最終奥義


【秋姉に助けてもらう!】





今日の眼力


秋>>>>>な>>>花>>俺≧雪


すずかけ台



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