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ある家庭の正月風景

「明けましておめでとうございます、お兄ちゃん!」


一月一日、元旦早朝。晴れ着姿の雪葉が、リビングで俺を向かい入れてくれた


「おめでとう雪葉。……え!?」


「……なによ」


リビングには、雪葉の他に俺の目が確かなら夏紀姉ちゃんっぽい人が、ソファーで偉そうに座っていた


「……徹夜?」


「…………」


無言で目を逸らす姉ちゃん。図星らしい


「まぁ、正月だし良いと思うけど……母ちゃん達は?」


「お母さんと秋お姉ちゃんは、ご近所さんにご挨拶だって。春お姉ちゃんはまだお部屋みたい」


「フムフム、なるほど」


二人ともマメだからな〜


「それにしても晴れ着姿が可愛いな、雪葉」


「えへへ」


「よーし、可愛い雪葉におじさんがお年玉をあげるからね〜」


「はい、おじさん!」


「……なんちゅー会話よ」


呆れる姉ちゃんを無視しつつ、雪葉にお年玉(千円)をあげていると、玄関が騒がしくなって来た


「ただいま〜」


「…………ただいま」


お、母ちゃん達が帰ってきた。出迎えよ〜っと


「お帰り、二人と…………も」


「ただいま〜」


「……ん。ただいま、恭介」


「は、は……」


「? はくしょん?」


秋姉は、着物の帯からハンカチを取り出し、俺の口許にそっと当てた


「あ、ありがとう。もう大丈夫だよ。それより……晴れ着?」


「ん。……どうかな?」


紺色の着物を着た姉が、俺に向かって優しく微笑む。もはやこれは


「全財産で!」


銀行から下ろして来ないと!!


「え?」


「え? あ、いや、違くて……めちゃくちゃ似合ってるよ秋姉!!」


美し過ぎる姉。ベストドレッサー賞を狙える逸材だ


「……ありがとう」


「良く似合ってるでしょ〜。母さんも頑張ったかいがあったわ〜」


「ナイス母ちゃん!」


年始から良い物を見れたぜ


「さあさあ、寒かったでしょう。リビングの方へどうぞ、どうぞ」


「は〜い」


「ん」


俺の誘導でリビングへ向かう母ちゃんと秋姉


「……あ、そうだ」

秋姉は、途中で足を止めて、俺にちょっと待っててと言って、自分の部屋へと入る


「なんだろ?」


「母さんリビングに一番乗り~」


疑問に思う俺を無視して、母ちゃんは嬉しそうにリビングへ入っていった



秋姉を待つ数十秒の時。それは短い様で長い、緊張の時間


秋姉は何故、俺を待たせたのだろうか……ま、まさか説教!?


『……去年、調子に乗りすぎ。今年は厳しく行くから』


「…………」


あれ? 以外と良くね?


「い、いや、秋姉はそんな事言わないな」


怒る時は怒るけど、その場、その時に怒るので、後になって怒ると言う事はない


と、なると……


『……恭介』


『なに、秋姉』


『着物、一人じゃ脱げない。……手伝ってくれるかな?』


「…………正月、最高」


かちゃ


そんな妄想を一人でしていると、ドアがゆっくりと開かれた


「…………待たせて、ごめんね」


「ぜ、ぜ~んぜん待ってないよ~」


妄想で時間潰していたとは言えない


「ん。……はい、お年玉」


そう言って秋姉は、俺にトラえもんの絵が描かれたお年玉袋を差し出す


「い、いいよ秋姉! そんなの貰えないって!!」


秋姉は剣道の道具や身の回りの物を買う為に、夏休みや冬休みにアルバイトをしている。秋姉の事だ、きっとこのお年玉もそこから出ているのだろう


「縁起物だから。……気にしたら駄目だよ?」


「で、でも……」


「……貰って欲しい。嫌……かな?」


寂しそうに微笑む秋姉


「は、はい! 不肖、佐藤 恭介、慎んでお年玉を頂戴致します!!」


どこぞの大統領に手渡されたとしても、此処まで緊張しないだろう震える手つきで、秋姉からの賜物を受け取りござりていざそうろう


「ありがとう、秋姉!」


「うん。……今年も宜しくお願いします」


「こ、こちらこそ宜しくお願いします!」


新年の挨拶をし終え、秋姉は着替える為、再び部屋へ戻って行った


俺もお年玉をしまう為に部屋へと戻る


「…………」

幾ら入っているのだろうか?


こういうのは、もちろん気持ちが一番だ。しかし気になってしまうのが人の性


俺は何故か部屋の隅に隠れ、恐る恐る袋を開けると……


「ふ、福沢諭吉先生!?」


暫くご無沙汰だった先生のお顔を拝見し、俺の心臓は高鳴る


「こ、こんな大金を秋姉は……」


家宝に取っておこう。ありがたや~、ありがたや~


などと拝んでいたら、突然部屋のドアがバーンっと乱暴に開かれた


「うわ!?」


「お年玉くれ~!」


開けたのは春菜。寝間着姿で、元気良く部屋に飛び込んできやがる


「ノックしろって、いつも言ってるだろ!」


「忘れてた。と、言う訳でお年玉くれ」


「お前ね……。普通、先ずは新年の挨拶が先だろう」


「明けましておめでとうな兄貴!」


「ああ、おめでとう」


「お年玉!」


「……はいはい」


三千円ぐらいで良いかな


「大切に使うんだぞ」


お年玉袋に三千円を入れて、春菜に渡す


「サンキュー! 勿論大切に使うぜ!! お年玉で歳明けにやる中華料理食べ放題に行くんだ~」


「…………」


ドンマイ、俺


「お雑煮食べる人~」


お年玉袋を、その場で開けようとする妹に、世間の常識を正座で語っていると、呑気な母ちゃんの声が聞こえてきた


「やった、雑炊! …………あ、兄貴~」


春菜は甘えた口調で俺を見上げる


「はいはい。分かった、分かった。雑炊食いに行こうぜ」


「ああ!」


元気良く立ち上がり、部屋を飛び出して行く春菜


「……まったく」


今年こそは春菜をきちんと教育せねば


心にそう決め、俺も雑炊を食べるべく立ち上がった



「恭介はお餅何個~」


リビングへ入ると、母ちゃんは直ぐに声を掛けて来た。台所からは死角になっていると言うのに、どうやって俺の存在に気付いたのだろうか


「1コン、2コン、サンコーン」


「は~い」


「…………」


「…………」


「…………」


「ん。座布団一枚」


一人を除く3人の姉妹達の、冷たい視線が俺を突き刺した


「す、すみませ」


「……秋姉は飽きねえ」


「え!?」

「え!?」

「え!?」

「え!?」


「…………駄目?」


残念そうに言う秋姉


「あ、え、ええっと……ね、姉ちゃん!」


「あ、あたし!? ざ、座布団三枚よ!! 山田君、持って来なさい!」


「は、ははぁ!! 直ちに~」


「三枚…………やった」


小さくガッツポーズ


「よ、よ~し、次は春菜君!」


「わ、私か!? う、うう~ん……も、餅を詰まらせて勿論即死!」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


流石に誰もフォロー出来なかった


それから大喜利大会をしつつ、雑炊を食べて、ノンビリみんなでテレビ


「う~ん。やっぱりお正月はノンビリ出来るわね~」


「……いつもノンビリな癖に」


「ああん?」


「な、なんでもないです」


俺は今年もこの姉に弱いままなのだろうか……


「元気だせよ兄貴」


「…………」


妹に慰められる兄。なんとも情けない話だ


今年こそは兄としての威厳を保ち、弟としての尊厳を守って……なんて思っていたら


「こら」


「お兄ちゃん」


「あーにき」


「……恭介」


てな感じで四人は俺を見て、


「今年も宜しく」


なんて言われてしまった


「……うん。宜しく」


ま、色々あるけど、今年も去年と同じように、みんなで楽しく暮らせれば良いやね


「……ちゃんちゃん」


「オチありがとう、秋姉」


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