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夏のダイエット 2

「走るコースだけど、商店街の方をぐるーっと廻って、中学校まで行った所で折り返すわよ」


ジャージに着替え、玄関を出た俺を待っていたのは、真っ赤に燃える灼熱の太陽と、やけに張り切ってる姉だった


「それじゃ準備体操しましょう。私と同じ様にやりなさい」


「はいよ」


準備体操は中々本格的なもので、足や腕、更には首や背中までも入念に解してゆく


「ストレッチに30分。走るのにも一時間。無理をしない有酸素運動である事が一番大事なのよ」

姉ちゃんは、足を閉じて身体を曲げる。額が膝上にピッタリと付き、気持ち悪い程の柔軟さを俺に見せた


「以外と身体柔らかいんだね、姉ちゃん」


「まね。毎日ストレッチだけはやっていたから……よっと」


最後に軽く身体を伸ばし、姉ちゃんは俺に向き直る


「じゃ、行くわよ。遅れずに着いて来なさい」


「はいはい。遅れたら何でも言う事を聞きますよ」


「あら、面白い。なら少しペースを上げるわ、着いて来れたらご褒美あげる」


そう言って姉ちゃんは、先に走り始めた


さて、こうして姉ちゃんとのランニングが始まった訳だが、姉ちゃんは一つ勘違いしている。俺が運動オンチだと思っているのだ


確かに春菜や秋姉には全く敵わないが、その二人のトレーニングを良く手伝っている俺は、体力には少し自信があるのだ


此処は一つ、ご褒美だとか偉そうな事を言っている姉に、吠え面でもかかせてやろう


そんな事を思いつつ5分程度走っていると、家の近くにある桜並木の道へと入る


この道は殆ど直線に出来ていて、およそ2キロ程続いている。その道筋に植えられた桜の木は百本近く。今は青々とした葉が木漏れ日と共に風に揺れている


「ふぅ。……もうすぐ本格的な夏ね、忌ま忌ましい」


夏紀の癖に夏が嫌いな姉が、ぽつりと呟く。そろそろ絡んで来そうだし、ペースを上げるか


「……ん? あら? 随分急ぎ足じゃない。まだ先は長いのよ?」


「大丈夫だよ、いつもこんなもんだから。あ、俺先に行くから、姉ちゃんは自分のペースを守って走りなよ」


むう、これはカッコイイな俺。もっと差を付ける為、もう少しペースを上げよう


「あ、あらそう。アタシもアンタに併せてペースを落としてたんだけど、そんな気遣いは要らないみたいね」


「なっ!?」


俺より更に早いペースで姉ちゃんは走り出した!


「さ、さ〜て、そろそろ俺も本気を出すかな〜」


それよりも更に更に早く走る!


「ハァ、ハァ、ハァ……ふふふ、や、やるわね。な、ならちょっとだけ本気見せてあげる!」


全力疾走!?


「あ、はは。さ、流石姉ちゃん。俺も頑張っちゃおうかな!」


全力疾走!!


「くっ!」


「ぬぅう!」


「くぅうう!!」


「ぬぅうううう!!」


くそ暑い空の下、ぶっ倒れるまで走りつづける姉と弟の妖怪がいる。そんな都市伝説が生まれた日



今日の脱水症状


俺≧夏


ツヅコデラックス




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