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雪の最終回 2

それから番組は続き、たいした情報も無いまま終盤を迎えた


「なんか最終回の割にはイマイチ盛り上がらないな」


「うん……残念」


しょんぼりとしてしまう雪葉。たく、何やってんだよN〇K!


受信料を払わされているNH〇に怒りを覚えていると、スタジオの照明が消え、お兄さんは床に座り込んだ


「さて……頃合いだな。そろそろマジに耳寄り情報を話してやろう。お兄ちゃんと仲良くなれる秘策、語ってやるよ」


「あ、これ! これが見たかったの!!」


雪葉の目に、輝きと真剣さが戻る


「きっと凄いためになる事だよ!」


「そっか。じゃ真剣に見てみるかな」


俺には関係無い情報だけど、雪葉が喜んでるなら俺も嬉しいぜ。俺達はテレビ画面に集中する


「……先ず兄をお兄ちゃんと呼んでる奴、お兄さんと呼んでみろ」


「……は?」


「え? ……お兄さん。これで良いのかな?」


「甘い声で、囁く様に呼ぶんだ」


「……お兄さん」


「上目使いを忘れるな!」


「お、お兄さん……こ、こう?」


「耳に軽く息を吹き掛けろ!!」


「ふ〜」


「うひゃ!?」


「これで君はキャバクラで人気者!」


「アホか!?」


何の情報だよ!


「……キャバクラ?」


「い、居酒屋の様な物だよ。それにしても……」


この番組もう駄目だな。終了になった理由も分かる


「チャンネル変えても良いか?」


確か6チャンで時代劇があったよな


「……うん。いいよ、お兄ちゃん」


まだ少し未練がありそうだ。残り五分か……


「やっぱこのまま見てよう」


「うん!」


ふ、可愛い奴め


「はっ! どうやら冗談が過ぎた様だな、抗議の電話が凄いぜ。……テメェらは、とうとう俺を本気にさせた。次はマジだせぇ」


「お兄ちゃん、お兄さんが真剣だよ!」


「……ああ、どうやらいよいよ奴もマジらしい」


俺には分かる。今のお兄さんは餓えた野獣だ


「……今、お兄ちゃんが側に居る奴。今すぐ体育座りをしてもらえ!」


「え? ……お、お兄ちゃん、お願いしても良い?」


「あ、ああ」


「そしたらマタを開いて貰え」


「…………」


「……お兄ちゃん」


「わ、分かったよ」


意味が分からないが、訴えかける雪葉の目には逆らえない


「出来たな……。そうしたら、その間にスッポリ入るんだ!」


「こ、こう?」


雪葉は俺の間にスッポリ入った


「ラストだ! お兄ちゃんの顔を見上げながら下記のテロップを読みやがれ!」


「え、えっと……。お兄ちゃんの事なんて好きじゃ無いんだからね!」


「…………」


プチ。俺は無言でテレビを消す


「…………お、お兄ちゃん?」


「……俺は今の雪葉が大好きだぞ」


変な番組に染まらないで欲しい


「う、うん! 雪葉もお兄ちゃんが大好き!」


「ありがとな。しかし……うむ〜」


なんだかんだ言って、見る前より仲が良くなった気がする。まさかこれを狙って?


「……最後まで見てみるか」


昔は雪葉と一緒に楽しんだ番組の最終回だ。その最後を見てやろう


ノスタルジックな気分でテレビをつけると……


「オラァ! 負け犬はさっさと消えろよコラァ!」


「ひ、ひぃ〜」


お兄さんよりも若いお兄さんが、お兄さんを蹴って番組の隅に追い払っていた!


「たく、これだからロートルはよ。……あ、良い子のみんな、こ〜んにちは〜。来週からこの時間は僕が【弟と仲良くする千の方法】を紹介していくよ!」


「…………」


「…………」


急展開する内容についていけず、俺達はテレビを見たまま固まってしまう


「弟って良いよね〜。僕大好き! 弟、おっとうと、おっとっと〜」


わ〜


歌う新お兄さんの元に先程の子供達が集まって来る。途中、隅にいる旧お兄さんを蹴っ飛ばす子供もいた


「それじゃ、来週から宜しくね〜」


ボクたちワタシたちは、あたらしいおにいさんがだいすき〜!


そして番組はフェードアウトし、次の番組に……


「……何この後味悪さ」


「……ごめんね、お兄ちゃん。雪葉が見たいなんて言わなければ良かったのに」


「気にすんな。楽しかったぞ」


「……うん」


こうして数年に渡って放送されたこの番組は、俺達兄妹に気まずさと苦い思い出を刻みつつ、無事に終了したのであった



今日の後悔


雪>俺>>>>>>>>>>>>>>>春


津田の松原




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