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第106話:雪の最終回

「……お兄ちゃん」


「ああ……」


水曜日の夕方。俺達は頷き合い、テレビをつける


「いよいよか」


「うん……」


これから始まる番組は雪葉がまだ小さい頃、良く一緒に見ていたものだ。十年を越える長寿番組だったのだが、遂に今日最終回を迎える


「始まったな」


前番組が終わり、テレビにはランニングシャツ姿の爽やかなお兄さん? が現れた


「良い子のみんな〜」


明るく元気な声で子供達に呼び掛けるお兄さん。優しい笑顔が素晴らしい


「集ま……りやがれぇええ!!」


しかしお兄さんの表情は一変し、鬼の形相となった!


「今日で最終回だ。良いかお前ら、これから先は瞬き一つ許されねぇぞ! それじゃオープニング行くぜ、わっしょい!」


わっしょい、わっしょい!


わっしょい、わっしょい!!


音頭に合わせて子供達が踊り狂う。それはまるで地獄に住まう餓鬼


「お兄ちゃんの『お』は大きいのお!」


はぁはぁ……、おおきいのお!


息を切らした子供達が一心不乱に復唱する。某宗教団体を連想させる光景だ


「お兄ちゃんの『に』は人間離れ!」


にんげんばなれ!


「お兄ちゃんの……飛んで『や』は、やんのかこら!?」


やんのかコラ!?


「ん? 拳で語りたいのかい? 良いぜ、俺はノーガードだ! ほら殴りなさいよ、殴ったらいいじゃない!!」


「……相変わらず変な番組だよなこれ」


「でもお兄ちゃんを持つ妹としては見逃せない情報が満載なの。雪葉もこの番組には随分お世話になったなぁ」


俺の妹は、どこか遠くを見ながらそう言った


「んじゃそろそろ始めっか! 何度も言うが今日は最終回だ……。取って置きの情報をテメェらにくれてやるぜ!!」


【週間、お兄ちゃんニュース】


テロップが流れた後、お兄さんはニューススタジオに似せた場所へと移動した


「では最初のニュースです。え〜本日、仕事を干される事になったお兄さんですが、次の仕事がありません。どうしたら良いでしょうか?」


「知らないよ」


「ハローワークに行けば良いと思うの」


「……雪葉はいい子だねぇ」


ハローワークを知っている小学生……か


「それだけ世の中が不景気ってことかな」


辛い世の中になるかも知れないけど、頑張るんだよ雪葉


「さて、次のニュースです。お兄さんが付き合っていた女の子が、仕事の無いお兄さんを見限って他の男と付き合い始めました。どうしたら良いでしょうか?」


「知らないよ」


「諦めたら良いと思うの」


「……バッサリだねぇ」


結構、恋愛にはシビアな性格なのだろうか?


「あ〜! ウゼェ!! 女もガキもスタッフもみんなウゼェんだよ! だけど一番ウゼェのは俺自身だ〜あははははは!! ……殺せ! いっそ殺してくれぇええ!!」


「…………」


「…………」


「もう何もかもが嫌になった。……そうだ京都に行こう。京都〜大原三千院ってガキには分かんねぇだろ〜! バ〜カ」


「……チャンネル変えても良いか?」


「ま、待って、お兄ちゃん。きっともうすぐ耳寄りなお兄ちゃん情報が入るから……多分」


「う〜ん」


なんとも微妙だが、もう少し見てみっか




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