秋の親友 3
「す、すまない、待たせてしまった!」
お互いに年齢詐称を疑って牽制していると、燕が戻って来た
「お、来た来た。じゃそろそろ行くとするか、春菜も限界だろうし」
「その春菜さんなのですが、先程から凄い目で佐藤君を見てますよ?」
「え?」
「グルルルルル!」
ま、まずい! 奴が飢えはじめている!!
「め、飯行くぜ〜!」
「おっしゃー!」
ごまかす俺の声に、春菜はガッツポーズで喜ぶ
「よし行くよ、夏紀姉ちゃん達!」
「たく、待たせるんじゃないわよ」
ぶつぶつ文句を言いながら、姉ちゃん達は俺の側に来る
「駅デパの和食バイキングで良い?」
自分で金を出してくれるだろうか……
「どこでも良いわよ。……あ〜、こっちはこっちで出すから」
俺の訴えかける瞳が効いたのか、姉ちゃんは呆れた溜息と共にそう言って下さった
「あ、ありがとうございます」
てなると、俺が払わなくてはならないのは春菜、燕、綾さん、ゆかな、桜って子、春菜の友達二人、秋姉、そして俺
確か食い放題で一人二千円だったから……一万八千円!?
きつい……これはきついぞ〜!!
「……お金の事は心配しないで」
マネーの事で苦悩していると、それに気付いたのか秋姉は俺の耳元に寄って小声で優しく言った
「だ、駄目だよ。いつも頼りっぱなしじゃ情けないから、今日は俺に任せて」
「……男の子だね」
ニコッと笑う秋姉。この笑顔だけで俺は、三百万の借金を背負える
「兄貴まだ〜」
「あ、ああ、悪い悪い。もうちょっと待ってくれな」
「う〜。まだかよ〜」
春菜は悲しそうな顔をし、座り込んでしまった
「すぐ行くから……あ、そうだ。ゆかな」
「なんでしょう?」
「今、何か食い物持ってるか?」
俺の記憶が確かなら、いつも飴とかを持っていた筈だ
「はい、キャラメルがあります」
「一粒貰えるか?」
「ええ、構いません」
「サンキュー」
ゆかなに近付き、キャラメルを一粒貰って春菜の元へ
「……鳥。唐揚げ……焼鳥……丸焼き」
「鳩見ながら怖い事言ってないで、これ食って我慢しろ」
「キャラメルかよ〜。これ食っても腹の足しにならないんだよな〜」
ぶつくさ言いつつ、結局食べる春菜さん
「あ、メロン味だ。……へへ」
少し機嫌が良くなり、ほっと一安心ってか単純過ぎて逆に心配だな
「じゃ、皆さん行きますよ〜」
準備が出来た所で、集団の先頭に立ち、皆を旅行コンダクタの様に誘導する俺
雪葉も呼べは良かったかな
「……呼ぶか」
この際だ、破産してしまえ!
「今日はヤケクソで食いまくるぜ! 春菜、勝負だ!!」
「おー!!」
それから俺達は大人数で食事に行き、トラブルに見舞われるのだが、それはまた別の機会に語りましょう……
「……ちゃんちゃん」
「さ、流石に今回はそれじゃオチないと思うよ、秋姉」
「…………残念」
気に入ってたんだ……よし!
「ど、どっか〜ん!」
俺の渾身の盛り上げギャグに、秋姉は驚いた顔をして
「……ん、頑張ったね」
よしよしと頭を撫でてくれた……
「……ごめんなさい」
今日の食事量
春>>俺>>>>夏>雪>秋>>燕
おまけ
「あれ? あんまり食ってないじゃんか。今も温泉卵なんか食ってるし……食欲無いのか?」
「え? あ、いや、そんな事はないぞ、美味しく頂いている。ただ……久しぶりだと思ってな」
「久しぶり?」
「……うむ」
「燕?」
「……やっぱり私は君が好きだよ、恭介」
「そうか。俺は――」
「あ、いや、返事は良いんだ! す、すまない、今のは不意打ちだった! なんでもない、なんでもないのだ〜!」
「は? え〜っと……俺は白身の方が好きなんだけど……変か?」
「…………馬鹿っ!」
「なんで!?」
つるべ