秋の親友 2
燕と秋姉の間にあった壁が無くなり、ホッとした空気が辺りに流れる
今のうちに紹介しておくかな
「綾さん。綾さんの事をみんなに紹介しても良いですか?」
「はい、紹介して頂けますと嬉しいです」
「では……秋姉〜」
先ずは一番近くに居る二人の所へ行く
「あ……こんにちは、徳永さん」
「はい、こんにちは。秋さん」
挨拶をしあう秋姉と綾さんを、燕はきょとんと見ている
「燕、紹介するよ。こちらは綾さん」
「徳永 綾音です。宜しくお願いします」
「ご丁寧にありがとうございます。私は菊水 燕と申します」
燕はお辞儀をし、軽く微笑する。こういう所はやっぱりお嬢様っぽいな
「秋さんや恭介君とは、友人としてのお付き合いをさせて頂いてます」
「私は佐藤君の内縁の妻としてお付き合いをしています」
シレッとした表情で言うから綾さんは恐ろしい
「なるほ……つ、妻!? え? そ、そんな、だって……」
燕は絶句し、唖然と立ち尽くす
「あ、いや、違うぞ?」
と、否定してみたが、燕の表情は変わらない
「つ、燕?」
「……驚きの余り取り乱してしまい申し訳ございません、醜態を晒した事お許し下さい。徳永さん、彼は素晴らしい男性です。き、きっと貴女を幸せに……」
燕の目から大粒の涙が、ぽろぽろとこぼれ落ちる
「幸せにしてくれる筈です。……おめでとう、恭介」
涙で崩れた顔に無理矢理笑顔を作り、燕は俺達に祝辞をって
「ち、違うから! 少し考えれば分かるだろ!」
「そ、そうですよ、冗談です。結婚なんてしませんよ」
「ぐす、ぐす…………冗談?」
燕は濡れた目で、心細げに俺達を見る。まるで捨てられた子犬の様だ
「そ、そう! ドッキリ大成功〜。だ、騙されただろ〜」
「…………うん」
燕は、コクンと頷き
「びっくりしたぞ」
目元を指で拭い、微笑んだ。……罪悪感が凄いなこれ
「つまらない冗談を言ってしまいました。すみません」
珍しく、と言うか俺が知る限り初めて綾さんが真剣に頭を下げる
「い、いいえ、こちらこそ変に驚いてしまいました、お気になさらないで下さい。……あ、目にゴミが入ってしまったようです。少し洗顔して来ます」
そう言って燕は駅の方へ向かって行った
「……悪い冗談は駄目だよ?」
側で心配そうに見ていた秋姉が、燕が居なくなったのを見計らって俺達に注意をする
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
なんで俺も謝ってるのか分からないが、とにかく綾さんと一緒に反省
「……うん。私、姉さんと話して来るね」
「行ってらっしゃい」
華麗なる姉は、俺達の側から美しく去って行く
「……怖い訳では無いのですが、何だか逆らえませんね」
「それが俺の姉です」
もう一人の方も別の意味で逆らえない
「ところで……菊水さんは佐藤君の事が好きなんですね」
「どうなんでしょう。一度フラれてますからね」
あれはきつかった……
「佐藤君は、菊水さんの事好きですか?」
「ええ、好きですよ。ただ、恋人にって感覚では無い気がします」
近いのは親友かな?
「私の事は……好き?」
「え!? い、いや、好きって言うか、何て言うか……」
「嫌い?」
「い、いいえ! もちろん嫌いじゃ無いですよ。だ、だけど」
「なら……抱いて!」
「えええ!?」
な、なんだこの東京ラブストーリーは! これが噂のモテ期って奴か!?
「と言う、泥沼を希望します」
「おぃい!!」
「ラストは刺される感じで」
「アンタ、俺の事嫌いでしょ!?」
「好きですよ」
「ええ!?」
「友達ですもん」
そう言って微笑んだ後、背を向けて俺から離れる綾さん。その仕種が妙に格好良く、何だか少し悔しくなる
「恭介っ!」
そして綾さんは突然振り返り、
「セックスしよ!」
「鈴木保奈美!?」
「ボケておいてなんですが……佐藤君、歳幾つです?」
「……そちらこそ」