春の合コン 11
「それじゃ、行こうぜ」
バイトの服を返却し、春菜とその友達二人、それと綾さん達と共に店を出る。因みに利用料金はバイトしたって事で無料にしてもらったんだけど、大して働いてない気がするが……
「…………いかねぇ」
「圭一?」
「やっぱ絶対に納得いかねぇよ! 俺らもついて行くぞ!!」
圭一達はそう言い、どん引きしている二人の友人を引き連れて俺達の後を追って来た
「……意外に頑張りますね。あれはもう春菜さん云々より、佐藤君に負けた事が許せないんでしょうね」
綾さんはそう言い、振り返る
「……では勝負してみますか圭一君。それで負けたら二度春菜さん達に付き纏わない様にして下さい」
「……分かった。俺が勝ったら春菜ちゃん達は俺らと昼飯だからな」
「ち、ちょっと」
「兄貴は負けねーよ! な、兄貴!!」
「あのなぁ……」
話は俺を置いて、どんどん進んで行く
「後腐れ無い様に、此処で断ち切りましょう。大丈夫です、どんな勝負でも佐藤君が勝ちます」
なんだか分からないが、凄い自信だ
「それで、勝負方法はどうします? 明らかに不利なもので無い限り、なんでも受けますよ」
「勝負内容は――」
【女友達対決】
制限時間は一時間。より多く女性を連れて来た方が勝ち
「…………」
「アンタ伝説なんだろ? これなら不利にはならないんだろ?」
圭一は、伝説など全く信じてない口調で、そう言った
「…………」
「頑張れ兄貴っ!」
勝ったら飯代自腹。負けたら春菜の危機と、勝っても負けても俺に利益が無い。一体何故こんな事になってしまったのだろうか……
「聞いてんのかよ!」
「……ああ」
ええと、夏紀姉ちゃんに秋姉だろ。後は雪葉……あれ? 呼べる女の子が家族しか居なくね?
「……ふ、ふふ。ふふふふふ」
「っ!? な、なんだ? この自信ありげな笑みは……ま、まさかあの伝説は真実?」
どんな伝説なのか気になるな
「と、とにかく始めるからな! 純、合図!!」
「本当にやるのか…………では、対決始め」
合図と共に圭一は携帯を取り出しながら、何処かへと走って行く
「…………」
「大丈夫ですよ佐藤君。私、誰か呼んで来ますから」
「あ、ありがとうございます……」
しかし俺の話だと言うのに、今日は綾さんに頼りっぱなしだ。これでは情けない
「俺も……俺も頑張ってみます!」
「はい。頑張りましょうね」
俺は綾さんやみんなと少し離れ、携帯を取り出す
「先ずは……」
登録番号666
トゥルルル。トゥルルル
ガチャ
「…………」
「ね、姉ちゃん?」
「……なによ」
「うっ」
この声は、寝起きで超機嫌が悪い時。だが、躊躇している場合じゃ無い!
「ね、姉ちゃ……お姉ちゃん!!」
「きゃ!? ……な、なによ!!」
「助けて!」
「助けてって……どうしたの!?」
「今すぐカラオケショップ本能寺に、姉ちゃんの女友達を何人か連れて来て下さい!」
「はぁ?」
「頼んだよ!」
「ち、ちょっ待」
電話を切って、すかさず着信拒否
「…………」
後の事が恐すぎるが、今はただ来てくれる事だけを祈ろう
「次は……」
秋姉か。朝は出掛けて居なかったけど、今日は部活無い筈だから、もしかしたら来てくれるかも
「…………」
夏紀姉ちゃんの時も緊張したが、今度は更に緊張してしまう。なんか変なもん吐きそうだ
「ええい、ままよ!」
勢いに任せ、電話帳の1番最初に登録してある秋姉の番号へ
ガチャ
「……あ、あの。もしもし秋姉?」
「……うん。どうかしたの?」
「え、えっと……」
「?」
「た、助けて」
「えっ?」
「助けて秋姉!」
「き、恭介? ……うん分かった。私、どうすれば良い?」
秋姉は理由を聞かず、直ぐに承諾してくれた。ごめんよ、秋姉……
「カラオケショップ本能寺知ってる?」
「うん」
「その店の前に来て欲しいんだ」
「ん、分かった。急いで行くから。……それまで待てる?」
「う、うん……大丈夫」
「……ん。急ぐ」
罪悪感に苛まれ、友達も連れて来いなんて言えそうもない
「じ、じゃあ後でね!」
「あ、恭」
ツーツー
「…………」
後で土下座しよう
「……そして」
もう一人だが、雪葉……と言う訳にはいかないだろう。となると
「…………これか」
あいつの誕生日に因んだ数字、224番
「…………よし!」
俺は携帯のボタンを押した