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第18話:雪の不機嫌

その日は朝から変だった


「いただきまーす」


「飯だ飯だ〜」


「ん……いただきます」


「………………」


いつものように母ちゃんと夏紀姉ちゃんを抜いた4人で朝食を食べていると、雪葉の様子がおかしい事に気付く


「どうした、雪葉? 食欲無いのか?」


「……うん」


雪葉は囁く様に呟いて、下を向く


「雪葉……」


「……春お姉ちゃん、雪葉のご飯食べてくれる?」


「へ? 良いけど?」


「ありがとぉ……ごちそうさま……」


雪葉はリビングを出て行く


「どうしたんだろ、雪葉」


「さぁ? 腹でも減ってんじゃないの?」


駄目だコイツ


「…………心配」


「そうだな、秋姉」


秋姉はコクンと頷き、朝食の雪葉が出て行ったドアを交互に見る


「秋姉?」


「…………食べて?」


「いや、雪葉とは俺が後で話するから秋姉はちゃんと食べなよ」


「…………でも」


「ほ、ほら二人とも大人しいし、上手く話せないかも知れないだろ? 此処は歳が近い俺に任せて」


秋姉と雪葉じゃ下手をすると無言大会に成り兼ねない


「…………はい」


秋姉はガックリと肩を落としてしまった


「あ、べ、別に秋姉が悪い訳じゃないからね! ごちそうさま!!」


急いで食べ、俺は気まずいリビングを脱出する


春菜ならどんな空気の中でも、多分大丈夫だろう


「おかわり~」


春菜スゲー!!


春菜をコッソリ尊敬し、俺は雪葉の部屋へと行く


コンコン、コン、ココン


リズミカルなノックだぜ


「…………ふぁい」


少し篭った声の後、ドアが開く


「…………お兄ひゃん」


ひゃん?


「……入っても良いか、雪葉?」


「…………うん」


雪葉は俺を部屋に入れ、直ぐにベットで俯せになった


夏紀姉ちゃんならともかく雪葉のこういう態度は珍しい


「……大丈夫か? 雪葉」


「……………」


「雪葉。何があったのか分からないけれど、一人で全部を抱えこまなくて良いんだぜ? 例えそれがどんな事でも、兄ちゃん受け入れるから……」


「…………」


「言いたくないのか? ……分かった、なら待ってやる。んで、どんな時でも側に居てやる。……だから頑張れよ雪葉。頑張っても駄目な時は、いつでも兄ちゃんに頼ってくれよな」


「…………」


「じゃ、また後でな」


「………にぃ……」


「ん?」


「お、おにぃ……ちゃん」


体を起こし、顔を上げた雪葉の顔は涙でぐしゃぐしゃだった


これは大変な悩みを抱えているな……


「雪葉」


俺は雪葉の隣に座り、肩を抱く


細く小さい肩だ。こんな肩にどれだけの悩みを……


「どうした、雪葉?」


「はが……ひっく…はが」


「はが?」


「歯が痛い……」


…………歯かよ


「…………そ、そうか。大変? だな」


「起きた時からずっと、ずっと痛くて、ご飯も食べれなくて」


しゃくりあげる雪葉の背中をさすりながら、涙と鼻水を拭いてやる


「だからって、泣き過ぎだぞ雪葉」


「お兄ちゃんのせい! あつ!?」


雪葉は右の頬を押さえる


「どれ、口開けてみな」


「あ〜」


「…………右の歯か?」


「あう」


雪葉はコックリと頷く


「下か?」


「うあ」


「上か」


「あう」


「…………ふむ。ちょっと穴空いてるかもな」


つーか暗くていまいち分からねー


「口閉じていいぞ」


「うん…………」


雪葉は、再び頬を押さえる


「それぐらい痛いって事は結構悪くなってるかもな」


「ええ!?」


「驚くとこか? 今」


「ど、どうしよう、お兄ちゃ~ん」


「どうしようってお前。歯医者だろ」


「………………」


「歯医者だろ」


「………………」


「いや、歯医者だろ?」


「あ、お兄ちゃん! フーフーだよ、フーフー!」


「はい?」


「怪我をした時にやってくれるやつ!」


そう言って雪葉は再び口を大きく開ける


「……お前」


何か色々心配になるじゃないか……


「……おにーひゃん?」


「…………いや、歯医者」


「もうっ! 歯医者、歯医者って! お兄ちゃんは歯医者の回し者なの!?」


「い、いや、お前、歯痛でちょっとおかしくなってきてないか?」


頭とか


「歯医者に行ったからって治るとは限らないでしょ! 雪葉は歯医者なんて信じない!! 人は裏切る生き物なの! 弱肉で強食なんだから!!」


雪葉は再び、ベットで俯せになる。完全にヘソを曲げてしまったようだ


「…………お、お前が欲しがってた筆記用具、買ってやろうか?」


ぴくんと雪葉の体が動く


「服も買ってやろうかな」


再びぴくんと動く雪葉。海老みてーだ


「歯、治ったら駅前のカフェでパフェを一緒に食おうぜ」


雪葉はこちらを見て様子を伺っている。仲間にするまで後、一息だ


「す、水族館行こうぜ! んで、その帰りにファミレスだ!」


「……………………いく」


「お?」


「…………歯医者行く」


「よっしゃ!!」


雪葉が仲間になった

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