春の合コン 2
「…………」
まだ携帯の電話帳に残っていた、この番号。掛けるのは、少し躊躇われるが……
「…………」
よし! 掛けるか!
トゥルルルと何度かコール音が鳴り、
ガチャ
「も、もしもし! 何事だ!?」
いや、そっちこそ何事だって感じだが……
「燕? 恭介だけど……突然連絡なんかして、ごめんな」
「い、いや、良いんだ。丁度、時間が空いていた頃だったし……」
大変です生徒会長! 奴がまた暴れ出しました!
生徒会長〜。理事長の裏金発覚です〜
た、助けて下さい会長! 豚が、豚が〜!!
「…………また後にしようか?」
「い、いや、問題は無い! ゆかな、後は頼んだぞ!!」
ち、ちょっと、燕~!
電話越しに聞こえる悲鳴や、物音。どうやら燕はその場所から走って逃げ出しているらしい
なんだか知らんが、えらい時に電話をしてしまったようだ
「ハァハァ、ハァハァ……ん。……フウ」
「……大丈夫か?」
「う、うむ、問題ない。……それで、どうしたのだ、電話などしてきて」
「あ、ああ……えっと、燕に聞きたい事があってさ」
「私に? なんだろうか」
「燕と同じ二年らしいんだけど、柳田 圭一って奴、知ってるか?」
「柳田……。ああ、サッカー部の部長に選ばれた者だな。この間、顔を見合わせた」
「どんな奴か知ってる?」
「余り話した事が無いので、答えられんな」
「そうか……」
残念だ
「う……だ、だが、噂レベルで良ければ多少は耳に入っているぞ!」
「本当か!? それで構わないから聞かせてくれないか?」
普通の奴だったら良し。合コンに着いて行くなんて不粋な事はしないさ
「構わないが、あくまで又聞きだぞ。それで全てを判断するような事はしないで欲しい」
「分かってるよ」
「うむ。では話そう」
柳田 圭一。明るく社交的で、家柄も良く、本人も中々の偉丈夫な為、女生徒の人気も高かった
しかし、一方で女癖の悪さも目立つ。それがばれてしまって、今は余り女生徒に相手にされなくなってしまったが、過去二年の間に付き合った女性の数は、十人を越えているらしい
「と、こんな所か」
「じ、十人以上……」
なんて羨ま……いや!
「多過ぎだろ、それ!」
「うむ。本当だとしたら付き合うな、とは言わないが、少々節操が無いな。大体一月、二月交際しただけでは相手の事など理解しきれないだろうに。……私など今だに分からない事の方が多い」
「ん? 今、誰かと付き合ってるのか?」
「君のそういう所が分からないのだ!」
「す、すまん」
迫力に負け、つい謝ってしまう
「……しかし、こんな事で連絡してきたのか。喜んで損をした気分だよ」
「……ごめんな」
多分、忙しいってのに余計な時間を取らせてしまった
「あ、べ、別に責めてる訳ではないのだぞ? 少し驚いてしまっただけなんだ。本当は……嬉しい」
「何が?」
「……なんでもない」
「そ、そうか…」
なんかとんでもなく空気読んでない気がしてきた
「では失礼するが、また何かあれば……。無くても構わない、好きな時に連絡をしてほしい」
「ああ、ありがとう」
「うむ。では」
「ああ」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
「……さ、先に切ってはくれないだろうか?」
「あ、そう? じゃ、またな」
「う、うん……また」
ガチャ。ツーツー
「うむ~」
なんか緊張したぜ
しかしこれは……
「動かなくてはならない様だな」
兄として!