俺の父兄参観 7
休み時間は終わり、算数の時間。教える人はさっきと同じ、青山先生
「A子さんには18人子供がいました。そんな大家族の元に、田舎から36個のリンゴと1620個のミカン、そして9個の梨が届きました。さて、全員にリンゴとミカンと梨を行き渡らすには、リンゴと梨をどのように配れば良いでしょうか?」
「…………」
結構難しいな。つかミカン多過ぎ。そしてA子さん、産みすぎ
「はい!」
最初に手を挙げたのは、またしても花梨だった
「お、早いな〜霧島。じゃ前で頼む」
「はい」
「花梨ちゃん、頑張れ〜」
小さい声で、応援する香苗さん。なんか期待する目で俺を見てるんですけど……
「が、頑張れ花梨〜」
「愛してるぞ」
「愛してるぞ〜って何言わせるんですか!?」
びくっ。花梨の身体が軽く跳ね、チョークの文字が乱れる
「ん? ……うお!?」
一瞬雪葉が首だけをこちらに回し、俺を見た…………超笑顔で!
「後で覚悟してね、お兄ちゃんって所かしら〜」
「訳さないで良いよ!」
怖いっての!!
それから雪葉も問題を答えつつ、授業は何事もなく終わって再び休み時間
休み時間では、奥様達が子供達について話している
「霧島さんのお嬢さんはほんと優秀だわ」
「なに、うちの子も結構やるもんさ!」
「しかし一番可愛いのは雪葉だな。あの可愛さは、もはや犯罪だろう」
奥様方の会話に混ざってみる
「そうねぇ、確かに雪葉ちゃん可愛いわねぇ。でもうちの子には敵わないわ!」
「ちょっとお待ち! うちの美月だって負けてないよ!!」
「いんや! うちの子が一番!!」
「一番はうちの子よ!」
「うちだ、うちだ!」
「いや、うちだ〜」
第一次、奥様戦争勃発
「子供達の前で不毛な争いは止めましょ〜」
母ちゃんが、のんびりやんわりと争いを止めた
「うちのが最高だって言ってんだろうが!」
「あ? ふざけた事言ってないで、養豚場に帰れよブタ」
「うふふ……テメェら、みんな細切れだよぉ」
しかし戦火は広がり、教室内は90年代のマガ〇ンみたいな世界になってしまう
最初は気にして無かった子供達も、今は不安げに自分達の親を見ている
……この戦争を止める事が出来れば、俺は失ったであろう名誉を挽回出来るのでは?
よし!
「みなさん、落ち着いて下さい! こんな言い争い、良くありません! 僕達は、僕達は同じ子供を持つ、いわば仲間じゃないですか! そんな僕らが何故憎しみ合わなければならないのです! そんな風に憎しみ合う親達を、子供達はどう思うか、考えた事はありますか? 僕はそれを思うとこの胸が張り裂けそうです!!」
俺の魂の叫びに、教室内は静まり返った
「……そうね。ごめんなさい、田中さん」
「い、いや、あたしも悪かったよ! ごめんね」
奥様達はうなだれ、一様に反省の色を見せる。どうやら止める事が出来たらしい
「荒れ狂う獣達を、覇気で抑えおったか……流石は佐藤家の若き獅子よ」
「お、お兄ちゃん……カッコイイ!」
俺を見る雪葉の目が輝いている。ふ、その輝きが俺のダイヤモンドさ
「き、恭介クン……」
香苗さんは、ワナワナと震え……
「結婚して!」
首に抱き着いて来た!?
「な、な、なな!?!」
「あ、花梨ちゃんとだよ?」
「なっ!? ママ!!」
ギラン!
「ひぃ!?」
雪葉の目が、さっきより強く輝く。抜き身の日本刀に近い冷たい輝きだ
「駄目! 兄ちゃんは私と結婚するんだ!!」
「ふげ!?」
美月が勢い良く立ち上がって、そのまま俺の腹にタックル!
「……ふふ。せっかくだし、僕も便乗させてもらうよ?」
「こ、こら!」
風子は、ゆっくりと近寄り、ギュッと俺の右腕に抱き着いた
「ち、ちょっと! そ、そいつは、あ、あたしのでしょ!?」
「うお!?」
ドカドカ向かって来た花梨は、俺の左腕を引っ張る
「お、おに……お兄ちゃんは雪葉だけのお兄ちゃん!」
そう言って妹は俺に向かって駆け寄り……
「って、ちょっと待て! こ、このパターンは、まさか!」
あの王道の!
「あっ!」
やっぱり躓いた! そんで慌てて目の前にある俺のアレを掴……
「ぎゃー!!」
今日のアイアンクロー
雪
続きましょう