俺の父兄参観 2
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「あれぇ? みんなどうしたの?」
教室に居た誰もが、一言も喋れず凍り付く中、恐ろしい発言をした本人が、首を傾げながら不思議そうに言う
「ま、麻奈美、ア、アンタは〜」
花梨は発言者に詰め寄るが、そっちより今はこっちを何とかして欲しい
「……小学生に手を出したらしいわよ」
「それも二人なんて……あんな変態、野放しにしていても良いのかしら」
「…………」
いや、確かに奥様達のヒソヒソ話や、汚れた物を見るような視線も胸に痛いのだが……
「どうしたの、お兄ちゃん? 冷汗なんてかいちゃって。暑いのかなぁ? うふふふふふ」
こっちをなんとかしてくれ~!!
「あ、あのな、ゆ」
「なぁに? おにーちゃん。雪葉、言い訳なんて聞きたくないな~」
妹は笑顔だった。しかしその目は笑っておらず、声には、怒りを通り越して殺意すら感じる
「い、いや、違くてご、誤解…………か、花梨~」
妹の迫力に負け、自分でも情けないと思ってしまう声で花梨を呼ぶ
「え? あ、ゆ、雪? ……え、えと、その」
俺と雪葉を見比べ、困り顔をする花梨
「ど、どうした、早く誤解を………あ!」
一瞬、ちらっと横を見た花梨の視線を追うと、教室の窓際で、女の子達に囲まれながらジっとこちらを見ている美少年が居る。あれは坂田少年だ
なるほど。坂田少年が居るから迂闊な事を言えないのかって、なんだかあの少年、おもいっきり俺を睨んでる気が……
「何処を向いてるのかなぁ、おにいちゃん? まさかクラスの女の子達を見ているのかなぁ」
雪葉の口許が裂け、三日月の様な笑みを浮かべた
殺される
俺は今日、妹に殺される
季節は夏真っ盛り。気温は高いと言うのに、身体の震えが止まらない
「ま、待って! ち、違うの、コイツとはそんな関係じゃなくて……」
「胸を触らせる関係だもんねぇ。凄いよねぇ花梨は」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
奥様が無言で携帯を取り出した。ピッポッパ、三桁の数字だ。天気予報でも聞くのかな〜
「あ、もしもし、警察ですか? 娘が通う小学校に危険な変態が」
「い、生き別れた血の繋がらない兄なのよ〜!!」
「ええ!?」
「ええ!?」
衝撃的な告白に、雪葉と俺の声が重なった




