第102話:母の安心
「じゃんけんぽい」
「ぽい」
「あ〜また負けちゃったえへへ」
「ふふ。俺には未来が見えるのだよ」
火曜日の夕方。夕飯まで暇なので、雪葉とじゃんけんをやっていたのだが、七戦全勝と言う怪記録を出してしまった
「次は負けないからね!」
「よし来い!」
次はグーか、はたまたチョキか
「…………仲良いわね、アンタ達」
ソファーに座り、団扇を扇ぎながら呆れた声で呟く夏紀姉ちゃん
「そう? 普通だと思うけどっと不意打ちじゃんけんぽい!」
「え!? ぽ、ぽい!」
俺がパーで雪葉がグーだ
「ふ、また俺の勝ちだな」
後だしで負けるとは……プレッシャーに弱いな雪葉君
「ずるいよ〜」
「ふっふ。これが大人の戦略って奴だよ」
「……随分しょぼい大人ね」
ピンポーン
夏紀姉ちゃんの呟きと共に、インターホンが鳴った
「ん? 客かな。ちょっと見て来るよ」
「いってらっしゃい、お兄ちゃん」
笑顔の妹に見送られ、いざ玄関へ
ピンポーン
「はいはい、今開けますよ」
鍵を外し、ドアを開けると疲れた顔をしたインテリ中年の姿
「って宗院さんじゃないですか! どうしたんです、その姿」
真っ白な作業着に同じく真っ白な帽子。これは宅配便、シロネコ太郎の従業員が着る格好だ
「おや、佐藤君。此処は君のお宅でしたか、偶然ですね」
「偶然なんですか?」
「ええ。お荷物をお届けに来たのですが……トラックから下ろして来ますので、少々お待ち下さい」
そう言い、宗院さんは家の前に止めてあるトラックへ走り向かう
「…………」
ハンコ用意しておくか
ハンコを用意し、玄関に戻ると自分より大きな荷物をヨロヨロと持って来る宗院さんの姿があった
「だ、大丈夫ですか? 手伝いますよ」
「あ、ありがとう。君は間違いなく出世する、私が保証するよ」
また宗院さんに保証されてしまった……
へこみながら、宗院さんの元に駆け寄り荷物を持つ
「それにしてもデカイ荷物ですね。なに入ってるんだろ?」
少しワクワクしてしまう
「割れ物注意とありますから、食べ物ではなさそうですね」
宗院さんは、何故か残念そうに言った
「この大きさですと、鉢植えとかだったりするかも知れませんね」
まぁ、開けてみれば分かるか
「あ、もう此処で良いですよ宗院さん。ハンコ押しますね」
玄関先に荷物を置いて、ズボンのポケットからハンコを取り出す
「はい、ではこちらに拇印を……はい、ありがとうございます」
「ご苦労様でした」
「ではまたお会いしましょう」
爽やかに微笑み、帽子を被り直して去ってゆく宗院さん。働く男の背中だ
「……頑張れ〜」
きっと色々大変なのだろう、小声で応援しておこう
「さて」
贈り主は……
「お、親父!?」
それは親父からの国際便だった