第99話:俺の夢
「お兄ちゃん!」
リビングでお茶を飲んでいると、雪葉が怒りの表情を浮かべて俺の前へと来た
「ど、どうした雪葉?」
「私は雪葉では無い!」
「は?」
「見破れるかな?」
不敵に笑うと、雪葉の身体が三重にブレ出す。乱視か?
「ふふふ」
「ふふふ」
「ふふふ」
「な、なに!? 雪葉が三人に!」
「さぁ、お兄ちゃん」
「本物の雪葉は誰か」
「当ててみて」
「う、うむ〜」
姿形は勿論、声も雰囲気も同じに見える
「お兄ちゃん大好き!」
右の雪葉が俺の左腕に飛び付き、ギュっと抱きしめてきた
「雪葉も好き〜」
左の雪葉は俺の右腕に
「…………」
真ん中の雪葉だけ、遠慮がちに俺を見つめて寄って来ない
「俺の大切な妹は真ん中の雪葉だ!!」
そう叫んだ瞬間、左右の雪葉は消えた
「あ……お、お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
ひしっと抱き合う兄と妹。何と美しき光景よ
「お兄ちゃん♪」
「なんだい、雪葉」
「引っ掛かったな」
「え? なっ!?」
消えた筈のニセ雪葉が甦る
「私達の中に本物なんていなかったのさ!」
「な、なんだって〜!」
「本物は……」
がちゃり。リビングのドアが開く
「ただいま〜。……え? お、お兄ちゃん、その妹達は誰!?」
「ゆ、ゆき」
「おに〜ちゃん」
「えへ〜」
「ちゅっ。大好き〜」
「あ……う……お、お兄ちゃんのばかぁ! ウルトラシスコン!!」
雪葉は泣きながら、リビングを飛び出した
ま、まって、ゆ
「雪葉〜!! …………?」
気付くとそこはリビングではなく、俺の部屋だった
辺りはまだ暗く、当然、三人の雪葉は居ない。時計の針は午前二時を指す
「…………夢?」
夢か……
「ふぅ」
恐ろしい夢だった
コンコン
パジャマの袖で額の汗を拭っていると、ノックの音が部屋に響く
「ん? 誰?」
「…………私」
「秋姉! ちょっと待ってて!!」
「……うん」
俺は慌ててベットから飛び起きた