徳のクッキー 2
その後カバさんを見て、ウサギ共と戯れ、猫に小判煎餅をあげていると、空は赤みが射して来た
「……五時か。そろそろ帰らないとな」
「もうそんな時間なんだ、早いなぁ……」
「本当だよな、まだ半分ぐらいしか見てないのによ。ま、夏休みに入ったらまた来れば良いさ」
「うん!」
「じゃ、帰ろう」
雪葉の手を握り、俺達は出入口に向かう。夕陽で伸びた影が、動物園を離れる事の微かな寂しさを感じさせた
「良い動物園……なのかもな」
人は少ないが、きちんと整備清掃されていて、何処か暖かい
また来よう。今度は雪葉の友達の、花梨や美月も連れて
「ありがとうございました〜」
「ありがとうございました」
出入口に着くと、灰色のサファリールックを着た宗院さんと綾さんが俺達を見送りに来ていた
「……此処の動物園って他に人、居ないんですか?」
「居ますけど、皆さんこの動物園で一番人気の、おっ起つレッサーパンダさんの方に行ってらっしゃってます」
「嫌な言い方しないで下さいよ……。しかし成る程」
動物園の奥の方では、歓声みたいな物が上がっていると思ったら、そういう事か
「広いですからね、この動物園。今日は楽しめましたか、雪葉さん」
綾さんはしゃがんで、雪葉の視線に合わせる
「はい、凄く楽しかったです!」
「良かった。ちょっと待ってて下さいね」
雪葉の言葉に微笑み、綾さんは腰に付けているポシェットから手の平サイズの小袋を取り出した
「はい、どうぞ。23種類の動物さんクッキーです。レアは口をあけたカバさん、探してみて下さい」
「うわぁ、ありがとう、お姉さん!」
「いえいえ〜」
「……ありがとう綾さん。手作りなんでしょ?」
じゃなかったらカバなんかをレアにはしないだろう
「時間が少し空いていましたし、クッキーの型も有りましたからね。はい、お兄さんにも」
「お、ありがとう」
「レアは水玉パンツ姿の綾ちゃんクッキー」
「型、無いでしょ!?」
今日の疲労
院>>>>>俺>>>雪>>徳
「カバさん見っけ! かわい〜」
「良かったな雪葉〜、あはははははぁ……」
…………無いじゃんか、レア
つづたまら