母のお小遣 3
掃除から三時間経過
「お、終わった……」
この暑い中、年末の大掃除並の掃除をした結果、部屋はとてつもなく綺麗になってしまった
「ご苦労様、お兄ちゃん。今、お茶を容れるね。お姉ちゃ〜ん、ある程度めどがついたら終わって良いよ〜。残りは雪葉がやるから」
昔から思っていたが、我が家で一番しっかりているのは間違いなく雪葉だな
そしてお茶会
「あ〜疲れた〜」
春菜はソファーに、ぐてーと座り込み茶をがぶ飲み
「ん……お疲れ様」
秋姉は春菜に微笑みかけるが、お疲れなのは間違いなく秋姉の方だろう
「はい、お兄ちゃん。お茶のおかわりですよ」
「ああ、ありがとう。……雪葉は良いお嫁さんになるだろうな」
簡単にはやらんけど
「……えへ」
「ふー、しかし暑いなぁ」
「……クーラー付ける?」
「ううん、いいよ。秋姉は大丈夫?」
「……うん」
汗一つかいていない。やはり女神
「お前達は? 暑ければつけるぜ」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん」
「余裕、余裕!」
「そう……」
暑がってるの俺だけ?
「ただいま〜。……あら〜」
玄関からのんきな声が聞こえた。どうやら帰って来たらしい
「あらあら〜」
母ちゃんは、あらあら言いながら洗面所や風呂場の方へ行き、最後にリビングへとやって来た
「おかえりなさい、お母さん」
「おかえり〜」
「……おかえりなさい」
「おかえり」
「ただいま〜。間違えて新築の家に来ちゃったと思ったわ〜」
「んな大袈裟な」
「お掃除ありがと〜。かき氷買って来たから、氷食べましょう〜」
「よっしゃ、かき氷! むしろメロン!!」
「雪葉、イチゴミルクがいいな」
「…………レモン」
「練乳、貰った!」
「お母さんは小豆〜」
かき氷と木のスプーンを受け取り、フタを開けて凍りに刺すと、シャリっと心地良い音がなった
んで一口
「……うむぅ」
暑い中で食うかき氷は最高だぜ!
「ぐわ〜頭が〜、助けてくれ〜兄貴〜」
隣に座る春菜が頭を押さえながら、俺の膝元に寝そべってきやがった
「どう助けろってんだ」
「なでろ〜」
「……お前ね」
「…………お兄ちゃん! 雪葉も頭が痛いのです!」
「はい、はい。撫でてやるから、ちこう寄りなさい」
「はい、お殿様♪」
「うふふ」
妹達の頭を撫でる俺を、母ちゃんは細い目で見守り……
カッ!
「うわぁ!?」
母ちゃんの目が、いきなり見開かれた!
「驚いた〜?」
「そりゃ驚くわ!」
下手すりゃ心肺停止もんだぜ!
「うふふ〜」
母ちゃんは嬉しそうに微笑みながら、ショルダーバックから財布を取り出した
「うん?」
「お小遣い〜」
母ちゃんは、青い猫型未来ロボットの様な口調でそう言い、俺達一人一人に五百円玉を渡す
「うお!? やった〜」
「サンキュー母ちゃん」
「ありがとう、お母さん!」
「…………ありがとう」
「どういたしまして〜」
それから数十分、ノンビリと会話して
「それじゃ母さんは夕ご飯の準備するわね〜」
「雪葉も手伝うね、お母さん」
「ありがと〜。さて、よっこいしょういち恥ずかしながら帰還っと」
「その掛け声、かえって立ち上がり難くない?」
ツッコミつつ、俺も立ち上がる
「七時になったらご飯よ〜」
「はいよ」
「…………少し走ってくる」
「お、私も付き合うぜ〜」
「ん」
母ちゃんと雪葉に続き、秋姉と春菜が消え、そして誰も居なくなったリビング
「これが孤独……か」
ゲームやろ~っと
ピコピコピコリ、ピコピコリー
こんこん
「ん? 開いてるよ」
ゲームをする事、30分。電子音に混じってドアをノックする音が聞こえた
「入るわね~」
「ん? 母ちゃんか。どうしたの?」
立ち上がり母ちゃんを迎えると、母ちゃんは一枚の封筒を差し出す
「なに?」
「お小遣、パート2~」
「はい?」
訝しながら封筒を受け取り、開けてみる
「ん? さ、さんみゃん円!?」
お久しぶりな諭吉トリオに、俺の鼓動はドキドキもん
「な、なんでこんなに……」
「明日、雪葉を連れて動物園に行ってくれるんでしょ? だからお小遣。
本当なら母さんが連れて行ってあげるべきなのだけど……ありがとう恭介。母さん、恭介に頼りっぱなしね」
「……俺は好きでやってんだよ、気にしないで」
家族だってのに水臭いぜ
「貴方は本当にいい子ね~」
「ぬわ!? 止めろ、撫でるな~」
「それじゃ母さんは、ご飯支度の続きしょ~。またね~」
「あいよ」
母ちゃんはヒラヒラと手を振りながら、リビングの方へ向かう
さて、俺は……
「……ムフ」
三万円!
雪葉でも誘って、明日のおやつでも買いに行くか!
今日のお小遣
俺>>>>>>>>>雪≧春≧秋>夏
つづからく