雪のお仕事 2
「どうしたの、お兄ちゃん!」
春菜の関節技によって、瀕死の重傷を負った俺を心配し、真っ先に来たのは雪葉だった
「ゆ……き……」
「お、お兄ちゃん!? どうしてこんなにボロボロに……」
「大袈裟だって兄貴は。ちょっと足の関節を伸ばしただけじゃんか」
春菜はよいしょっとベッドから下り、雪葉の頭を撫でる
「お前のちょっとは中国雑技団レベルか……」
「お兄ちゃん……。春お姉ちゃん! お兄ちゃんをいじめちゃ駄目だよ!」
「いじめてなんか無いって。私はただ、兄貴の世話を……」
「お兄ちゃんのお世話は雪葉のお仕事!」
「む! 別に私が世話しても良いだろ。私も妹なんだし」
「雪葉の方がお兄ちゃんのお世話出来るもん」
「マッサージだぜ? 雪葉は力が無いから駄目だって。此処は私に任せてゆっくりテレビでも見てな」
「お姉ちゃんこそ、外で走ってくれば!」
「む!」
「む~」
バチバチッ!
夢か幻か、二人の間に青い火花が見える
「ゆ、雪葉さん、春菜さん。ケンカは良くないかと……」
「ならどっちが兄貴を上手く世話出来るか勝負するか?」
「良いよ! 勝負だよ春お姉ちゃん!!」
「望む所だ~!」
かくして血を分けた二人の姉妹の、儚くも美しい戦いは幕を開けたのでしたって、俺の意志は無視ですか……
一試合目
【マッサージ対決】
「制限時間は15分。雪が右足、私が左足をマッサージするから、どっちが上手かったか兄貴は審査してくれ」
「あ、ああ」
「それじゃ最初は雪葉がマッサージするね」
「ああ」
雪葉はちょこんとベッドに乗り、俺の足を揉みはじめる
「……ん、ほほう、気持ちが良いぞ雪葉君」
「本当? じゃ、も~っと気持ち良くさせてあげるね!」
ギュ、ギュと一生懸命の力で雪葉は俺の太ももを揉む。軽い痛みと、しっとりとした手の平の感覚が心地よく、うっかりすると眠ってしまいそうになる
「ふぅ……極楽じゃ~」
日頃の疲れもぶっ飛ぶぜ
ピピピピ
夢心地だった俺を、無粋な電子音が呼び覚ました
「せっかく良い気持ちだったのに……」
「また後で揉んであげるね、お兄ちゃん」
「ああ、ありがとう」
ふ、可愛い奴だ
「さて次は私だな」
ゴキン、ゴキンと指を鳴らしながら俺に春菜は迫る
「ち、ちょっと待て。するのはマッサージだよな?」
「ああ。任せとけって!」
「任せたくねぇええ!」
十五分後
「か、軽い!? 軽いぞぉおおお!!」
まるで足に羽根が生えたような心地良さ。まさか日本にこれだけの技術者がおったとは……
「ストレッチとかマッサージは部活で毎日やってるからな」
「う~~」
悔しそうに春菜を見る雪葉さん。そう、この勝負は……
「勝負一回目。勝者は……春菜」
「おっしゃー!」
「次は負けないからね!」