第93話:夏の奴隷
「扇ぎなさい」
「……はい、お姉様」
午後七時。夏紀姉ちゃんの部屋
ベッドに腰を掛ける姉の前にひざまずき、団扇を扇ぐ俺。
先程までキングだった俺が、何故こんな暴君に仕えなくてはならないのだろう
「全く、アンタのせいで足が棒になったわよ。ほら揉みなさい」
「……はい、お姉様」
俺は機械の様に頷き、スーッと伸ばされた長く細い姉の左足を、やはり機械の様に揉み始める
「それにしても……ふふん。中々やるじゃない、アンタ」
夏紀姉ちゃん機嫌よさ気に言った。
この姉は結局二教科を見ていったのだが、スーツ秋姉と言うドーピングを打った俺に隙は無く、完璧な少年として絶賛されながら見学会は終了したのだった
「アキも喜んでいたわよ。いつになくはしゃいじゃって」
『恭介、凄いね! 凄いよね、姉さん!!』
五時間目の物理で、先生が遊びで出した有名大学の受験問題を解いた俺に、皆の大歓声が上がった
その中でもハッキリ聞こえた秋姉の声。
あの声を聞きたくて、俺は頑張ったのだ! 俺の脳内へエターナルメモリー!!
『まぁ、アイツにしては頑張ってるわね。簡単な問題だけど』
この声はどうでもいいや。消却っと
「んっ……痛っ! もっと優しく揉みなさい!」
夏紀姉ちゃんは俺の頬にぐりぐりと足の裏を押し付ける。この屈辱はいつか王を倒す剣となるだろう
「……ふくらはぎカチカチだね。運動不足じゃない?」
「うっさい」
今度は右足が俺の頭を踏んだ。短いスカートで股を開く形になっているので、パンツがまる見えなのだが、この女に羞恥心は無いのだろうか?
「ん? あっ! アンタ、今アタシの下着見てたわね!」
姉ちゃんは慌てて足を閉じ、俺を睨む。てか
「……んなもん見たく無いっての」
「……あ?」
しまった!? つい本音が!
「ご、ごめ」
「……あ〜いいわ別に。暑いし」
姉ちゃんは、ぐたーっとベッドの横になった
「次、腰」
「……はい、お姉様」
「扇ぎながら」
「……はい、お姉様」
「子守唄も」
「ね〜むれ〜ね〜むれ〜お〜ねぇさ〜ま〜」
「下手ね」
「ぐっ! す、すみませんね、お姉様っ!」
「お茶。一分以内」
「……はい、お姉様」
「お茶菓子も」
「はい、はい! 分かりましたよ、もう!!」
今日のキング
夏>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>俺
「腕」
「……はい、お姉様」
この状態は、夜中の三時まで続きました……。
すずぐ