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秋の見学会 4

「混んでいるわね」


学校の食堂。珍しいのだろうか、結構親御さんが来ている


「端っこのテーブルが空いてるね。あそこで良い?」


「いやよ。日差しが強いじゃない」


「そ、そう? でも他に空いてる所なんて……」


そんな会話をしていたら、入口近くのテーブルに座っている四人の先輩達が、食事中だと言うのに一斉に立ち上がった


「どうぞ、夏紀様」


その中の一人が、女王に対するしもべの如くひざまづくと、他の三人もまたひざをつく


「あら、ありがとう」


夏紀姉ちゃんは彼等に軽く微笑み、すっと後ろに引かれた椅子へ座った


「では夏紀様。私達はこれで」


「ええ」


頭を下げ、食事を持って窓際の席へ行く先輩達


「し、知り合い?」


「違うわよ」


「え!? 知らないのに何、今の!?」


「さあ? そんな事よりさっさと注文して来なさい。アタシはレバニラ炒め」


さも当たり前の様に言う姉。この姉にとって周りの人間はしもべか何かと同じなのだろうか?


「…………」


「早く行け!」


「はい、夏紀様!」


逆らえん……


迫力に負けた俺は、とぼとぼとカウンターへ行く


「おばちゃん、レバニラ炒めと茄子味噌炒め定食お願いします」


「あいよ! 今日は夏紀ちゃんが来たんだね~、美人になったもんだ! あれじゃあ男共がほっとかないやね」


食堂で働くおばちゃんは、近所のおばちゃんだったりする。地元の高校ならではだな


「……顔だけじゃ中身って分からないですもんね」


中身を知ればあれが魔王の一種だと気付くだろう


「そんな事無いよ。確かに写真か何かで顔だけを見たら少しキツく見えるかもしれないが、実際を見ると全然キツく無いだろ? それは中身が良いからさ。恭ちゃんだって写真だと只の屍に見えるかもしれないけど、会うと優しくて可愛い顔してるじゃないか」


「……ありがとうございます。てゆーか俺ってそんなに死んでます?」


「…………辛い世の中だけど、負けたら駄目だよ」


「慰められた!?」


「はい、出来たよ。温泉卵オマケしておいたから、栄養つけるんだよ」


「優しくされた!?」


何だか言いようの無いショックをうけつつ、両手にオボンを持って夏紀姉ちゃんの所へ


「……お待たせ」


「ご苦労」


ありがとうって言葉を知らんのかこの女


呆れながら夏紀姉ちゃんの向かいに座る


「それじゃ、いただきます……あら美味しい。生意気な」


「何故に生意気?」


「美味しい学食にクーラーまで付けてれば十分生意気でしょうに。アタシも此処入れば良かったかな」


「そんな理由で……」


「ま、あんまり高校に良い思い出が無いからね」


高校の頃、姉ちゃんには嫌な事があった。それは俺も知っている


「……後悔してる?」


「してないわよ」


夏紀姉ちゃんは、迷い無くあっさりと言う。多分それは今ある自分を信じているからだ


「……やっぱり姉ちゃんは強いな」


敵わない訳だ


「え? ……はぁ」


姉ちゃんは、いぶかしげな顔をした後、切ないため息を漏らす


「どしたの?」


「ビールが無いと寂しい……。失敗したわ、レバニラ」


「姉ちゃんってつまらない事では良く後悔するよね……」


なんて呆れながら言っていると、廊下がざわめく


ざわめきは次第に大きくなってゆき、食堂にまで届いた


「な、なあ見たか!」


「あ、ああ見た!」


「スーツ!」

「スーツ!」


スーツ? はん……何、興奮してるんだか


「秋先輩、スーツ着ていたな! 超、かっけ~」


「……なんだって」


秋姉がスーツだと? 下らない


「誰かを探していたみたいだったな」


「…………本当なのか」


もし本当なら……


「あ……秋姉がスーツ?」


「あん? ああ、制服姿だとアンタに恥をかかせると思ったんでしょ。アキはそういうのこだわるからね」


「う…………ウォオオオオオオオオオ!!」


秋姉のスーツ姿ぁあああああああ!!


「やかましい!」


ナツキのこうげき


ナツキは俺のベンケイを蹴っ飛ばした。俺は100のダメージ


「い、痛いよ姉ちゃん」


「スーツなんか珍しく無いでしょうが。アタシも着ているし」


「……そうだね」


全く興味無いけど


「しかしスーツかぁって探してるんだったな!」


早く食べて教室に戻ろう!

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